異世界のんびり料理屋経営

第98話 新しい風！！ 変化していく住人達！

マリーが、村のみんなに知らせに言ったことで、住人達が泣き腫らして顔を真っ赤にしている拓哉とラリサとアニカの前に集まる。

二人を知っているバルトと小次郎が声をかける。

「ラリサとアニカ、少し見ない間に大きくなったのぅ。　見違えたのじゃ。立派になって帰ってきてよかったわい」

二人の頭を撫でながら言うバルト。　バルトからしたら孫のような存在なのだろう。

「よく無事に帰ったな。　それから、アニカ...強くなったなぁ。　あとで軽く手合わせしてくれ。　それに、ラリサは魔力が充実してるところを見ると聖魔法を完璧に身に着けたみたいだな。　二人ともおめでとうだ」

小次郎は武人らしく、成長した姿を一目見ただけで把握したようだ。　それと、少なからず心配していたのか、労いの言葉もしっかりかけている。

「バルトさんと小次郎さん、ただいまです。　お元気そうでなによりです。　もし、怪我をしたら言ってくださいね。すぐ治療しますから」

聖魔法を極めたラリサは、大抵の怪我を治すことができるようになっていた。　その為、1番怪我をしそうな二人に伝えたのだ。

「そうなの。　アニカは、すんごく強くなったのぉぉ。　小次郎おじちゃん、いざ尋常に勝負するのです。　それから、バルトおじちゃんには、装備をお願いしたいの！？お願いなの...」

おじちゃんは間違いではないが、いつの間にか、おじちゃん呼びされているバルトと小次郎。　それより"いざ尋常に勝負"とか何処で覚えたんだと思う拓哉。

「怪我したらラリサのところにすぐ行くわい。　うむ！？　アニカ装備じゃと...あとで要望を言うんじゃ。最高傑作を作ってやるわい」

孫を可愛がるじいさんのようなバルト。

自分の胸を叩いて自信満々に言う。

「さっそくになってしまうが、アニカとの手合わせでラリサに治して貰おう。　アニカは、おもしろそうな武功を身に着けたみたいだしな。　楽しみにしているぞ」

盛り上がる4人だが、他の住人は置いてけぼりになっている。　

拓哉は、4人のやり取りを見てすっかり泣き止み冷静を取り戻すと同時に、神様に対してこの瞬間だけ、常時発動の冷静沈着のスキルを切ってくれて"ありがとうございます"と思うのだった。

「まさか、みんな集まってくれるとは...お恥ずかしいとこを見られてしまいました。　えっと...この二人は私の娘です。　二人とも自分で紹介しなさい」

拓哉が、手招きして二人を呼ぶ。　ラリサの肩を叩いて先に挨拶をしなさいと欲する。

「えっと...み、皆さんはじめまして、ラリサと言います。　魔国で修行や勉強をして今日帰ってきました。　ここの様子が前と様変わりして、わからないことばかりなので色々教えてください。　よろしくお願いします」

緊張しているので、声が上ずったりしてしまったが、ちゃんと伝わったようでみんなから拍手が贈られる。

「アニカって言うの。みんな仲良くしてほしいの。　格闘が得意だから強い人は、手合わせしてほしいの。よろしくお願いしますなの」

アニカが、いつの間にか戦闘狂になっていると焦る拓哉。　

拓哉は、心の中で思う。　一体魔国で、どんな訓練をしてきたのやら。はぁぁ....

それを聞いた非戦闘の住人は、小さい子が可愛いことを言っていると笑いながら拍手をしている。　だが、グラデュースやヤナは、相手の強さがわかるので、ニヤリと笑いながら戦闘を心待ちにしている。

「そういうことなので、皆さん仲良くしてあげてください。　ただし、手合わせをするならすぐ治療できるようにラリサがいる時か、ポーションを用意してくださいね。　あと殺しは厳禁ですからね。　ただでさえ化け物揃いなんですから.....もし可愛い娘に何かあったら殺しますよ」

安全を確保するように伝えながら、尋常ではない殺気をグラデュースとヤナに向けて放つ拓哉。　　普段そのような殺気を放つ拓哉を見たことがない二人は細心の注意を払って戦おうと心に誓うのだった。

冷え切った空気を変えるかのように桜花がやってくる？

「あるじが、泣いてるって聞いてきた....ってラリサとアニカ帰ってきてたのぉぉ！？」

料理の為に、魔物を取りに行ってお風呂に入っていた桜花は遅れて登場した。

まさかのラリサとアニカが、帰ってきていることに驚いた桜花。

「ラリサとアニカ、お帰りなさいだよ。　成長し過ぎて、魔国で会ったのに全然わからなかったよ。　これからは、家族だしよろしくなんだよ」

何かあるごとに、拓哉の取り合いでいがみ合ってが、まさかの桜花から家族という言葉に驚くラリサ。

「ふへぇ！？　う、うん！　桜花ただいま。　って手荒れ凄いよ！？　手を貸してみて」

そう言って桜花の手を握り呪文を唱えると、淡い光が桜花の手を包み、一瞬で元の綺麗な手になる。　日頃の皿洗いや調理の練習で荒れたようだ。

「ラリサありがとうだよぉぉ。　最近ガサガサして鬱陶しかったんだよ。　本当にありがとうだよぉぉ」

ラリサの両手を握って上下にブンブン揺らす桜花。　そこまで、喜ばれると思っていなかったラリサは「う、うん！どういたしまして」としか返せなかった。

アニカが、突然桜花に抱きつく。

「桜花お姉ちゃんただいまなのｸﾝｸﾝ。桜花お姉ちゃんの甘い匂い落ち着くんの...」

それを聞いた桜花は、アニカを抱きしめながら頭を撫でる。

「アニカ久しぶりなんだよ。　可愛いとこは変わってないんだよ。　でも、恥ずかしいからあまり嗅がないでほしいんだよ...」

クンクンされて、恥ずかしがる桜花。

「ゴホン！　その辺りにして、親睦会も含めて、みんなで朝飯作って食べましょう。　そろそろ、ヴァレリーさん達も出てきてください」

途中からヴァレリー一家に気づいていた拓哉が声をかける。

「バレておったか...雰囲気的に出づらくなってしまってな〜。　アハハハ」

乾いた笑いで誤魔化そうとするヴァレリー！　　ヴィクトリアもベアトリスも、アハハハと頭を掻きながら出てくる。

「何をしてたか知りませんが、食事にしますから、皆さん手伝ってくださいね」

拓哉の指示の元、久々の野外バーベキューが始まろうとしていた。