第85話 アレン家族との話し合いとシャーベット!
食事を終えた拓哉とアレンとモニカとカイルは、向かいながら座っている。
ボーンと桜花からマルクス王国での出来事を聞き、今後どうするか話し合うこととなった。
「私は、ここで料理屋をしている拓哉と申します。 モニカさんとカイルくんよろしくお願いします」
事前に、アレンから拓哉がどういう位置付けにいる人物なのかを聞いている2人は、料理屋の店主と聞いても疑問に思わず答える。
「アレンの妻のモニカと申します。 この度は、高価な薬で夫を助けて頂いたそうで、本当にありがとうございます」
頭を下げるモニカ。
「カイルと申します。 本当に、お父様を助けて頂きありがとうございました」
泣きながら頭を下げるカイル。
「そのことは、アレンさんから事前に何度もお礼を言われていますし、気にしないでください。 まず、今回関わった首謀者は皆制裁を受けています。 もう、アレンさんの前に現れることはないでしょう。 それから、証拠は全て王様に渡り王様にかけられていた洗脳も解かれたそうです。 全ては、公爵と第二王子の陰謀ということです。 そして、王様から謝罪をしたいということですが、アレンさんどうしますか?」
それを聞いた3人は、驚きの顔を隠せないでいた。 腐敗した真実を知り言葉に出来ず沈黙した時間が流れる。 数十秒経ったくらいか、アレンが一息吐き話し出す。
「ふぅ〜まずは、拓哉さんのお仲間に感謝の意を後ほどお伝えしたいと思います。 私自ら成し得ることができなかったのが残念ではありますが、王国が正常に戻るのであれば嬉しい限りです。 そして、王に伝えて貰いたいのですが謝罪は必要ないと!それから、これからの繁栄を陰ながら願っているとお伝えください」
まさかの回答に拓哉は驚く。 てっきり貴族として戻ると思っていたからだ。
「アレンさん、本当によろしいのですか?わかりませんが、陞爵だってあり得るかもしれませんよ」
アレンは、にこやかな顔をする。
「もう貴族のしがらみに疲れましてね。 ここで、数日ですが過ごしてみて貴族時代では味わうことができなかった仕事や純粋に笑い合うこと、それに楽しくおいしい食事。 ここで生活したいと心より思いましてね。 家族とも軽く話したところ快い返事を貰いました。 ここに居ることを許可して頂けませんでしょうか?」
3人が頭を下げる。
「私は構いませんよ。 以前言った仕事をこなしてもらいさえすれば。 アレンさんは、大丈夫か...モニカさんとカイルくんは、貴族でなくなる生活と他種族に対する偏見や恐怖は大丈夫ですか?」
これが一番の問題だと拓哉は思っている。 生活水準が落ちると人間はストレスが溜まる。 それに、今まで人間としか関わっていなかった人が他種族と生活を共にできるのか。
「私は、元々農民の娘です。 アレンを愛していたので耐えてきましたが、正直貴族社会は性に合わず平民として家族3人で暮らせることを望んでいます。 それと、他種族の方にまだ怖い面はありますが、ボーンさんに最初お会いした時、化け物と叫んでしまいましたが、一切怒る様子もなく接してくれて息子には魔法を教える約束までして頂けました。 慣れるまでは大変でしょうが、ここでの生活を望んでいます」
貴族としては珍しく農民の娘を妻にもらうとはと思う拓哉。 それに、裏表なく我儘を言うわけでもない強い意志を持ったモニカに好印象を抱く拓哉。
「僕も、お父様とお母様の考えに従います。 周りからもお母様のことで陰口を言われて嫌な思いをしていましたし、あのような者達から離れられるのであれば嬉しく思います。 それに、他種族の方は優しいですし、僕の知らない知識や魔法を教えてくれます。もっと教えてもらいたいです」
そうか...農民の血を引いているだけでいじめが起こるのか。 貴族とは面倒だなと思う拓哉。 それと、子供の順応の早さに驚くのであった。
「わかりました。 ボーンさんから王様に戻る意思はないことを伝えて貰うように言っておきます。 後々、攫ったなどと文句を言われても困りますからね。 あ!それから、今後メニューに加えようと思っているオレンジと柚子のシャーベットを食べて感想を聞かせてもらえませんか?」
色々あり、精神的にも肉体的にも疲労しているだろうと思い甘くて冷たいシャーベットを試食してもらおうと思った拓哉。
3人の前に、柚子とオレンジのシャーベットを置く。
「白っぽくて黄色いつぶつぶがあるのが柚子で、こちらがオレンジ...ミンカに近い味のシャーベットです。 召し上がってみて下さい」
アレンは、柚子シャーベットを口に運ぶ。 ミンカと聞き、モニカとカイルはオレンジシャーベットを口に運ぶ。
食べた瞬間の冷たさと食感に驚く3人。
「冷たくておいしいです。 ミンカの味と甘さが口いっぱいに広がって食べたことがないお菓子です。 本当にここにきてよかったです」
幸せそうな顔をするカイル。
「ふわぁ〜少しシャリシャリとして口に入れた瞬間、すぐ溶けてカイルの言った通り口いっぱいに広がる甘さ! それに、こんな冷たいお菓子今まで味わったことがありません。 貴族をやめて正解ですよ。 毎日注文したいくらいです」
とろけた顔をするモニカ。
「このお菓子は凄いですね。柚子は初めて口にしますが、つぶつぶを噛むと柚子の味が広がりお菓子の筈なのにさっぱりとして非常に食べやすいです。 もし、売り出したらこの暑い時期飛ぶように売れますよ。 商品化して売るおつもりですか?」
元貴族なのが伺える考え方をするアレン。
拓哉は、ここ以外で売る気はないので否定する。
「先程も言った通り憩い亭のメニューに載せるだけです。 他国に売る気はありませんよ。 もし教えるなら魔国くらいでしょうかね。 それで、メニューに載せるべきだと思いますか?」
他国に売らないと聞いてアレンは残念がっていたが、それ以上無理にその話をする様子はない。
カイルとモニカは、絶対メニューに載せてほしい。 毎日食べたいと強く要望してきた。
その後、家が完成するまでの宿に案内をして、バルトに3人の家の建築を頼みボーンには先程話したことを王様に伝えて貰うようにお願いをした。
それから拓哉は、夜のタコ焼きパーティーの準備を進めるのであった。
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