第8話  前 兆

彼女、成巳ちゃんの話をし、オーナーから言われたこを二人に話す事にした。



「良いと思うが」

「むしろ、カウンターに出た方が良いんじゃない?」

「でも…」


「確かに、彼女の事はあるかもしれないけど、もう3ヶ月過ぎたし両立してもらうとみんなも助かるんじゃないかな?」



「砂都中君…」


「それに、お客さんに、優奈ちゃんを覚えてもらって、何かあった時に助けてくれる人が現れるし辞めさせるのに好都合」



「………………」



「令ニさんと俺が味方だから、もし優奈ちゃんが辞める事があったら俺達が必ず連れ戻すから」


「せっかくのチャンスを逃すな。優奈」


「俺達の知らない彼女が出てくるはず。現に、雪渡の、お客減ってるからね?何か関係していると思う」




そして、私はカウンターに出る事に決心した。





「夕美、お願いがあるんだ」

「何?改まって」

「私のバイト先の事なんだけど」

「うん」


「前に、高校生の集まりの出逢いの場所みたいな所、言ってきたじゃん?」


「うん。それがどうかした?バイト休みもらったの?」


「ううん」


「えっ?じゃあ、何?」


「来て欲しいんだ」



「来て……欲しい…?えっ?行こうじゃなくて?」

「うん…実は、そこが私のバイト先なの!」

「えっ!?」


「今迄、裏方ばっかりでようやく、表のカウンターに出れるようになって…」


「そうだったんだ!」


「うん。黙っててゴメンネ!今日からカウンターにいるから都合の良い日に来て!時々、裏方に行ったりしちゃうけど」



ガシッと私の両手を掴む夕美。



「是非とも行かせて頂きます!」

「ありがとう!夕美!心強い!」


「と言うことは…つまり、椎野君と同じバイト先って事なんだよね?」


「うん」




私達は色々話をしていた。



そして、夕美は、早速、店に来てくれた。



「夕美ーー、ありがとう!来てくれたんだね!」

「もちろん!親友ですから!」

「もう、超緊張しちゃってーー。何にする?」

「お前も緊張する事あるんだな?戸西 優奈」


「早速、茶化しに来た!私だって人間ですから、あります!!」


「瀬木元も、わざわざ、この馬鹿女に付き合わされて大変だな?」


「もう!本っ当っ!失礼な奴だね?マジムカつくんですけど!さっさと自分の持ち場につけっつーの!!」



「はいはい。瀬木元、ごゆっくり〜」

「う、うん…」

「ごめん。で?何にする?」



私は、夕美から注文を聞き、注文の品を出して色々話をする。



「でも、本当、同じ位の子、沢山いるね」

「でしょう?私も驚いたよ」


「ごめん、優奈ちゃん、ちょっと、裏を手伝ってもらっていいかな?」



オーナーが言ってきた。



「はい。夕美、ちょっと裏に行ってくるから。みんな良いお客さんだろうけど、一応、気を付けてゆっくりしててね」


「うん、分かった!大丈夫だよ」



「優奈ちゃんの友達?」


「はい!友達であり親友です!」

「じゃあ、監視は任せて〜」

「か、監視って…」

「はい、裏、裏〜」



くるっと半回転させ、私の両肩をポンと押すオーナー




「うわ!」



私は裏に行く。



「どーも、初めまして!優奈ちゃんの親友とかで」


「あ、はい」


「俺、ここのオーナーの佑史って言います。名前は何かな?」


「夕美です」


「夕美ちゃん。OK〜。彼氏はいる感じかな?」


「いいえ。いないんです。ちょっと色々あって…恋に踏み込めなくて」


「えっ?そうなの?もったいない!じゃあ、こちらに出逢いを求めてみては?」


「えっ?」


「6人のイケメンから推薦しません?指名しちゃいませんか?何か特典つくかも〜?」


「特典?でも…みんな本当イケメンですよね」


「そうでしょう?お客様からも選び放題ですよ〜。みんな良い人達ばかりだから。恋愛相談してみてはいかがでしょう?恋のキューピットも承りますよ」


「そうなんですね!」


「はい。それとも、ここでバイトする?」


「えっ?」


「優奈ちゃんもいるし、お互い心強いんじゃない?」


「私…バイト、向いてないから。人と接するの苦手で…」


「夕美ちゃん?」



「優奈と仲良くなったのも、優奈から話しかけてくれて今を至ってて」


「そうなんだ」


「優奈が羨ましいって思う時、何度もありました。あ、良い意味でですよ」


「大丈夫。分かっているから」


「…だけど…そんな優奈だからこそ、無理する事あるから…。どんなに辛くても大丈夫だよって…笑顔を見せて…優奈…あー見えて、一人で抱えちゃうとこあるから…」



「夕美ちゃんは、優奈ちゃんと親友だから俺達の知らない優奈ちゃんの事、色々分かっているんだね」





一方



「優奈ちゃん、いいなぁ〜」


裏に行くと嫌味っぽく言ってきた。



「えっ?」


「表、楽しいでしょう?」

「まだ、今日から始めたばかりだから」

「雪渡君とも仲良いし〜羨ましいなぁ〜」


「成巳ちゃん」

「優奈ちゃん、雪渡君の事、好きなんでしょう?」

「えっ?私は別に……」


「じゃあ〜、雪渡君が優奈ちゃんの事、好きなのかな〜?」


「何言って…」



「雪渡君に限らず、みんな優奈ちゃんに優しいし〜本当、可愛いがられて。優奈ちゃん、誰にでも良い顔してさ~」


「成巳ちゃん、私は、そんなつもりはないし、同じバイト仲間だから仲良くして何が悪いの?私はただ普通に……」


「優奈ちゃん、私、許さないから!今迄みたいに上手くいくと思わないで!」



そう言うと去って行く。




「優奈ちゃん」

「…砂都中…君…」



グイッと抱き寄せた。



「大丈夫や。俺達がいてるから」

「…うん…」



この瞬間を偶然見掛ける椎野君の姿。


そして、すぐ、その場を去った。




「………………」



「一応、令ニさんには報告しとくわ」

「…うん…」



抱きしめた体を離し、頭をポンとした。





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