交差点探し

シヨゥ

第1話

「交差点を探す。それがうまい落とし所を見つけるコツさ」

 兄貴はそう言う。

「やりたいことと周りからやってほしいと思われていること。これが寸分のズレもなく合致するなんてことはない。だから交差点を探すんだ」

「何を言いたいのかがわからない。例えなんて使わないで具体的に話してくれないか」

「相変わらずせっかちだな。まあいい」

 そう言って両手の人差し指を立てる。

「こっちがやりたいことの方向性な。で、こっちが周りから求められることの方向性」

「それで」

「これが平行だとやりたいことはできないわ、求めたことをやってもらえないわでミスマッチが起きていることになる。わかるか?」

「なんとなく」

「それでいい。これが交差するとだ」

 そう言って指を交差させる。

「やりたいことをやれているし、周りはやってもらいたいことをやってもらえて嬉しい。分かるか?」

「あーその交差する部分を探せということか」

「そういうこと。難しいけどな」

 そう言って兄貴は深いため息をつき、

「交差点が見つからず過ごす夫婦生活はつらいぞ」

 と吐き捨てるように言う。兄貴は結婚して老け込んでしまった感がある。

「それじゃあ帰るわ」

 その背になんと言葉をかけてやればいいのか。さっぱり見当がつかないのだった。

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交差点探し シヨゥ @Shiyoxu

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