第86話 タコ焼きパーティー始まるよ〜!
拓哉と桜花は、厨房でタコ焼きの材料を用意している。 桜花も、手伝うということで材料を切っている。
「そうそう。 左手を切らないように、ちゃんと猫の手にして切ってな」
初めて包丁を握る桜花に教えながら準備を進めていく拓哉。 娘と料理をするってこんな感じなんだろうなと思いなんだか楽しくなる拓哉。
「切るだけなのに難しいんだよ。 もっと簡単だと思ったよ。 あるじは、やっぱり凄いんだよ」
褒めてもらって、ついついニヤけてしまう拓哉。
「練習したら桜花もできるようになるよ。 それより、遅くなったけどマルクス王国の件お疲れ様。 凄く頑張ったみたいで俺も嬉しいよ」
桜花の破茶滅茶な行動を知らない拓哉は、自分のことのように喜ぶ。 もし、無理矢理破壊してモニカとカイルの顔面をボコボコにした事実を知ったらどうなってしまうのか。その真実は一生闇の中であろう。
「えへへ、あるじに褒めてもらうのと、おいしいご飯の為に頑張ったんだよ。 あるじに褒められて嬉しいんだよ」
桜花は、満面の笑みを浮かべる。 あまりに嬉しかったのか、力が入り過ぎてまな板まで切ってしまう。
「ちょ、桜花嬉しいのはわかったから切るのは食材だけにしような」
仕方ないな〜という感じになる拓哉。
「ごめんなさいだよ」
下を向いてしまった桜花の頭を撫でて慰めながら、「次一緒のことをやらなければいいから」と言う。
桜花は、「うん」と答えて次は慎重に食材だけを切っていく。 食材を切るだけで色々あったけれども、無事に準備が出来て、あとは開始時間を待つだけとなった。
開始時間になるまでに、タコ焼きの食材を紹介しておこう。 地域や家庭によって様々なので賛否両論あるだろうが、是非一度試してもらいたい食材達だ。
まずは、タコは確実に明○産だ。柔らかさと歯応えとタコの旨味は絶品である。 あとは、天かす・こんにゃく・紅しょうが・ちくわ・青ネギだ。 こんにゃくとちくわの食感も楽しみながら、たまにピリっとくる紅しょうがのアクセントと干した桜エビの旨味のアクセントは、よりたこ焼きをおいしくさせる。 是非入れてほしい。
それから、ふわトロにする為に生地には山芋を入れるのだ。
「あるじ、力説してるけど誰に言ってるの?」
あははと笑いながら、拓哉本人も誰に言っているんだろうとなった。
そうこうしていると、いつもの常連と村?の仲間とアレン家族と遠征に参加したメンバーが集まりだす。
「今日は、マルクス王国の危機を救ったボーンさん フェンさん シャドーさん 桜花の慰労会としてタコ焼きパーティーをしたいと思います。 皆さんのテーブルに、タコ焼き器がありますので、私がやるのを真似しながらやってみてください。 失敗してもまだまだ食材はありますから」
拓哉が作ってもよかったのだが、ワイワイ楽しめるような会にしたくてこういう形式にした。 もちろん妖精は、ひっくり返せないので拓哉のテーブルにいる。
「まず、生地を流してください。 次に用意した具材を入れてください。 あとは、ひっくり返せるようになるまで焼けるのを待つだけです」
拓哉の言う通りに生地を流し込み、具材を入れていく。 ヴァレリーが作るのを見て似合わないなと拓哉が笑うのであった。
ある程度、いい具合に焼けてきたので慣れた手付きで綺麗にひっくり返す拓哉。
他のテーブルは、バルトは器用に「ほれほれ簡単じゃな」とか言いながらひっくり返しているが、ヴァレリーは、「クソ!うまくいかん。具が飛び出てしまったぞ」とか言いながら苦戦している。 苦戦しているテーブルには、拓哉が回って助ける。 テーブルを回って戻ってくると、ボーンが意外にも器用にひっくり返して綺麗な焼き目になっていた。 ふと、屋台でタコ焼きを売っているボーンを想像したら日本だったら爆売れするんじゃないかと思う拓哉。
「そろそろいい感じですからお皿に移して、ソースとマヨネーズと鰹節と青のりをかけてください。 そうしたら完成です」
同じようにみんなも真似してかけると、タコ焼き独特のおいしそうな香りが漂う。
その香りに、「おいしそう」とか「うまそうだ」とか「腹がなって我慢できない」とかみんな言っている。 その中で妖精が、定番のあれを口にする。
「おぉ〜この茶色の木屑みたいなのが生きてるよ〜ゆらゆら揺れてる〜」
日本でもよく小さい子供が騒いだりしていたよな。 妖精が、好奇心で指でツンツンしているのを見て思う拓哉。
「それは、生きてるわけじゃなくて、食べ物から出る水蒸気...う〜ん!?熱で見えない水分に変わってそれが当たるから揺れてるんだ。 難しいけど生きてるわけではないよ。 まぁとりあえず、熱いうちに食べましょう」
化学を説明してもわからないだろうからなんとなく伝える。 妖精も「ふ〜ん」と言いながらまだツンツンしていた。
熱いうちに食べての「べ」を言うか言わないかくらいで、みんなが食べ始める。
「ハフハフハフ。 熱いですが、中はふわトロでおいしいですね。 ソースの味と中の具材の味とが相まって最高の料理になってますよ。 あ〜任務頑張ってよかった〜幸せだ」
シャドーは、この世にもう未練がないような顔しながら食べている。
「味は絶品ですね。 いくつでも食べられそうです。 味は言うことなしですが、食感も素晴らしいです。 カリとした外側を噛めば、中はトロトロの具材の旨味と溶け合った生地にタコの程よい柔らかさに、こんにゃくとちくわのそれぞれ違ったおもしろい食感! 味以外も楽しめる食べ物とは素晴らしいですね」
ボーンが力説しながら語っている。 横でフェンは、ハフハフハフ言わしながら味わってるのかわからないスピードで食べている。
「おいしいなぁ。 これ僕の大好物になったよ。ハフハフハフもっと焼いてほしいな?」
はいはいと言いながら拓哉は第二弾を焼く。
「あるじ、おいしいよ。 自分で切った食材が入ってると思ったらいつもよりおいしく感じるんだよ」
かわいいことを言う桜花の頭を撫でながら、「そうだろ?自分で作ったのもおいしいよな」と返す拓哉。
せっかく和んでいたにも関わらずヴァレリーの声が聞こえる。
「拓哉〜また具が飛び出したのだ。どうにかしてくれ〜」
はいは〜いと焼くのをボーンに任せて、焼くのが苦手なテーブルを回り続けることになる拓哉。
ふと、アレン家族を見ると、3人で仲良くタコ焼きを焼きながら、「おいしい」とか「ここに住めて幸せ」とか「貴族の時より贅沢ですよ」とか家族団欒で楽しんでいる風景を目にして拓哉は馴染めそうでよかったと思うのだった。
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