「ツール・ド・美ヶ原」ヒルクライム

 大会、無事に終わったよ。

 三つ前の章にこの大会の目標を書いておいたけど、さあ、結果はどうだったでしょうか〜?

 もったいぶるよ。



 大会の前日、受付があるんだけど、会場に入る前に一つ楽しみを入れた。


 会場近くにあって、この大会の時に度々寄らせて頂いているカフェでランチ。

 お店を営むレレさんはパリダカールラリーとか世界中のラリーやトレイルランを走ってる女性で、風羽より歳上なんだけど、今もめちゃくちゃアクティブで元気なお姉ちゃん。


 炭水化物たっぷりの、そばメシ(焼きそば+ご飯+カレー:コッテリじゃなくてヘルシー系)と体にめっちゃ良さそうなハーブティーを頂き、エネルギー充電バッチリ!

 ハーブティーはホットで、ルイボスティーに似た感じの味で飲みやすく美味。名前忘れちゃったけどブッシュみたいな名前だったような‥‥‥。

 一緒に写真を撮ってもらって、車で出発してからも、マスクしてても分かる満面の笑顔で全身を使って大きく手を振ってくれて、心もたっぷり充電させて頂きました〜。



 その日は夕飯も嬉しいお誘いをもらった。

 この大会でも何度も競り合ったトモトモはママになっていて、夫妻ともうすぐニ歳になるお子ちゃんと一緒に夕飯。

 出来ればご飯物を食べたいという要望に応じてくれて、会場近くの地元っぽい小さな和食屋に案内してもらう。レバニラ炒めを定食にして頂いて、再びエネルギー充電バッチリだ。


 三年振りだね。すっかりいいパパとママになっちゃって微笑ましい。

 レース当日も三人で激坂の所で応援してくれてて、走ってる写真もカッコよく撮ってもらった! 

 こういうの、力になるし凄く嬉しい。



 それから、もう一つ嬉しかった事。レースが終了して下山中に美鈴湖畔にあるカフェに立ち寄った。

 自転車大好きなオーナーが営むカフェはサイクリスト達をいつも応援してくれていて、今回も手作りのスープを無料で振る舞ってくれていた。身心に染み入るぜ〜!

 預けた下山荷物に忍ばせておいた二年前に出版した、ふうこの「本気×本気」をお渡ししたら、凄く喜んで早速本棚の目立つ所に置いて下さった。

 沢山のサイクリストの目に留まってくれたら嬉しいな。


 ここで応援してくれていた知り合いの方がこの「俺のエッセイ」を見てくれていて、面白いって言って下さったのも嬉しかったな。

これからも俺言葉を少し入れていこうっていう自信を持てたぜ!



 あー、なんか嬉しい事色々あった遠征だったな。

 極めつけはレースを終えて帰り道にライブで観ていた(スマフォだけど)全日本ロード男子エリートのレース。

 スッゲーーー!!!

 という言葉しか出てこないようないいレースだったぜ。

 早くこの事を書きてぇーーー!!!


 じゃ、またな。次回をお楽しみに!


 ☆


 っていうわけにはいきません。

 私のレースの事をまだ何も書いていませんでした。



 話は大会前日に戻って。

 大会受付をしてプログラムを貰う。出場選手をここで知る事になる。

 さて、誰が出ているのかな?

 

 女子は三六名。乗鞍とかと違って人数は少なくて、もっと多いと嬉しいけれど、人数はあまり問題じゃない。

 ざっと見て、ライバルとなりそうなのは先月車坂峠でも一緒だったバタとハーちゃん位かな? と思った。

 二人には前回かろうじて勝利しているし、上手く走れたら、ちょっとこれ、優勝とか、もしかして、出来るんじゃね? なんて思ってしまう。

 いやいや、名前を知らないだけで強い選手が出てるかもしれない。五年前にコテンパンにやられたように。

 ま、今回のレースの自分自身の目標は少し前に書いた物と変わる事は何もない。


 迎えたレース当日は天候にも恵まれて、体調も良い。風がちょっと強いくらいか。


 アップを済ませ、スタート地点に行くとハーちゃんがいて、少し話をする。

「二週間前の富士ヒル(※)の一般クラス(※)で凄くいいタイムで走った選手が今回何人か走るみたいですよ。

 コロナ禍の中でズイフト(室内自転車トレーニング)頑張ってた若い子達が増えているみたい」

 と教えてくれる。


 そっか。さすがハーちゃんはちゃんとチェックしてるんだな。富士ヒルのタイムを聞いて、今の自分にはこりゃ厳しそうって思うけど、自分のやるべき事に変わりはない。


 今回はいくつかの男子レースと混走で、自分のスタートから自分のゴールまでのタイムレースとなるけれど、上位を狙う女子は大体決められた時間内の先頭付近に集まっていたようなので目標物を見ながらレースできる感じだった。


 チャンピオン男子がスタートして五分後から自分達のスタートが切られる。

 私も前の方でスタートして流れに乗る。すぐに視界に入ってきたのが一人の小柄な女子選手。

 勾配がキツくなってくるとその選手のペースがかなり速い。目で追いながら自分のペースで走る。


 バタも私を抜いてきたので、ついていこうと激坂をこなしていくが、これ以上はオーバーペースと思って見送り、マイペースでいく事にする。まだまだ続く勾配のキツイ区間で何人かの女子に抜かれる。実際は二人だったけど、もっと何人もいたような気がした。


 あー、自分、走れてないかも。でも耐えて走っていくしかない。

 一度視界が開けてからは見通しが悪い場所が続き、前を走る女子が見えないばかりか、今回はペースの合う人が周りにいなくて、ほとんど一人で走っていた。

 まあ最初からタイムトライアルのつもりだから問題ない。今できる最大限を出すだけだ。

 タイムを目標にしてたけど、チェックポイントでも目標となるタイムも見ずに走っていた。タイムを見てガックリするのが嫌だったから。


 見えてこい、見えてこいと思っていた赤黒いウエアーを中間地点で発見! バタだ。以前自分で書いていた事が頭に浮かぶ。

「俺のロックオンは怖いぜ!」

 絶対に抜けると思って俄然元気になる。少しずつ大きくなる背中。


 しかし! 

 バタも私が近づいてきているのを確認してまたペースを上げていく。やっかいなのはバタの周りに何人か男子選手がいる事。あの中に入れればって思って頑張ってかなり近づいた場面もあったけど、着ききれずに苦戦が続く。

 メーターに目がいく。自分がどの位のタイムでゴールできるかは頭に無く、ゴールまであと何分位っていうのを度々確認する。詰めきれずにゴールまでの距離はどんどん短くなっていく。


 ここはヒルクライムレースには珍しく最後はしばらく下ってから短い上りが二つほどあってゴールだ。

 下りはバタも一人になっていて一対一の勝負。この差なら最後まで勝機はあると思って、こっちは必死。向こうも必死だ。


 こええ〜!

 風が強くて。スピード出すと飛ばされちまいそうだ。下ハン(ドロップハンドルの下側)持って姿勢を低く低く。しっかりとペダルに体重をかけて踏ん張って。勿論安全第一に、でもビビってたら負けちまう。踏める所は踏みまくれ!


 下りを乗り切ってゴールに向かう上り。もうゴールまでいくらも無い。

 くっそ、バタ、強いな。追いつけねぇ。あいつも懸命に踏んでるぜ。負けられねぇ。

 そして本当に最後の上り。ゴールはどんどん近づいてくるけれどバタの背中は近づいてこない。

 負けた。


 悔しいけれど、バタのおかげで中間地点からはめちゃくちゃ頑張れた。

 ゴールしてからストップウォッチを押したけど、すぐ消えちゃうので自分のタイムは全然分からなかった。


 良くはないと思うけど、中盤からあれだけ頑張れたからそんなに悪くもないかな? とか思いながら下山までの時間を頂上で過ごす。

 すぐにタイムを見たいような見たくないような。合格発表を待つような気分だ。


 とりあえず着替えて。

 ゴールするとネットに即タイムが出る仕組みだけれど、電波の繋がりが悪い。

 場所を移動して確認。

 何位? 何分?


 おい! もうこれ以上、読者の方をもったいぶらせるなよ!



ジャ〜ン! 結果、出ました。


 第五位 1°25'23


 2018年の自己ワースト記録1°21'29 を大幅更新しちまった!


 レース前に書いていた事。

【だけど25分位かかっちゃうかもな。そしたらショックだな。そりゃ嘆くぜ。だけど、嘆いても嘆きっぱなしじゃなくて、そこから八月の乗鞍に向けて上げていくって決めてるんだ。】


 あ、風が強くていっぱいあおられたから、たぶん五分位のロスしたから。

(嘘です。五分もロスするわけがない)


 結局バタとは十秒差だった。スタートがバタの方が後ろだったから、ちょい差しで先着してても負けてたんだけどね。


 ハーちゃんの記録が凄く悪かったから心配していた。頂上で会えたので聞いたらメカトラ(メカニックトラブル)だったらしい。

 悔しいだろうけど、ホッとした。身体のせいじゃなければまた頑張れる。


 トップとは六分ニ一秒差ついていた。


 ま、これも悪い方の想定通りで、書いていた通り。

 自分の現状をちゃんと把握できたので、改善できる所は改善して、乗鞍に向かうのみだ。


 いや〜、しかし、今年の乗鞍は女子のレースも面白そうだな。十位だった三年前よりももっとハイレベルで戦える人が増えている。六位入賞争い位には加わりたいな〜。


 そうそう。

 タイムはダメだったけど、レース前の約束通り収穫は色々あったし、書きたいって思う事が色々あって楽しかったな。


 レースを開催して頂けた事、レースに関わって下さった全ての方々に感謝します。

 ありがとうございました。



※ 富士ヒル:マウント富士ヒルクライム。毎年大勢のサイクリストが集まる人気の大会。


※ 一般クラス:以前のレースで好成績を納めて主催者によって選抜されたクラスとは別の、それ以外の選手のクラス。

富士ヒルでは女子にも「主催者選抜クラス」というのがあるが、他のヒルクライム大会ではほとんどが「一般女子」で一括りになっている。中には年代別で区切られて表彰される大会もある。

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