No.02 【小説】パヴァーヌ

『パヴァーヌ』(原題:Pavane)

作者:キース・ロバーツ

初版:1968年


 歴史改変SFの隠れた名作。1588年に英国女王エリザベス一世が暗殺され、欧州とともにローマ法王の支配下にはいった英国南部のドーセット州を舞台にした短編集。

カトリックの名の下に科学技術が弾圧され、蒸気機関だけが発達した「オルタネート・ヒストリー(歴史改変された世界)」のディティールがものすごく細かくて秀逸。中でもとくに印象的だったのが、第二旋律「信号手」という短編に出てくる「腕木通信」という情報伝達技術。作中は1968年だが、20世紀半ばに入っても未だに18世紀の技術で通信が行われており、人々は進歩主義や情報化社会とは無縁の牧歌的な生活を営んでいる。

 しかし、それでも時代は動いており、宗教がいくら進歩の足止めをしたところで、人類の歩みは止まらず、やがてヨーロッパを巻き込んだ革命が始まる……という内容。

「人は電気にいきつき、やがては原子に至る」という言葉は、まさにその通り。


 今やなきサンリオSF文庫の中でも、とくに評判が高かった作品であり、現在ではちくま文庫から再刊している。


おすすめ度 ★★

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