34 5月23日(月) 妻は男を買った

 妻は僕がカクヨムに駄作をアップしているのを知っている。妻は僕の駄作『白血病になっちゃいました』を読んだことがあるのだ(・・・『5月1日(日) 妻が僕の作品を読んだ』)。


 『白血病になっちゃいました』は実話で妻自身も頻繁に登場している。2年前のことだが、懐かしくもあったのだろう。それで、妻は僕の駄作を読んでくれたのだ。

 

 しかし、それ以降は全く僕の作品を読んでくれなくなった。まあ、面白くないからだと思うが・・しかし、それを言っちゃあ、身もふたもない。


 そこで、僕は、連載が終了したばかりの『男を買う女たち』を妻のパソコンに表示したんだ。そして、読んでみてって頼んだのだ。


 妻はいやいやながら読んでくれた。僕は感想を聞いた。僕は妻から「面白かった」という言葉が聞きたかったのだ。


 「どう?・・面白かった?」


 (以下、少々、小説のネタばれを含みます。しかし、全体のストーリーには関係ありませんので、まだ駄作を読んでいらっしゃらない方も読み進めていただいて問題ありませんよ。・・これって、暗に読んでくださいって頼んでる? わ~ん。PVがどんどん減ってるんだよぉ~・・・)


 「う~ん・・最初はね・・読みながら、七海ななみが犯人じゃないかなって思ってたのよ」


 僕は応えた。


 「そういう展開もあったんだけどね・・あの話は『夫にナイショ』シリーズの公募なんで、字数制限が30,000字になってたんだ。七海を犯人にすると、背景がいろいろと複雑になって、とても30,000字じゃあ足らないんだよ」


 妻はこんなことも言った。


 「何カ月もしてないって・・そんなことある? きっと、夫は浮気してるんだ」


 「えっ、何カ月もしてないと女性はそういう解釈をするんだ。男性は『仕事が忙しいと、しないときもあるなあ』と解釈すると思うけど。女性は浮気という解釈になるのか・・男性から見ると意外な解釈だなあ・・ということは、やっぱりヒンパンにしないといけないんだ。・・うちもこれからする?」

 

  ・・・・・


 妻はヒロインに同情的なことも言った。


 「ああいう局面に遭遇したら、誰でも逃げるでしょうね」


 「そうだね。僕が女性で、ヒロインの立場でも逃げただろうなあ」


 そして、妻は僕が思ってもみなかったことを言った。


 「しかし、男を買うのに・・一回が5万円って高くない? 中年のさえないおじさんも5万円でしょ。貧弱な身体の?」


 えっ、5万円が高いって・・妻は相場を知ってるの? これって、妻は男を買ったことがあるってことなの?


 僕は狼狽した。でも、平気な顔で応えたのだ。


 「5万円が高いかなぁ・・じゃあ、うちは2万円でいいよ。一回するごとに2万円を僕がもらうことにしようよ」


 「・・・」


 妻はなかなか「面白かった」とは言ってくれない。


 僕はもう一度聞いた。


 「どう? 面白かった?」


 妻は首を傾けて笑った。


 「う~ん。面白いというか・・なんか、土曜ワイド劇場みたい・・」


 僕は満足だった。


 既に駄作を読んでくださった皆様はお分かりではないかと思うが・・僕は駄作を火曜サスペンス劇場、土曜ワイド劇場・・といった2時間もののテレビドラマを強く意識して書いたのだ。


 ということで、今日のよかったことは、妻が駄作を読んでくれたこと。


 まあ、こういう何の役にも立たない僕の駄作でも、こんなふうに夫婦の会話のネタになるわけで・・その意味では役に立ってるって思うのだ。


 そしてね・・妻が男を買ったことがあるかどうかは、謎のままなんだ。


 いいんじゃないかな。


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