2章:夏祭 第2話

次の間に布団が敷かれており、鷲頭は副官を抱き上げるなり、するりと襖の奥へ入っていった。寝具のうえで、脱がせかけていた軍袴を引き下げて取り払う。六尺を締めこんだ臀が、やけに艶かしい。


 熱い掌に臀を撫でまわされて、背にまでぞくぞくと震えがはしる。もう褌以外、何も身につけていない。前袋のうえから、ゆっくりと股間を煽られ、じわじわと理性を奪われるに至ってゆく。


 「きみを抱くのが、この一度きりだとおもうと、すこしばかり惜しい気がしてきた」


 すこしどころか、相当に惜しい。あと一度、二度はこうして淫れるすがたを堪能したい。鷲頭は抑制の箍を、外したくて堪らなかった。


 「何故です、艦長…もう、こうしてぼくに触れてはくださらないのですか…」


 切なく言う声が、鼻にかかったような甘さも含んで、鷲頭の耳を擽った。その妖艶さに息を飲んで、ことばを継ぐ。


 「そう決めているからな、こういうことは何度も…するべきではない。わかってくれ」


 六尺を解いて、一糸纏わぬすがたまで暴いてしまうと、ゆるゆると棹を握りこんで扱きつつ、耳もとへ優しく言いきかせるように囁いた。副官の一物は火照り、勃ちあがっている。


 「ん…っ、そんなの、嫌です…っ」


 「私とて同じなのだぞ。我が侭を言うな」


 「嫌…ッ」


 「聞き分けないか、優しくしてやらんぞ」


 手をつけた士官で、鷲頭に逆らったのは嵩利が初めてである。この一度きりは、暗黙の了解ともいえるもので、意図を説く必要もない。


 副官は男色をその身で知らぬとはいえ、そういったことの察しは悪い方ではないはず、と見ていたのだが…。


 「それも嫌…ぁ」


 ―もっと一緒に居たいのに、触れられる時はいま、この一度きりなんて、酷い―


 まったく、紅顔の美少年としか言いようのない、端麗な顔が憂いと切なさで満ちていた。濡れた唇を震わせて、微かに甘く囀る。


 ―困ったやつだ。


 落とした袴と絽の単を衣桁へさッ、と投げかけて、鷲頭も六尺を解いてしまう。鍛え抜かれたからだを、惜しげもなく晒していて、嵩利はしばし見惚れた。既にくっきりと際立った一物が、あたまを擡げている。


 「楽にしていろよ」


 しおらしい姿で、仰向けになっている副官へにじり寄ると、膝を掴んで脚を開かせた。


 本来は処女の頑ななそれを解すための軟膏を、たっぷりと菊座へ塗りこめ、つぷり、と人さし指をふたつめの関節まで沈めて、ゆっくりと内壁を撫であげる。


 「やァ…、擽ったい…」


 「こら、大人しゅうしちょれ」


 体内に生じる初めての感触は奇妙であったが、そのうちに塗りつけた軟膏が蕩けて、よく馴染んでくると、拡がった内壁は淫水に濡れたも同様で、ふたつ指を挿しいれてうごかせば、粘るような水音をたてさえする。


 「ぁ…あァ…っ、んっ」


 なかを軽く指さきで掻かれると、痺れるような感覚が走り、それだけで吐精してしまった。引き締まった腹筋のうえに飛び散った白濁が、とろりと臍の窪みへおちてとどまる。鷲頭は身を屈め、それを指と舌で余さず拭いとり、指に絡めたものもきれいに舐めとる。


 「艦長…っ」


 鷲頭の行為を目の当たりにし、真っ赤になって上ずった声をあげる。ついでに腕をかざして顔を隠してしまう。羞ずかしくて死にそうだった。


 「感じやすいちゅうのは、わかっちょる」


 覆い被さられて、腕を掴みあげられたついでに、ひどく優しく耳へ囁かれる。

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