沢山迷惑かけてるのに、アレン様は優しい
「婚約……を……? ですが、私は」
「またあの時みたいに好きな人がいるという偽りは無しだよ」
私の言葉を遮ってアレン様に言われてしまった。
「私とアレン様は友人です……友人なんです」
「友人だから恋愛対象にならないと?」
「違っ!!」
アレン様の言葉に困惑し、動揺をして反射的に否定してしまった。
ついつい否定した言葉を言ってしまい、恥ずかしくて赤面してしまう。
アレン様は満足そうに微笑んでいる。これは、誘導尋問か何かなのかな。と、思ってしまった。
とりあえず落ち着け。冷静に、アレン様の気持ちをちゃんと聞こう。
「どうして私なのですか?」
「そうだね。俺はキミを好きになったから、かな。一緒に居て面白い。ただ危なっかしくて目を放せないけどーー……それにキミは俺の事を怖がってるのに助けようと必死だった。自分の問題も抱えてるだろうに」
「そんなの、当たり前じゃないですか。アレン様は王族ですし」
「……王族だろうと、自分の命がかかってる時に相手のことを心配なんてしないだろう。そういう時ほど人は本性を表に出す。それにね、当たり前が出来ない人は沢山いるんだよ。当たり前が出来るソフィア嬢はとても輝かしいと思う」
「~~っ!?!?」
めちゃくちゃ褒められてる。恥ずかしい……。
でも、沢山迷惑をかけてるのに、アレン様は優しい。
「沢山迷惑をおかけしたり、大変失礼なことをしてしまったり……してたのですが」
私は口篭りながらも言うと、アレン様は優しく微笑む。
「確かにそうだね。忠告を無視して敵に捕まったり、自分は顔色悪くて体調が優れないだろうに俺の心配したり……ああ、こんなこともあったね。悪夢で夜がまともに寝れない日々を送ってる時にソフィア嬢が俺のクマに気付いて近付いてきたと思ったらキスされちゃって」
思い出したかのようにクスクス笑いながらも過去に私の失敗談とかなり恥ずかしいドジをした時のことを掘り起こされてしまった。
「あっ……あああ……あれは!!!? じ、事故と言いましょうか」
私は自分の火照っている頬に両手を添える。必死に抗議したが、アレン様は動じない。むしろ、この状況を楽しんでいるように思える。
「今思えば、俺はあの時から既にソフィア嬢に好意を寄せてたのかもね。ソフィア嬢とキスをして心地良いと思ってしまったんだから」
こ、この人は!!?
流石は攻略対象者だけある。口説き文句が……、とにかく凄い。
胸の高鳴りが凄い。こんなの、おかしくなりそう。
「顔が赤いね。その顔が赤い理由が俺のせいだったら嬉しい」
アレン様は私の両頬を触り、優しくアレン様と目が合うように角度を変えさせられた。
「……あ、あの。正直、好きってよく分からなくて……」
ガタッと馬車が揺れた。反動で椅子から落ちそうになる私を咄嗟に支えてくれた。
「着いたみたいだね」
「えっ……」
「この馬車は特殊な魔法がかけられててね、空を飛べるんだ。かなり距離がある場所でもそこそこ短縮出来る」
な、なるほど……。アレン様との会話に夢中になってて気付かなかった。
それなら、ミットライト王国の街並みなんて見れるはずはない。魔法って凄いな。改めて実感する。
「早く着いてしまったことが不服かい? それならもう少し馬車を走らせても」
「あっ、あの、違います!! 大丈夫ですから」
「……そっか、それは残念だ」
馬車の扉がゆっくりと開いた。アレン様は先に降りていく。私も馬車から降りようとすると、アレン様が手を差し伸べてきた。
私は戸惑いながらも手を出すと、アレン様はその手を攫う。
誘導されながらも馬車を降りる。
「返事はいつでもいいけど、いつまでも待ってはあげられないからね。覚えといて」
紳士的なエスコートをされ、戸惑っているとアレン様が私の耳元で囁く。
そ、それって……、返事は待つつもりだけど、長くは待てないという意味!?
こ、困る……。何もこんな急に告白しなくても……。
再び顔が赤くなる。その様子を見ている侍女たちの間では『お二人が相思相愛』なのだと、瞬く間に屋敷中に知れ渡ってしまった。
別の馬車から降りたノエルが複雑な気持ちで私を見ていたことを知る術がなかった。
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