第192話 日本が誇る牛にヴァレリー一家がトリップする!

ドワーフ達は、うまい料理とうまい酒を飲み食いしていると帰りたくないと言い始めたがヴァレリーに、後日おいしい料理を提供する約束をしてドワーフ達を転移で強制退去してもらった。そして、ドルンも同じく寝たまま強制退去させられていた。


それから、今日は約束のヴァレリーを歓迎する日である。


カランカラン


「いらっしゃいませ。こんな昼間からわざわざ来てもらってすいません」


ヴァレリーは、全然構わないと手で合図をする。そして、ちゃっかりヴィクトリアとベアトリスも来ている。


「こんな昼間から拓哉さんの料理が食べられるなんて嬉しいわ。今日は何を食べさせてくれるのかしら」


「拓哉さん、私達まで申し訳ございません。でも料理が楽しみで来ちゃいました」


ヴィクトリアは相変わらずちゃっかりしているというかなんというか変わらない人だなと思う。ベアトリスは、常識があり子供らしい可愛さもあるなと感じる拓哉だった。


「お二人もいらっしゃったんですね。歓迎致しますのでお席に座ってお待ち下さい。ベアトリスさんが15歳の成人を迎えられたと聞きましたがお酒を呑んでみますか?」


それを聞いたベアトリスは、パァーッと明るい顔になる。どうやらみんなが呑んで楽しんでいたのが羨ましかったようだ。


「はい!呑みたいです。お父様よろしいでしょうか?」


「成人したのだ。酔わない程度に呑みなさい。拓哉、まずは呑みやすい酒をベアに持ってきてくれないか?俺とヴィクトリアには赤ワインを頼む」


珍しくワインを頼むヴァレリー。ヴィクトリアがワイン好きなので合わせてあげたようだ。


「ラリサワインセラーの1番下の向かって1番右にあるワインとカシスオレンジを出してくれないか?」


「は〜い」


上物のワインが安かったので仕入れて保管していたのだ。せっかくだし感謝の意味を込めて提供しようと考える拓哉。


「じゃあ料理を作ってきますので、先に呑んでお待ち下さい」


拓哉が厨房に行ってから暫くするとワインとカシスオレンジを持ったラリサがやってくる。


「お待たせ致しました。ベアお姉様カシスオレンジです。ワインは注がして頂きますので少々お待ち下さい」


ワインを丁寧に開けて、コルクのポンという綺麗な音が店内に響く。そして、ヴァレリーとヴィクトリアが傾けるワイングラスに丁寧に注ぐラリサ。注ぎ終わると丁寧にお辞儀をして去っていく。


「乾杯するか!無事にベアが15を迎えられたこと。そして魔国の著しい発展を迎えられたこと神に感謝を込めて乾杯」


「「乾杯」」


最近では、拓哉から聞いた乾杯という呑む前の挨拶が気に入り、憩い亭の住人はよくやるようになっている。


「ん〜このワインいい香りだわ。味も深みがあっていいわ。それなのに渋くなく呑みやすい。それに、ぶどうの味が広がっておいしい」


「ここ以外だとワインは呑めないな。薄めずに呑めるワインを初めてここで味わった時は感動したからな。このワインも相当な上物だろう。ベアは初めての酒はどうだ?うまいか?」


この世界のワインは渋みが強く水で割らないと呑めない酷さなのである。


「お父様、おいしいです。甘いけどジュースとは違う感じです。これがお酒なのですね。ちょっとふわふわもします〜」


初めてのお酒だった所為か、半分呑んだくらいでふわふわした感じに酔うベアトリス。それを見ていたヴァレリーとヴィクトリアは、自分も昔そうだったなと思わず笑うのであった。

そんな感じでお酒を楽しんでいると拓哉が料理を持ってやってくる。


「お待たせ致しました。日本の神戸というところの牛の舌を使った最高級の牛タンシチューです。もう何も考えずに食べてもらいたいです」


拓哉が出せる力をフルに使った渾身の一品である。それを聞いたヴァレリー一家は言われた通りに何も聞かずスプーンでタンをすくい口に運ぶ。


「「「・・・・・・・」」」


時が止まったかのように3人が動かない。


「ハッ!意識が飛んでしまったようだ。拓哉...これは普通じゃないぞ!今までの料理から逸脱したうまさだ」


「ふわぁぁぁおいしいわぁ!ずるいわ。こんな濃厚な味に気づいたらなくなっているトロトロのお肉!それに、ガツンと押し寄せる肉の旨味が染み出したシチュー!どこを食べてもおいしいわ」


「ん〜おいしいです〜トロトロでジュワーで幸せです。竜のタンよりおいしいかもです」


そりゃ日本が誇る神戸の牛だからなと思う拓哉。しかも圧縮鍋でトロトロになるまで煮込み最大限に旨さを引き立てた逸品は竜にも負けないと確信していた。

そして、3人からはお決まりのおかわりが飛び出すのであった。

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