コピー

@zoe

コピー

「おい、大統領」

男は突然、目の前に現れた

「ええっ、なんです?

わりと厳重な警備の中」

私はひどく驚いた


「なんです?もないだろう

死んでもらう」

男の手の拳銃はにぶく黒く光る

「待て、あ」

「もう、お前を殺すしか」


「私は、コピーだ」

「は?」

沈黙が流れる


「そんなわけないだろう」

「技術の進歩はものすごいものさ」

「本物はどこだ?」

「私にはその記憶はない」

男は舌打ちする


「実は、俺もコピーだ」

男は言う

「この作戦中に、俺の元は死んでいる」

私はじわりと汗が出る

「お前がコピーなら殺してもしかたない」

男は窓から出ていった


私は椅子に座り直した

「コピーなわけないだろうが」

椅子の背に持たれ天井を見る

「私、コピーじゃないよな?」


私は急いで、妻に電話をする


「もしもし、ママいま大丈夫?」

「大丈夫だけど、あなた仕事中でしょう?」

「私は、ちゃあんと人間だろうか?」


・・・・・・


「それじゃあね」

電話を切る


そうだ、私はちゃんとした生きた人間だ

でもでも、その記憶もつくられていて

妻もコピーだったとしたら

ああ、どうしようか



「すいません、先輩」

「どうした」

「13号が、心理的に安定していませんが」

「ああ。13号は来週廃棄予定だ」

「それでは、電源を切りますね」


たくさんのカプセル

中には人間




ちゃんと、人間だったよ大統領


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