ファンタジーアニメに出てきた魔法陣を描こう

 

 テーブルに分厚い本と羊皮紙、それにインクが入った瓶と羽根ペンが置いてある。

 私はただ、じーっとそれを見つめてるだけ。

 羊皮紙にはちょこっと文字を書いただけ。他は真っ白。


 タブレットみたいな魔導具を使うのも考えたけど、あの魔導具はこの世界のことを書き綴っているから使えない。

 また、保存は出来るけど別けることが出来ないから整理が難しい。

 勉強に使うと余計に訳分からなくなりそうなので羊皮紙を使うことにした。


 オリヴァーさんを待つ間に勉強しようとしたのはいいものの、私 勉強だと集中力続かないのよねぇ。


 勉強に飽きてロマンス小説を読んで一日終わるというパターンね。


 だって、勉強をはじめて三十分で飽きたんだもん。


 私が馬鹿なのってこれが原因ね。間違いないわ。


 前世はそれなりに勉強を頑張ってたけどいつも中の下ってところだったのよね。


 そう、自分なりに頑張ってた。二時間ぐらい勉強してたのよ! 結果が追いついてなかったけど。


 その二時間は休憩時間を引いた時間。たまに休憩時間を引かずに言ってしまう時あるから、念の為に。


 結果がおいついてなかった理由を考えたら十五分ごとに休憩といって乙女ゲームやってたな。それも五分ならまだしも三十分ぐらいしてたような.....。



 今思えばそれが良くなかったのかも。


 一応、やる気はあるの。でも続かない。

 どうしたら時間を忘れて夢中で勉強出来るんだろうって考えてもわからない。


 理由は簡単。勉強好きじゃないし、楽しいと思わないから。


 対話する方法もわかってないし.....。


 そもそも対話って双方と向き合って話をすることよね。

 自分の属性とどうやって話をするというの。


 そういえば、私が前世でハマってたファンタジーアニメでは魔法陣を杖で描いて呪文らしきものを唱えてたよね。


 試してみようかな。


 この世界の魔法陣がわからないからファンタジーアニメに出てきた魔法陣を描こう。


 よし! と思ったのはいいけど杖がないじゃん。


 羽根ペンでもいいか。そう思った私は羽根ペンを持って羊皮紙に魔法陣を描く。記憶を辿りながら描いているので完璧に似てるようには描けないけど。


 円を描き、その中にもう二つ小さな円を作り、二つの小さな円の中に六芒星を描く。

 文字が書いてあったけど、古代文字かなにかだと思う。アニメでもそう言ってたし。


 だったらその文字をこの世界の古代文字にすればいいのかも。


 そう思って私は古代文字を書きはじめた。が、コンコンと扉を叩く音が聞こえたので咄嗟に羊皮紙を自分の背後に隠して返事した。


 入ってきたのはアイリス。

 アイリスはしどろもどろに言った。


「あの.....、ソフィア様と話したいという方が数名います。ただ、サロンだと話しづらい内容らしいので客室.....ノアさんが使っている客室でお待ちになってます」

「随分急ね?客人は皇帝に許可を貰わないとダメでしょ。その数日前に知らせが来るはずだけど」

「緊急だそうです。それにもう許可は下りてると、アレン王太子殿下が.....」


 王太子殿下!?


 来る時間にはまだ早い。緊急かぁ。


 それに数名!? これは早めに行った方が良さそう。待たせてるわけだし。


「わかった」


 そう言って歩き出した私をアイリスは止めた。


「今、ドレスをご用意しますからその格好では絶対に行かないでください」

「え、このドレスでもいいじゃない」

「いえ、ダメです。その.....鏡を見てください」


 そう言われて私はドレッサーについている鏡を見た。

 特に変わってるところはないけど.....と、思っていた私は後ろを振り向いて鏡に映る自分の後ろ姿を見た。


 思わず叫びそうになってしまった。


 それは、咄嗟に隠した羊皮紙に描いた魔法陣がドレスに写っていたからだ。


 羽根ペンは、ペン先をインクに浸して使う。さっきまで描いていたからインクが乾いてなかったのだろう。


 もしかしてと思って私はソファにある羊皮紙を見た。その羊皮紙はインクが滲んでいた。


 これじゃあ隠した意味がないじゃない!


 アイリスは肩が小刻みに揺れていて、口元をおさえていた。


 笑いを堪えてる! 絶対そうだわ。


 私はアイリスが用意したドレスに着替えて客室に向かった。


 もう、恥ずかしい!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る