春風ポロネーズ
紫田 夏来
第1話
死にたい。ずっとそう願ってきた。
理由は単純。私は罪人だから。だから、そんな最低な性格の自分が嫌いで仕方なくて、私はひとつの長いものを書いた。決して文章を書くことが得意というわけではないけど、あれに関わることならいくらでも書けてしまう。
いつかは全てを忘れて自由になりたい。そう願っているけど、でも忘れるということは放棄することのような気がして、できない。とらわれ続けることしか、それはただの自己満足だと分かってはいるけど、できることは思いつかなかった。
「スマホばっかり見てるんじゃないわよ」
母が言った。ちょうど私があの事件についての記事を読み漁っているときだった。私は怠けているわけじゃない。こうして自責の念に苦しまされることで贖罪しているんだ。
「また三日月のこと調べてるんでしょ? そんな時間、あんたにはないはずよ。」
うるせえ、うるせえ、うるせえ。違うんだよ。三日月について調べて、娯楽なんかに浸っているんじゃなくて、私は過去の自分が犯したいじめという罪と向き合っているんだ。
三日月とは、私の大好きなバンド。三人グループで、今はもう解散してしまったけど、過去の尊い三人の姿を見ることで私は楽しみを感じている。
でも、私は疑問に思う。普通に高校に通って、三日月という娯楽を当たり前のように消費している生活。これは私に許されているのだろうか。私は罪人だから、私は罪を犯したから、普通の生活を送る権利はないと思う。
「毎日毎日だらだらしてて、本当に大丈夫なの? 五月になったらテストがあるでしょ。ちゃんといい点とれるんでしょうね? 余裕こいてる場合じゃないんじゃないの?」
母のいう事は正論だ。私は勉強しないでスマホをいじっている。確かにそれは無駄な時間だし、でも私はずっと贖罪をしなければならない。スマホを見るということは、それをしているということを意味している場合もあるのだ。
私はスマートフォン一つを手に部屋を飛び出した。そして二階に駆け上がり、いつも通学で使っている黒い巨大なリュックに丁寧にしまった。リュックの中には、出かける際に必要なものはいつ何時でも揃っている。リュックを背負い、抜き足差し足一階に降り、そして寝室の窓から外に出た。
後から怒られることは承知の上だ。でも私はこの家が嫌だ。私のことを何も知らない両親。知ろうともしない両親そして私。私は一人っ子で、いつも二人の愛情を感じてはいるけど、常に彼らのことを好きでいられるわけじゃない。
外は雨が降っていた。私はリュックから折り畳み傘を取り出すと、それを手際よく広げ、雨をしのいだ。走って地下鉄の最寄り駅まで到着するとすぐ電車に飛び乗り、やがて地元で一番大きい駅に着いた。
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