四節「風の神殿ll」

目が覚めた。

俺が魔獣の死骸しがいが少しずつ腐敗ふはいしている。

そして、風の神殿はさっきよりも静かで、暖かい。まるで何かに守られていたようだ。もう少し周りを探索しようと起き上がり、その場から離れる。


少し探索をし、完全に森の中のような場所に来てしまった。奥へ進むにつれて、月明かりが強くなっていき、それに風も吹いている。

『貴様、何者だ』

話しかけられたと思い振り返るがそこには誰もいない。どこから話しかけられているか分からなかったのだ。

「どこだ、どこにいる?」

振り返っても振り返ってもいない。そう思ったら地面が揺れ始めた。あまりの揺れの強さに膝をつき俺の元に影ができたから、見上げるとそこには龍がいた。

「な、りゅ、龍!?」

龍がいること自体がおかしな事だ。過去の記録で、200年以上前に絶滅したと言われている。それなのに今、目の前には龍がいる。

『我は守護竜、風龍エスカトラだ』

風龍は風を起こし、俺を吹き飛ばす勢いで吹いている。

『改めて聞こう。貴様は何者だ』

粒子を、風に抗う。

「俺の名前は十六夜鏡夜!鬼神になるものだ!」

ここで初めて、俺は自分のフルネームと、鬼神になるものと言った。

『鬼神。貴様が鬼神なのか』

翼を広げると一気に風が強くなる。だが、俺も負けじと粒子を纏い耐え続ける。

『ほう、そんなことまでできるのか。の鬼神は。200年前より強くなりそうじゃのう!』

龍が咆哮をする。脳に声が直接聞こえるのに、耳から聞こえるのは恐ろしい咆哮だ。

『その様子だと、未だに鬼神に覚醒はしとらん様だな』

嫌な予感がし、腰にある刀を抜刀しようとした。だが、更に風が強くなり、普通に立てなくなってしまった。だが、その風は直ぐに止まってしまい、龍の顔が目の前に来た。

『ほう、覚醒はしとらんのには持っておるのか』

「天眼?なんなんだそれは」

『お主の眼の事だよ。それは鬼神のみが使える眼だ。本来は時魔法を直視する為に使われる機能だ。じゃが、今のお主にはそれはどう見えている?』

見えている?言葉の意味が分からなかった。

「俺の視界は何も変わって・・・」

突然、眼球が痛み出した。痛みが収まり、目を開けると何か、空中を流れている。

『貴様には粒子が見えているのか、不思議なことじゃな』

粒子を見ている。だから粒子が龍にに集まっているのか?

「この天眼のことはいい。今は久崎くざきの事が知りたい」

『風神の事が知りたいのか?お主は、そうゆうタイプではなかったと思うが。まぁ、昔の戦友の死後は気になるか。自分で殺しておきながら勝手な事だ』

「うるせえ。あんたには関係の無い話だろ」

『関係ないことは無い。我々三龍は貴様らの事を見ていたからな。それに世界が滅びても我々の魂は消える事は無いから傍観する事は可能だ。今もそうだ。人間のこれからの成り行きを傍観するのみだ。滅びようとも生きていようとも勝手だ』

「それでも守護竜なのかよ」

『そうだとも、一様加護をつけて守っているでは無いか』

こんなことを言われては聞きたいことも聞く気が失せてきた。

「もういい。あんたに聞くのはやめにするよ、風龍」

『そうしろ。私はここで見ていてやる。貴様の無様な最後をな』

すると、風神は風を放ち俺を神殿の百花 鎌鼬がある所までまで吹き飛ばされてしまった。壁にぶつかり森への入口が塞がれてしまった。

「クソ!あの風龍、皮肉にもほどかあるだろ!」

俺が戦友を殺したのは本当の事だ。顔は思い出せないままだが、操りの魔眼を持っていた気がする。それのせいでみんなが操られ、殺す羽目になってしまった。

「とりあえず、ロウラスに行って久崎に会うべきだな」

神殿を出ると、空の色がおかしかった。黒くなった空で渦を巻いていたのだ。森を出ると、ロウラスがある方向から煙が出ているのだ。嫌な予感がして走り出す。周りに動物の気配すら感じられないほど静寂になっている。ロウラスの方に近づくにつれ、銃声と悲鳴。爆発音に風の音がする。

「人を助けないと!」

無意識に人を助けようと体は動いていた。ロウラスの門へ入り、家の上に飛び乗った。



「総員!粒子魔法を放て!負傷者は医務室に!治療薬で治療するのだ!弾丸補充班!大至急頼むぞ!」

そんな声がする中、機械化魔物が大量に押し寄せてくるのを俺は家の屋根から見ていた。

「更に奥でとてつもなく巨大な奴がいるな。誰かと戦っているように見えるが」

銃を機械化魔物に撃っているが、弱点にあてれてないやつが多く倒せても数体だった。このままでは死人が増えると思い粒子纏いで安全に地面への着地を行う。

「貴様!何者だ!」

「俺の名前は鏡夜。旅人だが、こんな事態だ。今は協力をしよう」

その場のリーダーらしき人は俺に近づき

「君は何が出来るのだ。ただの旅人風情が!」

そう言われ少しイラッとする。近づいてくる機械化魔物を粒子斬撃で一刀両断し、あと数体を一瞬で近づき、粒子纏いで粉々にした。

「これで、力の証明は十分ですか?まだしろって言うなら貴方のお仲間も巻き込むかもしれませんね」

「うぅ、わ、わかった、この先は君に任せよう。何か出来るとは思えないがね」

俺はその言葉と同時に、走り出す。天眼を使いコア(粒子が最も集まる所)を破壊して、機械化魔物を機能停止にする。街の奥にある巨大な奴へ向かって走る。

「あそこから来ているのか?」

突然、目の前にできた大きな黒風を見上げる。天眼を使い、粒子が最も少ない場所を探し入る。黒風の先にいたのは禍々しいオーラを放つ全長20メートルの機械化魔物、いや、武装したサイのような姿をした機械化魔獣と風の神殿で武具に触れて思い出した風神(久崎マイ)がいた。

「久崎!大丈夫か!」

傷だらけで膝をついていた彼女の傍により声をかける。

「え!十六夜先輩が、どうせてここに!」

久々に出会った彼女からは殺意というより困惑の感情が感じられたが、それを無視して構えをとる。

「話はあとだ、今はこいつを止めるぞ」

「っ!はい!」

そうした彼女も構えをとったのだ。


to be continued…

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