第92話 桜花の凄まじい成長と初の出汁取り!!
「ふわぁぁぁ!よく寝たなぁ。 もうこんな時間か...」
ヴァレリーと王様の一件で疲れた拓哉は、夕方まで寝ていた。 時間を見ると16時になっており、そろそろ開店準備をするかと起き上がり家を出る。
店に向かう途中に、露天風呂の方から狸と龍と魔王が大笑いしながら盛り上がっているのが聞こえた。 まだいるのか...早く帰らないかな?などと思いながら歩いていると店に着いた。
鍵を開けて中に入ると、厨房の明かりがついている。 桜花に鍵を渡しているので桜花だろうとは思ったが、何をしているのかなと顔だけ覗かせて厨房を見る。
畑で採ってきた野菜だろうか? 籠の中に入っている野菜を手に取り渡していた本の野菜の切り方の載ったページを見ながら野菜を切っていた。
「桜花、なにしてるの??」
切り終わったタイミングを見計らって声をかける拓哉。 拓哉の存在に気付いていなかった桜花はビクンと跳ねたように驚く。
「わぁぁぁあ! 驚いたんだよ。 あるじ、いつからいたの?」
可愛らしくアワアワしている桜花。
「おぉぉ!大きな声出すから俺も驚いた。驚かせてごめんな。 キャベツの千切りを始めた辺りからいたかな!? もしかして練習?」
恥ずかしそうにする桜花。
「そうだよ。早くあるじの役に立ちたいんだよ。 最近、お客さんも増えて作るの大変そうだから手伝えたらいいなって思ったんだよ」
先日から思っていたことだけど、会った時の桜花は凄い子供のような感じだったけど、こんなにも成長して父親想いのいい子に育ったなと思う拓哉。 このまま、娘として育てて料理にも興味があるなら教えてあげたいなと思う。桜花の頭を撫でる拓哉。
「桜花に手伝ってもらいたいんだけど、うどんの出汁を任せたいと思う。 ちゃんと横で見ておくからできるか? 完成したらきつねうどんを食わせてやるからな」
撫でられて幸せそうな顔をしていたが、まさか出汁を任せてもらえると思っておらず、ハッとして真剣な顔つきになる桜花。
「任せて!! 絶対成功させるんだよ。 久々の油揚げも楽しみだよぉぉぉ」
いつになく意気込む桜花。
いつも、真横で出汁を取っているのを見ていたからか、テキパキと必要な調理器具や材料を揃えていく。 だが、勝手に始めることなく、しっかり拓哉に確認をしてから出汁作りを始める桜花。
「鍋の中に水と煮干しと真昆布を入れて弱火で煮出したらいいんだよね??」
おっ!よく覚えているなと感心する拓哉。
「よく覚えているな。その通りだよ。 それで、沸騰する寸前に昆布を取り出すんだ」
うん!と言いながら作業をしていく桜花。
その間に拓哉は、事前に手打ちしていたうどんの生地を切っていく。 桜花も鍋を見ながら綺麗に青ネギを切る。 切る時の怖さのような物や無駄のなさに感心する拓哉。
「本当にうまくなったなぁぁ。 次から事前に必要な野菜を伝えておくから、畑で採ってきてもらった野菜を切るのは桜花に任せるよ」
一流料亭で出せるかと言われたら無理だろうとは思うが、うちみたいな定食屋に近い料理屋なら十分出しても問題ない見た目になっている。 更に切り口を潰さないように切っていることに感心する拓哉。
桜花は、褒められて嬉しそうにしているが、しっかり沸騰前に昆布を引き上げて確認した後、混合削り節を投入してしっかり手を動かしている。
「えへへ嬉しいんだよ。やっと少しはあるじの役に立てるんだよ。 次は10分経ったら1分蒸らすだったよね??」
そうだぞ。と言い、またまた頭を撫でてしまう拓哉。 それに、今でも十分役に立ってるよと思う。 畑の管理やアレンの家族を助けたことなどいっぱい助けてもらっている。
「本当に凄いな…合ってるよ。 漉(こ)す作業をしてる間に、別鍋で薄口醤油とみりんを混ぜて煮ておこうな」
その後の漉す作業も出汁と別鍋の物とうまく混ぜ合わせて完成させた桜花。
桜花が作った出汁に、拓哉が作ったうどんと油揚げと青ネギを盛る。 果たして味はどうなのだろうか?
汗を拭う桜花。
「ふぅ〜疲れたけど無事に出来てよかったんだよ。 おいしくできてるか心配になってくるよ...」
完成して緊張が解けたのか、一気に疲れが押し寄せる桜花。 その場にへたり込んでしまった。 拓哉は、手をつかんで立たせようとする。
「せっかく作ったんだ。 一緒に食べよう。 うまそうなのに冷めたら勿体ないだろ!? それに、桜花と初めての共同作業だしな」
あ!そうだ!一番好物のきつねうどんを食べなきゃと言う気持ちと、拓哉から言われた共同作業という少し意味深な嬉しい言葉に、すぐ立ち上がり席につく桜花。
「「いただきま〜す」」
二人ともまずは、出汁を飲む。
「すげぇぇぇ~うまいぞ桜花! コクもしっかりあって風味豊かでしっかり煮干しと昆布と削り節の良さが余すことなく出ていて、初めてとは思えない出来だ。 それから、今日うどんを出す予定だからこいつを使うぞ」
狸王(ガルード)にたぬきうどんを出してやろうと考えていた拓哉は、桜花が作った出汁を使おうと思いついた。
「グスン...おいしいんだよぉぉぉ。 それと、僕が作ったのを使ってくれるのも嬉しいんだよ。 グスン、あるじ、大好きだよぉぉぉ」
おいしいのと初めてお客さんに提供する物を作ることができ、嬉しくて泣いてしまう桜花。
「そんなに嬉しかったか!? うまいからもしかすると、営業中に追加で作ることになるかもな。 その時は、出汁作りは桜花に任せるからな。 その前に腹ごしらえだ。 俺の作ったうどんもコシがあって出汁と絡ませたらうまいぞ。 ほら、食おう」
その後、綺麗に完食をした拓哉と桜花。 今日の営業中、うどんを注文してくれる人は現れるのか!?
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