第121話 ハンバーガーと変な笑い方のおじいちゃん!
ミネストローネモドキを食べて、体が温まり元気を取り戻したので再出発をするみんな。
「マリー、あとどれくらいで着きそう?」
ちゃんとした場所がわかればボーンの転移で行けるのだが、場所が見えてこないことにはどうしようもない。
「300年近く前の事なので完璧には覚えておらずすいません...」
マリーがシュンとなり落ち込む。拓哉は、慌てて弁解する。
「ごめん。 そういう意味じゃなくて単純にあとどれくらいなのか気になって...あ〜本当に恋愛経験がないからこういう時にどうしたらいいか...」
キザでもいいからカッコいいことを言える大人になりたいと思う拓哉。
「えっ!拓哉さんも恋愛経験ないんですか? 凄くモテそうなのに! 私も恋愛経験ないので仲間ですね」
恋愛経験がない仲間という同類を発見したことで、機嫌が治ったマリーが興奮して話しかけてくる。 その後も、お互いの自分の過去を話して、何故恋人がいなかったかの話に花を咲かせる。
後ろで聞いていたボーンと小次郎は。
「あの二人お似合いだと思いませんか?小次郎さん」
「そうだな。 それに、初心な二人を見ていると昔を思い出すようだ」
後ろから微笑ましく二人を見るボーンと小次郎。
「我々も懐かしい昔の恋の話をしませんか?私の...」
ボーンと小次郎も、若き頃の恋の話を始めるのであった。
恋話に花を咲かせていると小屋が見えてきた。 だがそこには、雪がなくデカい木と蔓が巻き付いた小屋がポツンとあるだけである。
「マリーさん、ここ?」
「はい!間違いありませんが、昔とはかなり違いますね。 あんなおっきな木はなかったです」
そんなことを話して小屋の方を目指して歩いていると後ろから声がした。
「お前らここに何しに来ただ? オイラを狙ってきたのけ?」
ガタイはかなりいいが白いヒゲで顔のほとんどが隠れたおじいさん?だった。
「ある方に会いに来ました。300年程前に、私の横にいるマリーとここで出会っているはずです」
横のマリーを見るが、ヒゲモジャ過ぎて顔が定かではないらしい。
おじいさん?は、マリーを凝視する。数秒経ったくらいで気付いたのか叫ぶ。
「うひょひょひょ、驚いただ〜。 あん時の娘っ子け? 全然変わらんちゅうことは、娘っ子もあれ飲んだのけ?」
特徴のある笑いと特徴のある口調のおじいさんは、マリーのことを覚えていたようだ。
「おじいさん、お久しぶり。私は飲んでないのよ。 あのまま死んでリッチになっちゃったわ。 聞きたいことがあったから、おじいさんが無事でよかったわ」
「おひょひょ〜! リッチけ?ワシがあれを奪ったから未練でリッチになっただか? あん時はすまんかっただよ〜」
自分の所為で、リッチにしてしまったと勘違いしているおじいさん。
「違うわよ。 あれは満足したから渡したのよ。 私、錬金術をずっとしていたら食べるのも寝るのも忘れちゃうのよ。 それで過労で死んじゃって...でも錬金術をまだ続けたい未練でリッチになったのよ。 自己紹介してなかったわね。私は、マリー...」
マリーは、一人ずつみんなの紹介をして、拓哉もボーンも小次郎も「よろしくお願いします」と挨拶する。
「オイラは、グリルちゅうからよろしくだ。 とりあえず、小屋で話は聞くからついてくるだよ」
グリルの案内の元、小屋に向かう。 だがあまりにも小屋が小さく、小次郎とボーンには外の警戒がてら待っていてもらうことにした。
「ほいで、オイラになんの用だか?」
「単刀直入に言いますが、殲滅龍が好きな料理とはなんですか? 霊薬を作るのに血が必要でして」
グリルが、眉間を押さえて考えている。
「不老不死になりたい理由を聞いてもいいだか?」
う〜ん?全部話すわけにもいかず一部だけ話す。
「今一緒に住んでいる人達とずっと暮らしたいからですね。 人間の私が1番先に亡くなりますから...」
それを聞いたグリルはまた考えている。
「オイラが昔行った料理人のじいさん似とるだ。 あれも異種族同士仲がよかっただなぁぁ。 考え事して悪かっただ...そんで、殲滅龍だが、オークキングキムチだっただか?それが好きちゅうとっただ」
ん??それ豚キムチですよね? もっと難解な料理かと思ったのに簡単過ぎて拍子抜けする拓哉。 ...待てよ! オークキングって見たことないし、キムチって人によって好きな味があるよな?意外に難しいのでは??
「どんなキムチが好きとかわからないですか? 辛いとか甘めとかでもいいから」
「わかんねぇだ。 オイラキムチの匂いが苦手だで...食べたことがないだよ」
手掛かりなしかぁ...でも好きな物はわかったからヴァレリーさんか?バクールさんか?サリアさん辺りに聞いてみよう。
「色々ありがとうございました。 お腹空いてませんか? お礼しますよ?」
「腹減ってるだ。 なんか食わしてくれるだか?」
アイテムボックスからハンバーガーを出す拓哉。
「ハンバーガーと言います。 両手で持ってガブッとかぶりついちゃってください」
そう言われたグリルは、嗅いだことのないいい匂いに負けてガブッとかぶりつく。
「うひょひょひょ!柔らかいパンがうまいだ...そんで、この口いっぱいに広がる肉の旨味に野菜のシャキシャキしたのがまたいいだ。 もっともっととオイラを駄目にしていくだよ。 タレもトマトの酸味と香辛料の辛さが相まって肉と野菜を昇華させとるだ。 チーズもとろとろでズルいだよ。 おひょひょひょ、オイラを誘惑するだ。 おかわりがほしいだが駄目け?」
ヒゲいっぱいにマスタードとケチャップを付けてうまいうまいと食べるグリル。 10個食べてやっと満腹になったようだ。
「おいしかっただぁぁ。 300年振りにうまい飯食っただよ。 ありがとうございますだ。 あ!お礼に今日釣ったフロストフィッシュをやるだ。 脂が乗っててうまいだよ」
初めて聞く名前の魚だ。 大きさはカンパチくらいあり、鱗1枚1枚がでかい。 拓哉は帰ってどんな料理にしようかと考えるのであった。
「ありがとうございます。 また何かあれば来ますね」
「また来てほしいだ。 次もうまいもん持ってきてほしいだよ」
その後、ボーンと小次郎と合流して転移で帰るのだった。 道中危険がなくよかったと思う拓哉。 そして、フロストフィッシュをどうしようかと思うのだった。
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