四月の忘れ事
佐武ろく
序章:夢の友達
夢の友達
そこには毎回決まって知らない少女と知らない少年が居る。
たまに夢を見る。毎回同じで酷い夢だ。
いや、始まりはそうじゃない――むしろ楽しいのに、段々とそれは様変わりしていく。
それはまず俺と幼稚園からの友達二人、そして名前も顔も知らない(顔は良く見えないけど知らないって事は何故か分かる)少女と少年の五人で子どもの頃に作った秘密基地に居るとこから始まる。話しをしてそれから遊んで、とにかくただただ楽しく子どもが遊んでるだけ。俺はその少年と少女の事は全く知らないはずなのに、そんなの関係ないと言うよに楽しんでる。それが不思議で、でも何故か当たり前のような気もするからそこから既に変な夢。
だけど一番変なのはその後だ。突然、地面から無数の真っ黒な手が飛び出し始める。不気味で見ているだけで思わず心臓を守ってしまうような手。その手は地面から飛び出したかと思うと少女の体を包み込み、あっという間に影のように黯へ染めてしまった。
そして俺らはただその光景を驚愕しながら見つめているだけ。動けないでいた。でも知らない少年だけは咄嗟に手を伸ばし少女を助けようとした。けどその手は届かない。
すると助けようとしたからなのか少女を包み込んだその手は次にその知らない少年へ伸びた。少年は一瞬にして少女と同じように黯一色へ。
そして手に捕まった二人は次の瞬間、地面へと引きずり込まれ瞬く間に呑み込まれてしまった。気が付けばそこには最初から誰もいなかったというようにさっきまで二人がいた場所は、平然と静まり返ってしまっていた。
するとそんな二人がいた場所から突然、真っ黒な液体なのか光なのか分からない何かが噴き出しては空を突き刺し、同時に漏れ出すように大地へ広がり始めた。どんどん空と大地が暗闇に染まっていく。
そしてついには、依然と動けないでいる俺らを包み込み辺りを黯一色に染め上げた。傍に居たはずの他の奴らも見えなくなり、冷たく不安を煽る色に一人取り残された俺はただ困惑して頻りに辺りを見回すだけ。
何も出来なくて不安と恐怖、そして無力さに襲われていた。
そして最後は電源でも落としたみたいに全てが消え、目覚める。でも目覚める前にはいつも少女の声が聞こえる。彼女は一言こう言ってた。
「助けて――蓮」
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