総括

 一か月にわたり開催した「あなたの作品の方角はどちら?」、無事に終えることができました。


 「10人参加してくれたら成功かな」と開催前は思っていたので、概ね成功したと考えていいのかなと思います。

 以前フィン感をお書きした方を中心に参加してくださいました。ありがとうございます。私はフィン感参加者に愛されています。

 反面、当初の目的だった「新規さんへのフィン感の宣伝」については、ぬぬぬ……ぬぬぬぬ……という感じですね。引き続き頑張ります。



 ここで本企画の総括をしたいと思います。


 「類は友を呼ぶ」という難しいことわざがあります。難しいことわざ。

 この性質、(プロは知りませんけど)ネット小説書きには強く作用するものだと思います。

 ネット小説書きって活動歴が長くなるほどに、自創作と感性が近い人達で固まりがちになるんですよね。

 感性の近いやりとりができる人達のなかで生きるほうが楽しいですから。

 そして公募や企画には、この性質を強化する側面があると思っています。


 公募や企画にはそれぞれコンセプトやスタンスがあります。こういう作品に応募してほしい、こういう作者に参加してほしい。

 そして参加者は、その公募や企画のコンセプト・スタンスに少なからず共鳴しているものです。なので、公募や企画に参加すればするほどに自分と感性の近い人達が集まりがちになるんじゃないかと思います。

 「この人よく見かけるな」と思ったライバルや作家仲間は、友達になれるくらい価値観が似ている可能性が高いと思います。


 そういうルイトモ性質は、何も悪くないと思います。だって楽しいですし。

 ただ気をつけないといけないのは、それが世界の全てだと思ってしまうことです。

 飽くまでその公募や企画の参加者のなかで異端であるだけなのに、まるでそこを世界の端と思ってしまう。そういう錯覚が生じてしまう危険があると思います。

 もちろんそれはそれで良いんですけどね。錯覚だの何だの、余計なお世話ってやつです。“世界”の外を排斥さえしなければOKです。



 それを前提としまして、「あなたの作品の方角のどちら?」は“こういう作品に応募してほしい”“こういう作者に参加してほしい”を設けませんでした。(もちろん最低限の参加ルールを守れない人はお断りですよ)

 どの感性の作品・作者も拒まず、特別な歓待もしない。

 大衆的の北、純文的の西、実験的の東、抽象的の南、それぞれに方角という名前を与えて居場所を作ってあげる。

 真北の真面目エンタメ作者も、西向きの世の底昇華作者も、東向きの無邪気実験作者も、南向きの抽象直執筆作者も、坩堝となって参加する。

 北から見た東作品は、正直何が面白いのかさっぱりわからないでしょう。「いや、これの何が面白いの?」と感じるかもしれません。

 西から見た北作品は、正直意義にピンとこないかもしれません。「そのひと時の面白さを書いて、何がどうなるの?」と感じるかもしれません。

 でもそれぞれに方角の居場所が与えられているから、最低限の尊重をもって感想交流を行うのです。「この方角はなるほど、こういう作品なんですね」とその方角・作品を理解しようとする。方角が与えられている以上、「意味がわからない」「つまらない」と無碍にはできないんですよね。それは作品の否定ではなく文化の否定だから。


 「気を遣わずに狭い世界を楽しむ」が多くの企画の性質なら、本企画は「気を遣って広い世界を楽しむ」という性質があるだろうと思います。

 それは人口密度の高いエンタメが支配する世界ではなく、かといってエンタメへのカウンターパンチに勤しむ世界でもなく。

 ひとつの文化を礼賛するのではなく、異文化を異文化と認めた異文化交流。自分の文化を披露し、自分とは異なる文化に最低限の尊重をもって接し、自分とは異なる文化に敢えて挑戦してみる。

 「あなたの作品の方角のどちら?」のコンセプトは異文化交流なのだろうと思います。異文化交流の場は、和やかに気を遣って楽しむものです。


 ですので「あなたの作品の方角のどちら?」は、専門とする幅のなかで品質を競う“縦の企画”ではない。

 自分の感性や視界になかった小説世界の広さや幅を楽しむ“横の企画”だと思います。

 自分の感性にない小説に興味を抱かない人には楽しめず、自分の感性にない小説に興味を抱く人が楽しむ企画なのだろうと思います。



 長々と話してしまいました。

 上記のコンセプトを本開催に照らしたとき、やはり幼さを感じます。

 東西南北が世界の全てではありませんが、東西南北は異文化を感じられる程度には広い世界で、まだまだ私達は人口密度が高いだけの僻地で楽しんでいるようです。

 しかし幼いといえるぐらいには、上記コンセプトが香るだけの景色にはなっているとも思います。

 真北小説と西向き小説が当たり前のように居並び、遠い方角への理解を試み、慣れない方角への挑戦を口にする。そういう景色は確かにありました。もちろん自身が慣れた方角を示すのも、交流には欠かせない一景色です。企画意図を汲んで参加してくださった皆さま、ありがとうございました!

 これからも不定期に開催して、「あなたの作品の方角はどちら?」を年老いさせていきたいと思っているところです。


 ……「あなたの作品の方角はどちら?」を開催するのはフィン感に閑古鳥が鳴いているときですので、そういう意味では二度と開きたくないですけどね! わーん!



 ありがとうございました! また開いたときには、お付きあいいただけると嬉しいです!

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