第190話 拗らせドルン最終的に放置される!
バルトとリケが外に出ると10人のドワーフが完全武装で立っていた。
「おっとー何しに来たっすか?早く帰れっす」
その声に気付いたドルンは、今までの真剣な顔が嘘のように目尻が下がりリケの元へ走る。
「リケちゃ〜ん!ブヘッ」
リケの見事なドロップキックがドルンの顔面へと突き刺さる。
「早く帰りやがれっす。鬱陶しいっす」
他に来ていたドワーフが顔を押さえて痛そうな顔をする。
「リケちゃん痛いじゃないか。それに鬱陶しいとは酷い」
「鬱陶しいものは鬱陶しいっす。リケは楽しく過ごしてるっすからもう帰りやがれっす」
「お互い落ち着くんじゃ。ドルンこんな完全武装までして何しに来たんじゃ?」
リケは、すぐにバルトの後ろに隠れて帰りたくない意思表示をする。
「決まってるじゃないか!リケちゃんを連れ戻す為にきたんだ」
「本人が帰りたくないと言っておるんじゃ。それにここは他の住人もおる。迷惑じゃし帰るんじゃ」
「嫌だ。俺は帰らん。リケちゃんが帰るまで帰らない」
その場に座り込むドルンに呆れ果てるバルトとリケ。
「お主らは何をしに来たんじゃ?まさかドルンにそそのかされて来たんか?」
集団の先頭にいたドワーフが話し始める。
「違います。私達はバルト様が必要で来ました。どうかドワーフ国に帰ってきて下さい。貴方のお力が必要なのです」
「酒も食いもんもまずいから帰らんぞい。ワシはここで暮らすと決めたんじゃ」
そう言うと先程のドワーフは、アイテム袋から樽を5つ出してきた。
「ここにバルト様の大好きな火酒があります。向こうに帰りましたら必要な量をご用意致しますのでどうか帰ってきて下さい」
昔なら5樽も用意されたら飛びついていただろうなと思うとバルトは思わず笑ってしまう。そして、アイテムボックスからスピリタスを取り出して、そのドワーフに渡す。
「それを呑んでみるんじゃ」
渡されたはいいがどう呑めばいいか分からず躊躇しているとバルトが蓋を開けてゴクゴクと呑み始める。見様見真似で蓋を開けて呑んでみる。
「な...なんですか!?この強烈でガツンとくるお酒は!しかも、強烈なのにまろやかで甘みも感じられます。どうやってこんな最上級のお酒を作られたのですか?」
バルトは、勝ったなと思ったと同時にしまったと悔やんでいた。何故酒好きなドワーフに、この神の如きスピリタスを呑ませてしまったのかと。
「うまいじゃろ?ここでしか手に入らん代物じゃ。それに絶対に知らんやつには売らんと決めとるらしいわい。どうじゃ?これでも連れ戻せる酒を用意できるかのぅ?」
「ぐぬぬぬ!悔しいですが、今のところ連れ戻せる物をご用意できません。今回は諦めますが、この酒を売ってはもらえませんか?ドワーフ王に呑ませてやりたいのです」
「無理じゃ無理じゃ!拓哉との約束じゃしな。さっさと諦めて帰るんじゃ。それとこの分からずやも連れて帰ってくれんか?」
あれからずっと目を瞑ったまま座り続けているドルン。
「ドルンさん帰りますよ。今回は諦めましょう」
「嫌だ!リケちゃんが帰るって言うまで帰らないんだ」
ジタバタ暴れて連れ帰るにも連れ帰れない状況である。
「バルトどうしたのだ?困っているようなら助けるぞ」
そこに現れたのは、拓哉に用事があって偶々来たヴァレリーであった。
「ヴァレリーちょうどいいところに来たんじゃ。こやつリケの父親なんじゃが、本人が嫌がっておるのに無理矢理連れ帰ろうとしておるんじゃ。1度頭を冷さんと話もできん。眠らせてくれんか?」
流石、ヴァレリーという感じで一瞬で眠らせる。ドルンは、その場で大の字になって大いびきをかいて寝ている。
「助かったんじゃ。すまんがはよ連れて帰ってくれんか?」
「は、はい!ですがバルト様、次は王に知れます。必ず取り返しにきますよ」
「次は来ん方がええぞ。あれもうちの住人じゃし、無理矢理荒らしに来おったらそっちが負けるからのぅ」
グラデュースとテオフィロとドゥルシッラが巡回していた。
それを見たドワーフは、腰を抜かして驚く。
「アハハ。私は幻を見ているのでしょうか?竜が3体も...それに1体はただの竜ではないような...」
「1体は古龍じゃな。それよりも王に攻めてくるなら勝手にせいと言っておくんじゃ。それとドルンをまともにするんじゃ。もうリケは成人しておるんじゃぞ」
なかなか話がまとまらず平行線を辿っているところに拓哉がやってくる。拓哉はアレンから話は聞いていて、自分にできることをしようとやってきたのだ。
「皆さん、とりあえず食事を用意しましたから食べながらゆっくり話してはいかがですか?長旅で疲れたでしょう」
「そうじゃな。拓哉気を遣ってもらってすまんのぅ。というわけじゃ、粋な計らいに感謝しながら食事を頂こうぞい」
ドワーフ達もお腹が減っていたのか。大歓声が起きる。拓哉の誘導で店に案内をするが、忘れられたドルンは放置されたままである。誰も気にも止めず立ち去っていくのだった。
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