178 2月15日(木) 話のきっかけ
ラジオで、女性アナウンサーと男性の芸人さんが話していた。
女性アナウンサーがリスナーからの葉書を読むコーナーになった。それで、女性アナウンサーが葉書を読んだのだ。葉書には、リスナーの女性が新しく買ったワンピースのことが書かれていた。
それを聞いて、男性の芸人さんがこう言ったのだ。
「そう言えば、最近、ワンピース、見なくなりましたねぇ。ワンピースの女性が本当にいなくなりました」
ボクは「えっ」と思った。ワンピースって、そんなに見なくなったかなぁ? 街に出たら、いくらでもワンピースの女性がいるように思うのだが・・・
女性アナウンサーも同じことを思ったようだ。「えっ?」と一瞬、言葉に詰まったが、そのあとこう言った。
「そうですかぁ? ワンピース、みんな着てますよぉ~。私もよく着ますよぉ~」
男性の芸人さんは彼女の言葉には返答せず、「女性のワンピースって・・・」とワンピースの話を始めたのだ。
なんだか不思議な会話だった。ボクはそれからしばらくラジオを聞いていてたのだが・・それで、ようやく分かった。彼は何にでも「そう言えば、最近、〇〇、見なくなりましたねぇ」と言ったあとで、その〇〇の話を始めるのだ。
つまり、彼にとって、「そう言えば、最近、〇〇、見なくなりましたねぇ」というのは、話のきっかけを作る言葉であって、「本当に最近、〇〇を見なくなったかどうか」というコトの真偽はどうでもいいのだ。で、ワンピースの話をするきっかけとして、「そう言えば、最近、ワンピース、見なくなりましたねぇ」といつものように言ったというわけだ。
これって、よく大阪の人が「儲かりまっか?」、「ボチボチでんな」と言って、会話を始めるのと同じですよね。ボクは大阪の人がそんなことを言うのは聞いたことがありませんが(笑)。。。
こういう『話のきっかけを作る言葉』ってありますよね。
例えば・・・
お天気の話を出すとか(「今日はいいお天気ね」など)
相手の服や持ち物をほめるとか(「そのバッグ素敵ね。どこで買ったの?」など)
仕事の調子を聞くとか(「最近、調子はどうなの?」など)・・・
ネットにはいっぱい出ています。
確かに、こういう『話のきっかけを作る言葉』って便利なのだ。。。
『話のきっかけを作る言葉』というと思い出すことがある。
ボクが独身のときだ。ボクの友人がこんなことを言ってきた。
「おい、ナガシマ。この街に『ガールズバー』というのが出来たそうだ。面白そうだから行ってみようぜ」
あっ、ここで、女性の皆様から声が上がっていますね。
「ガールズバー? それって何よ?」
「きっと、いやらしいことをするところなのよ」
「もう、アホバカ最底辺作家って、いや~ね。いっつも、いっつも、いやらしい話ばっかり。もう、最低ね」
ち、違うんです。その『ガールズバー』というのは、いやらしいところじゃなくて・・・若い女性がバーテンをやっているパブのような軽い飲み屋さんで、カラオケが置いてなくて、お客は女性のバーテンとの会話を楽しむというところだったんです。カラオケがあると、みんな自分の歌を探してばかりいて・・・会話がないってことありますよね。で、その『ガールズバー』というのは、「カラオケを置いていないので、店の女性との会話を楽しんでください」という趣旨の店だったんです。
で、ボクは友人と二人で、その『ガールズバー』に行ってみた。すると、噂に聞く通り、バーテンの制服に身を包んだ若くてカッコいいお姉さんがいて(当時のボクたちと同じくらいの年だ)、お酒を出しながら、ボクたちに話しかけてきた。
「あなたたち、芸能人に似ているわね。私、その芸能人の顔は思い浮かぶんだけど・・名前が思い出せないのよ。ほら、あの人・・・え~と、う~ん、名前が出てこないなぁ。あなたたち、誰か芸能人に似てるって言われたことがあるでしょう?」
以前、この日記に書いたが、ボクは芸能人と間違われことがあって・・・『96 1月10日(火) ボクはリッキー・ダバオ』・・・それで、ボクはお姉さんにその話をしたのだ。 https://kakuyomu.jp/works/16816927862654115962/episodes/16817330651566530665
それから、話が盛り上がって・・・ボクたちは、お姉さんとの会話を楽しんだ。
で、二、三日して、その友人がまたボクに声をかけてきた。
「この前は面白かったなあ。ナガシマ、また、あの『ガールズバー』に行こうぜ」
正直言うと、ボクはお姉さんとの会話は楽しかったが、その店はそう頻繁に行くほどのことはないなぁと思っていた。しかし、友人はすっかりハマってしまったようなのだ。
で、いつも『自分が楽しむより周りの人が楽しんでいるかが気になる』ボクは、友人を楽しませるために・・・友人に付き合ってまた『ガールズバー』に行ったのだ。
先日とは別のお姉さんが、ボクたちの相手をしてくれた。
お姉さんがお酒を出すとこう言った。
「あなたたち、誰か芸能人に似てるって言われたことない?」
・・・えっ!(笑)
で、周りにいるお客とバーテンのお姉さんの会話を聞いていると・・・
どのお姉さんもお客に「あなた、誰か芸能人に似てるって言われたことない?」と言って話を切り出していたのだ。。。
つまり、この話題って、その店で統一された『話のきっかけを作る言葉』だったということですね。。。
さらに、周囲の会話をよく聞いていると・・・どうも、その『話のきっかけを作る言葉』が3種類あることが分かった。
一つは、この「あなた、誰か芸能人に似てるって言われたことない?」
二つ目は、「あなた、どこの出身?」
で、三つめは、「あのテレビ番組(あるいは映画)見たぁ?」
で、店のバーテンのお姉さんたちは、この3つの『話のきっかけを作る言葉』を適当に使い分けていたのだ。どうも店の経営者がお姉さんたちに、そうするように指導していると思われた。
さっきも書いたように、この店はカラオケを置かずに、その代わりバーテンのお姉さんたちとの会話を楽しむという趣向なので、お姉さんとお客の『話のきっかけ』というものが非常に大切になるわけだ。そこで、店の経営者が、会話が途切れないように・・・店の方針として、そういう3つの『話のきっかけを作る言葉』を決めて、お姉さんたちに指導していたというわけだ。。。
しかし、これって、あんまり面白くないのですね。。。
友人が誘うので、ボクもその後も何回かその店に行ったのだが・・・こういったからくりが分かってしまうと・・・つまり、バーテンのお姉さんの話題が、さっきの3つのどれかに決まっているわけで・・・お姉さんとの会話がまったく面白くなくなってしまったのだ。
やっぱり、毎回同じ『話のきっかけを作る言葉』ではダメで、こういった言葉は臨機応変に出てこないといけませんね。。。
で、別の話になるが・・・近所にマッサージ店ができたことがある。
開店割引セールというので、ボクは早速行ってみた。すると、店のおじさんがマッサージをしながら、プロ野球の話を始めたのだ。おじさんは、昔からの阪神タイガースの熱烈なファンのようで、ずいぶん古い話を出してきた。「昔々のあの試合で、阪神の〇〇選手がホームランを打って、負け試合を一気に逆転したんだ」という話だった。
ボクも野球の話は好きなので・・・適当に相槌をうちながら聞いていた。
で、それから、その店には何回か行ったのだが・・・おじさんの話が毎回、毎回、同じなのだ。いつも、「あの試合で、阪神の〇〇選手がホームランを打って、負け試合を一気に逆転したんだ」という話ばかりするのだ。
どうも、おじさんは『阪神の〇〇選手』のファンだったらしいのだ。しかし、〇〇選手が活躍した様々な試合のことを順繰りに話すなら、まだいいのだが・・・おじさんの口からは、〇〇選手のその試合の話しか出てこないのだ。
よっぽどその試合がおじさんの心を捉えているんだろうが・・・毎回同じ話ばかりをされると、さすがに苦痛になった。で、ボクはその店に行かなくなったのだ。その店はすぐになくなってしまった。
この場合は、「あの試合で、阪神の〇〇選手がホームランを打って、負け試合を一気に逆転したんだ」というのが『話のきっかけを作る言葉』ならぬ『話のきっかけを作る話題』だったんですね。でも、ついつい、同じ話になってしまったようです。。。。
こういうように、毎回同じ『話のきっかけを作る言葉』や『話のきっかけを作る話題』を出してしまうことって、よくあるように思うのだ。
ボクも気をつけないといけない。
あっ、皆さんから声が・・・
「あんたの、女子トイレとかパンティという話も、毎回、毎回、同じなのよ。もう聞き飽きたわ」
ぎゃび~ん! ボクも気をつけますぅぅ・・💦
皆さんも毎回同じ『話のきっかけを作る言葉』とか『話のきっかけを作る話題』を出されて、困ったことはありませんかぁ?
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