218 5月12日(日) 嘘も方便の話

 相変わらず、時間を見ては、ふらりと散歩に出ている。そして、行き当たりばったりで出会った神社やお寺などで・・・動画を撮って楽しんでいるのだ。


 観光の神社やお寺ではないので、そんなところの写真や動画を撮っている人は誰もいない。だから、以前は動画を撮っていると奇異な眼で見られることが多かった。


 しかし、最近は、You〇ubeなんかの影響で、そんなこともなくなった。身の回りで動画を撮ることが珍しくなくなったんだね。たまに、動画を撮ってると、地元の小学生なんかから、「あっ、ユー〇ューバーがいる」と声を掛けられて、苦笑することはあるが・・ボクは、SNSをアルバム代わりに使っているので、撮った動画は公開していないのだ。


 で、そんなふうに、行き当たりばったりで出会った神社やお寺などの動画を撮っていると・・・地元の人から「どこから来たのですか?」とか「動画か? ええ趣味じゃのう」といった声を掛けられることがある。声を掛けるのは、だいたい年配の男性だ。つまり、ジイさんですね。


 ジイさんからは、特に、「どこから来たのですか?」と質問されることが多い。


 ジイさんが、この質問をするときは、明らかに遠くから来たことを期待する雰囲気があるのだ。まあ、これは分かりますね。地元の人としたら、地元の神社やお寺を、遠くから訪問してくれる人がいたら、それは大変うれしいわけだ。


 でも、最初、ボクは、この「どこから来たのですか?」という質問に、正直にこう答えていたのだ。


 「いえ、遠くから来たんではないのですよ。ボクは、この近辺のものなんです。散歩の途中に立ち寄りました」


 すると、たいていの場合、ジイさんの機嫌が悪くなる。急に、怪しいものを見るような眼つきになるのだ。あるときなど、「あんた、ここの動画を撮ってどうする気だ?」としつこく聞かれたことがあった。まるで、警察の職務質問のようだったのだ。


 ボクもビックリして、「えっ、ここの動画を撮ってはいけないんですか?」と聞き返すと、そのジイさんは、急にヘドモドとなって・・「いや、そういうわけではないが・・最近は何かと物騒なのでな・・」と答えたのだ。


 それで分かった。ジイさんは、ボクが泥棒でもやっていて、下見のために・・神社やお寺の動画を撮る振りをしながら、実は周囲の家々の動画を撮影しているように思ったのだ。


 で、そういうことがあってから、ボクは、この「どこから来たのですか?」という質問には、うんと遠くから来たように答えるように変えたのだ。


 うんと遠くと言うと・・・例えば、東京だったら、「大阪や京都から来ました」、また、大阪だったら、「東京や広島から来ました」というように、うんと遠くを答えるわけだ。


 こう答えると、ジイさんが急に、うれしそうな顔をするのだ。そして、「それは、遠くからようこそ」と言って、歓迎してくれるのだ。


 中には、「このお寺は、徳川家康の旗本だった〇〇が、△△の戦いで陣を敷いたところでな。それ以来、この町は、〇〇の殿様と交流が出来てな。毎年、秋祭りでは、〇〇の殿様の神輿を担ぐんじゃよ・・・」といった由来を得意げに話してくれるジイさんもいる。もちろん、ボクは、「へぇ~。それはすごいですね」と合図地を打ちながら、拝聴するわけだ。すると、ジイさんは、ますます、うれしそうな顔をするのだ。


 アホバカ妻にこういう話をすると、アホバカ妻は「あなた、そんな嘘をついて・・」とボクを非難するのだが・・・


 でも、ボクは、ホントのことを言って泥棒扱いをされるよりは、こういう悪意のない嘘を言って喜んでもらった方がいいように思うのだ。嘘も方便と言うからね。。。


 皆さんは、如何ですかぁ?


 こういった、悪意のない嘘を使うことってありますかぁ?

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