第193話 新たな種族の女王はグラさん狙い?

アラクネとは・・・巨大な蜘蛛の身体に、その頭があるべきところから女の上半身が生えている。更に雌しかおらず、人間の男の種で生殖する魔物である。


そのアラクネは、魔境下層部の洞窟に住みながら生活をしている。繁殖時期が来ると外に出て男漁りをしてくる。何故男が誘惑されるかというと人化の能力を有しているからだ。そして、アラクネにも女王が存在する。しかも当然繁殖期もあるわけだ。だが、普通の人間の精では物足りなくなり、より強い種族の精を求めて魔境の中層へと来ているのだ。


「こんな場所で、女王様に見合う男性がいるとは思えませんが?そもそも知性のある者が存在しているとは思えません」


女王も普通なら来ない場所ではあるが、何か勘のようなものが働き、ここには何かあると告げているのだ。

それと下層に住むアラクネが何故いとも簡単に中層で生き延びれるのかというと、そもそも下層に住むような魔物ではなく中層に住むくらいの強さを有しているのだ。下層は人間が住む場所から1番近く男漁りがし易いから住んでいるだけである。


「妾も期待はしておらんが、勘が呼んでおるのだ。もう少し進もうではないか」


女王の言葉は絶対なので、逆らうことなく前に進んでいくアラクネ達。この時は知らなかったもうすぐ女王が歓喜する程の存在が現れることを。


「グラさん、そろそろ戻りますか?」


憩い亭の営業時間が近づき巡回する時間も終わりそうになりテオフィロが尋ねる。


「そろそろか!今日は何を食べようか迷うな」


今日の酒と食事をどうしようなと悩むグラデュース。蟹も海老も貝も捨て難いなと思っているとドゥルシッラがある一団を発見する。


「グラさんあそこに何かいますよ?あのままの進路なら村に行き当たりますがどうします?」


進路からいって1日くらいで村に辿り着くだろうという距離にいた一団をどうするのか尋ねるドゥルシッラ。グラデュースは、暫く悩んだ後答えをだす。


「以前みたいに気絶させるわけにはいかんからな。とりあえず人化して話を聞こう。もし害するようなら排除すればいいだろう」


ドゥルシッラもテオフィロも「「はい」」と返事をして一団とは少し離れた場所に着地する。そして、人化をして一団がいる場所に向かうのであった。


一方その頃アラクネ達は、離れているにも関わらず、グラデュース達の着陸した時の音と震動に驚いていた。


「なっ...皆の者警戒せよ!」


その声を聞いてアラクネ達は女王を取り囲むように警戒をする。


そこに、人の姿をしたグラデュースとテオフィロとドゥルシッラが現れる。


「お主らは、何者だ!答えよ」


「あぁ驚かせたなら悪い。この先に贔屓にしている村がある。そこに向かうなら何用で来たか尋ねようとしたのだ」


女王は普通の人間ではないと瞬時に察した。今話してるやつはあり得ない力を持っているなと両サイドにいる仲間も話しているやつ程ではないが、アラクネ達に勝ち目はないと悟る。そんなことを考えていると他のアラクネ達が騒ぎ出す。


「こちらの方をどなたと心得るアラクネの女王であるぞ!口の聞き方に気を付けろ」


女王は「ちょっ!えっ?やめて」と思うのだった。絶対相手の方が高貴な方だろうと。


「女王か...だからなんだ?俺は何用か聞いている。答えろ!もし、害をなすなら排除するぞ」


グラデュースは、威圧を放つ。流石のアラクネ達も強大な存在と気付く。威圧に当てられたアラクネ達は動くことも話すこともできない。


「き、気分を害したなら申し訳ない。ただ繁殖期を迎えて相手を探していただけなのだ。お主らに害を及ぼそうなど一切考えておらぬ」


それを聞いてグラデュースは勘違いだったかと思い威圧を収める。


「こちらも勘違いで、そちらの仲間を威圧して申し訳なかったな。じゃあ俺達は行くが気をつけるのだぞ。テオフィロ・ドゥルシッラ行くぞ」


あの威圧にこの強さ。とうとう見つけてしまったと思う女王。


「ま、待ってくれぬか?妾達もその村に連れて行ってはくれぬだろうか?当然部下達にはしっかり言い聞かせる故、どうか頼む」


ここで逃しては一生運命の人と出会えないと思った女王は何か理由を付けてついていこうと決断したのだ。


「別に連れて行くのは構わないが、さっきみたいな発言を部下がするようなら村には案内できない。偉そうな態度を取った時点で追い出すがいいか?」


グラデュースは、絶対に村へ変なやつは入れないという強い意志があるのだ。


「構わぬ!おい!お前たち絶対にあのような態度を取るでないぞ。妾よりも上の存在がいることがわかったであろう?態度を改めよ」


一斉に「はい」とアラクネ達から返事が帰ってくる。


「そういうことなら今すぐ案内しよう。付いてこい」


こうして新たな種族アラクネが村に向かって歩みを進めるのであった。

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