第180話 アニカとの約束を果たす拓哉!

アニカとの約束を叶えてあげられないまま来てしまったので、昨晩アニカとの約束を守ろうと思いアニカに行くか聞いたところ大喜びしていた。桜花もラリサも気を遣ってくれたみたいで、二人で楽しんできてと背中を押してくれた。

約束とは何かというと、一緒に魔物を狩りに行ってその魔物を食べるというものだ。


「パパ用意できたの。オルとロスの装備も完璧なの」


アニカは、バルトに作ってもらった漆黒装備に身を包み新装備のハルバードを手に持っている。ハルバードとは槍斧みたいな武器である。オルとロスにも、お腹の弱い部分を守る漆黒の防具と手足にはめる用のアダマンタイト製の爪が付いたグローブを着用している。拓哉は、相変わらずのジャージである。


「おっ!アニカカッコいいな。オルとロスも似合っているじゃないか」


それを聞いたアニカは胸を張ってドヤ顔をする。オルとロスは素直に褒められて恥ずかしいのか?照れている。

何度も言うけど、拓哉は黒ジャージである。


「パパは何も着ないの?」


何も着ないは語弊があるぞと思う拓哉。


「普段狩りはしないからこれで十分なんだよな。じゃあ行こうか」


拓哉には、絶対防御があるから傷一つ負う心配はないのだ。だから、今日もピクニックに行くような感覚で出掛けている。


「楽しみなの〜」


オルとロスに跨ったアニカが大きな声で言う。アニカがこんな楽しみにしてくれていたのだと改めて知ってなかなか約束を果たせなくて申し訳ないなと思う拓哉。


それから、森の中を進んでいきゴブリンやオークやオーガが出てくるが、平然とアニカとオルとロスがバッタバッタと倒していく。拓哉は、後ろから食べられるオークだけを回収する回収屋さん状態だ。ふと上を見るとグラデュースとテオフィロとドゥルシッラが、空から偵察と監視をしてくれている。


「アニカ強くなったな。それに、オルとロスもアニカをうまく援護しているしいいコンビだよ」


「えへへ、褒められたの。嬉しいの」


「アニカ様は、お強いですからね。お仕えできて光栄です」 

「流石、アニカ様だぜ」


オルとロスもアニカが大好きなようだ。それにしても、凄い6歳児だよなと思う拓哉。


「拓哉さん、アニカ様。あっちの方に何かいるようです」


オルが何かに気づいて知らせてくれる。相変わらず、グラデュース達は旋回しているが何も警告をしてこないので危ない魔物ではないのだろうと予想する。

言われた所に向かってみると、体長10メートルくらいの牛のような魔物がいた。鑑定したところギングブルとのことだ。ブルの最上位クラスらしい。


「俺が突っ込んできたところを受け止めるから、アニカとオルとロスは横から攻撃してくれないか?」


あんなデカい魔物をアニカだけに戦わせるわけにはいかないと拓哉が率先して行動する。


「パパわかったの。任せてほしいの」


「拓哉さん...死にますよ」

「やめとけって。あれは流石にやべぇよ」


オルとロスは、拓哉の強さを知らないので止めに入る。

そんなことはお構いなしにジャージ一枚でキングブルの前に出ていく拓哉。


「キングブルこっちだこい!」


その声を聞いたキングブルは、助走をつけて拓哉に突進する。拓哉は身体強化をMAXにしてキングブルを受け止めて角を鷲掴みにする。動かない事に焦るキングブルが「ぶほフゴフゴ」言いながら必死で吹き飛ばそうとする。


「兄貴、拓哉さん凄いっすね」

「そうだな...」


オルとロスは拓哉の強さに驚き、恐怖すら感じている。


「オルロス行くの〜」


アニカは、なんの迷いもなくキングブルの横っ腹を斬りつける。オルとロスも、ハッとなりアニカについていき爪撃する。アニカもオルとロスの武器もアダマンタイト製で簡単に切り裂いてしまい、一瞬でギングブルは絶命した。


「アニカもオルとロスもよくやったな。早速捌いてステーキにして食べよう」


今までキングブルを受け止めていた人間とは思えない発言にオルとロスはポカーンとするがアニカは「やったの〜」と大喜びしている。


「アニカとオルとロスは枝と薪を集めてきて火を起こして」


「は〜いなの。オルとロス行くよ」


拓哉は、美味しそうな部位だけ切り取り、あとはアイテムボックスに入れる。体長10メートルもあるので血抜きは後々するようだ。


「ここは贅沢に少し厚く切って肉の旨味を存分に味わないとな」


肉を3cmくらい厚く切っていく。切っていると、アニカ達が帰ってきたようだ。アニカにネットショッピングで買った着火剤と着火マンを渡して火起こしをしてもらう。


「パパ、火がついたの」


「おっ!うまいことついたな。ありがとう」


火の回りをブロックで囲ってその上に鉄板を置く。そして、牛脂をひいてから切ったステーキを乗せる。乗せた瞬間、ジューっといい音がする。


「うわぁ〜おいしそうなの〜」


「兄貴、これはやばいっすよ」

「見りゃわかんだよ。この匂いやべぇよ」


アニカとオルとロスは、今にもヨダレが垂れそうになっている。

厚く切ったのでゆっくりじっくり焼いているが、どうやら待ちわびているようだ。


「お待たせ!焼けたぞ。熱いからゆっくり食べるんだぞ」


綺麗な焼け目からすでに肉汁がしみ出している。ちょうどいい刺しも入っていて柔らかそうである。


「おいしい〜の〜ちょっと噛んだだけでジューワーって肉汁が溢れてくるの。それに脂がとても甘くておいしいの。うわぁ〜口から溶けちゃったの」


「兄貴兄貴、これはやばいっす。じゅわ~っぷしゃ〜っす」

「うますぎてオルおかしくなってねぇか?だが、確かにこの肉は人生で1番うめぇな」


これは確かに全員がうまいと言うだけはあるなと思う拓哉。サーロインの肉々しさにフィレの柔らかさと肉の甘さに口の中に溢れるくらいのジューシーさを兼ね備えた肉なのだ。


「パパ〜お姉ちゃん達にも食べさせてあげたいの。だめかな?」


「だめじゃないぞ。いっぱい食べさせてあげような。村のみんなにもお裾分けしよう」


アニカの優しさに父親として感動する拓哉であった。

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