第137話 思い出の豚キムチを食べる殲滅龍!

リビングに案内された拓哉とボーン。

お茶を用意してくるとシェリーが言いキッチンへ行く。 その間、ずっとソワソワしている殲滅龍。 未だに自己紹介すらしてもらえていない。


「そろそろ豚キムチを食べさせてくれぇぇ」


さっきから豚キムチしか言っていないぞと思う拓哉とボーン。 仕方ないなと思うのと食べないと話が進みそうにないので、豚キムチをアイテムボックスから出してテーブルに置く。 もちろん、茂三さんの味をイメージして作った方だ。


「豚キムチの呪いにかかっているようなので、どうぞ、思う存分食べてください」


食べのの時点で口に入れている。

止まることを知らないのか見る見るうちにタッパーの中の豚キムチが消えていく。


「あぁぁぁ!これだ〜。 オーク肉に絡む辛いけど食欲をかきたてるうまさ。鼻に抜ける香辛料の匂い! それに、甘みたっぷりのシャキシャキした野菜。 何故、俺はライスの存在を忘れていたのだ。 ライスとお代わりはないか?」


抱きつきながらおかわりとライスを欲求してくる殲滅龍。 なんかグラデュースと喧嘩する理由がわかる気がするな。 お互いが自己中過ぎる。


バシーン!!


「アナタ、なにしてるの?お客様が引いているわよ。 少しは落ち着きなさい。 アナタは、昔から豚キムチになると周りが見えなくなるんだから」


あ痛タタタと頭を擦りながら涙目になっている殲滅龍。


「大好物なら仕方ないですが、自己紹介もまだですし、来た目的もまともに聞いてもらえていませんからね...」


またバシーンと叩かれる殲滅龍。


「アナタ、ちゃんと自己紹介して話を聞いてあげなさい。 豚キムチ食べたんでしょう?」


尻に敷かれているのか一切反論をしない殲滅龍。 殲滅龍が尻に敷かれてるってなんか嫌だなと思う拓哉。 強さを誇示してほしいと。


「シェリーわかったわかった。 拓哉とボーンすまなかった。 俺の名前は、ファルコン。 それで何かお願いしたいことってのはなんだ?」


やっと聞いてもらえると思いシェリーさんありがとうと心の中で言う。


「ある霊薬を作りたくて小瓶に血を頂きたくて伺いました。 そのお礼に豚キムチを食べてもらおうかなと。 お願いします」


拓哉は、えっ!と思った。 かなり渋られると思っていたのにあっさり血を小瓶に入れて差し出してきたファルコン。 じゃあ豚キムチいいよねみたいなキラキラした目で見てくる。 そんなに大好物なのかよと思う拓哉。


「あ、ありがとうございます。 これ豚キムチです。 奥様もどうぞ食べてください。 あとライスも出しますね」


ファルコンは、もう豚キムチとライスにしか目がいっておらず、豚キムチライス豚キムチライスを繰り返して食べている。 


「すいません...ありがたく食べさせてもらいます。 あと、主人も悪い人ではないので嫌わないでください」


最初は、マイペースな人だと思ったけど、常識のある方だなと思う拓哉。


シェリーも、豚キムチとライスを食べて昔を思い出したのかおいしそうに食べている。


「う〜ん! この味だったわ。 野菜が、こっちの方が甘みとみずみずしさがあってよりおいしいわ。 そうそう。はしたないけど、口の周りに付いたのを舐めるのがおいしいのよね」


ペロっと舐めながら、その味でライスを食べるシェリー。 この二人絶対豚キムチで出会っただろうと思うくらい豚キムチが好きなんだなと感じる拓哉。


「拓哉、素晴らしい豚キムチありがとう。 茂三との思い出を思い出せた。 それから、何故か拓哉から茂三の雰囲気も感じ取れるんだが...気の所為だよな」


え? もしかして、茂三が天界からついてきたのかと思う拓哉。 ワシここじゃよと背後に。


「現実ではないですが、ちょっと夢で会いまして色々見て学びました。 何か共通するものがあったのかもしれませんね」


「夢か...拓哉も店を構える料理人なのか? もし、そうならそれが共通点かもしれない。 もし、店があるなら行きたいんだが?」


あ〜来るのはいいけど天敵がいますがいいのだろうか?


「えっと...古龍のグラデュースがいるけど構わないですか? 一応、住人として住んでいるんですよね」


それを聞いたファルコンは、急に下を向いてバッと立ち上がる。


「あいつがいるのか! すぐ殲滅してやる。 一瞬で終わらせるから迷惑はかけん」


バシーン!とまた叩かれるファルコン。 これが夫婦漫才かと思わせるくらいに平手打ちが後頭部に何発も入っているんだが。


「アナタ、いい加減に仲直りしなさい。 ごめんなさいね。 ちょっとしたことで喧嘩して似た者同士なのよ。 狙っていた肉を取られたくらいで喧嘩しちゃうのよね」


飯の恨みは恐ろしいけど、それだけでこんなに仲悪くなるとは...


「グラデュースさんも、罰が悪く会えなさそうにしていたので、ここは大人なファルコンさんから歩みよってみては? そんなファルコンさんかっこいいですよね奥様?」


かっこいいにピクピクと耳を動かして反応するファルコン。 シェリーの返事を期待してか体がシェリーに少し傾く。


「かっこいいと思いますよ。 度量がある男性好きですから惚れ直しますね」


シェリーもわかっていて乗ってくる。 ファルコンの耳はピクピクピクピクと素早く動く。


「し、仕方ないなぁ。 俺が歩み寄ってやるとするか。 度量があってかっこいい殲滅龍だからな」


見事に乗せられたファルコンは上機嫌で鼻歌も歌っている。


「ファルコンさん、俺の味付けで作った豚キムチもありますから食べてくださいよ」


なにっという感じで顔がバッとこっちを向く。 すぐに、豚キムチを口に入れて食べている。


「似ているが...鼻に抜けない...でも風味や辛さにある旨味はこっちの方が上質だな。 食い慣れていなければ十分うまいがあっちの方が好きだな。 すまん...拓哉」


思い出を超えるのは簡単には無理だよなと思う拓哉だったがシェリーは違うようだ。


「私は、こっちの方が後々、クドくなくてさっぱりしてて好きだわ。 鼻に抜ける感じが少し苦手だったのよ。 拓哉さん、私も食べに行くわ。 場所を教えて下さい」


まさかとは思うが、サリアとリーリヤの時もそうだが、女性には地球産のキムチの方が好まれるのかもな。  


それから、目的は達成されたし場所を教えたので、ボーンの転移で帰宅するのであった。

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