第81話 閑話 任務よりもお弁当!更にシャドー進化する。

王国近くの森の中


桜花とシャドーは、アレンの家族を迎えに行く為に、夜になるまで身を潜めていた。 

空が暗くなり月明かりだけが照らす。 行動開始の合図だ。 しかし桜花は、まだ動かない。


「まずは、お弁当を食べるよ。 シャドーもほら座って」


何を言ってるのだ?こいつはという感じで桜花を見るシャドー。 シャドーは、元は人間の暗殺者であり、死んでレイスになってからもスキルをそのまま継承した特異レイスである。 無口なシャドーは、首を横に振る。(いらないの合図だ)


桜花が神気をレイスに向けて放ち脅す。

「あるじのお弁当が食べられないの? 早く座るんだよ。 わかった?」


神気を浴びたシャドーは、冷や汗をかいてプルプルしながら言われた通り座る。

シャドーは、心の中で俺はレイスだ!食べられる訳ないだろと思っている。 


だが、何故だろうか?先程から地に足がついている感覚がある。 シャドーが、自分の足を見ると生前に見た自分の足があるのだ。それだけではない腕も手も触ってみると顔もあるのだ。 


思わず叫ぶシャドー。

「なんじゃこりゃ〜。 なんで手と足もあるんだ〜」


桜花は、弁当に夢中でシャドーが変化したことに気づいていなかった。 叫ぶ声を聞いて桜花がシャドーを見る。


「うるさいんだよ!急に大声出さないでほしいんだよ。 えっ?シャドー肉体あるけど、そんなこともできたの?」


そこにいたのは、片方の目が隠れるくらいの長髪で青髪の切長の目をした。 闇を抱えていそうだがイケメンの部類に入る男がいた。


「イヤイヤ! 俺レイスだから。 肉体元々ないから。 貴女のあり得ない力を浴びたら変化したんだ」


無口なシャドーは、これでもかと饒舌に話す。


「アハハ、よかったんだよ。 まぁとりあえず食事をして任務に向かうんだよ。 これシャドーのお弁当だから」


桜花も何故進化したのかわからないので、敢えて触れないように弁当を食べようと言う。


納得してないが仕方ないかと言うような返事をするシャドー。

「はあ...よくわからないけど、肉体が戻って有難いのは確かだ。 死んで以来の食事頂こう。パクっモグモ...ググスン」


急に泣き出すシャドー。 慌てる桜花。


「シャドーどうしたんだよ。急に泣き出して?」


泣きながらも次々弁当を口に運ぶシャドー。


「うま〜い。 これが魔王様が愛してやまない拓哉さんの料理。 グスン。陰から見ながらずっとおいしそうだなと、毎日思っていた料理を口にする日がくるなんて。 唐揚げの噛んだ瞬間の肉汁としっかりタレに漬け込まれた肉の旨味! それを優しく包み込み更なるうまさへと昇華するライス。 幸せだ〜生きている時ですら味わったことがないうまい料理」


諜報活動以外は魔王様にバレないように、出かける際は密かに後を追ってきた。 影として生きるそれが自分の仕事だ。ある日から、料理屋に通うようになった魔王様を遠目から眺める日々。 唐揚げ ドラゴンの焼き肉 ナポリタン キマイラのたたき エンペラーカツ ラーメン!見たこともない美しく、おいしそうな料理を目の当たりにして、いつか夢が叶うなら一度でいいから食べたいとそう思っていたシャドー。 今その夢が叶ったのだ。 歓喜するシャドー。


「桜花様、夢を夢を叶えて頂きありがとうございます。 こんなことが叶うなど思ってもいませんでした。 はぁ〜この至高の卵焼き。 どうしてこんなに美しくうまいのでしょうか。 食べるのがもったいない」


恍惚な表情で卵焼きを見るシャドーに引き攣った顔で答える桜花。


「そ、それは、よかったんだよ。 これから、いっぱい料理が食べられるよ。 それより食べ終わったら任務を遂行しないとだよ」


それを、聞いたシャドーは恍惚な表情から一変真剣な顔になる。 やはりこういうところはプロなのだろう。


「あの〜お茶頂けませんか?」


それを聞いた桜花は、任務で真剣な顔になったんじゃなくて、食べ終わって満足後の一服したい顔かよとズッコけるのであった。


「はいはい! 飲んだら行くんだよ。 それからキャラ崩壊してるけどいいの?」


もうどこをどう見ても無口キャラではなくなっているシャドーにツッコむ。


シャドーが言う。

「ん〜この緑茶は、体に沁みますねぇ。 今後仕事前には緑茶にしましょうかね。 ん?キャラですか?元々こうですよ。 影とかシャドーとか呼ばれていると、こうした方がかっこいいかなと思いましてね。 陰のある感じを演出するとモテそうでしょ?」


完全に和むシャドーを見て、こいつ大丈夫なのかと思う桜花。


「よくわからないけど、今のシャドーの方が万人受けすると思うんだよ。 無口は近寄り難いと思うよ」


顎に手を当てて考えるシャドー。


「ふむ〜桜花様が言うなら正解なのでしょう。 今から無口キャラを捨て生まれ変わりましょう。 よし!では生まれ変わった初任務行きましょう。桜花様」


自分に肉体を与えてくれた桜花を崇拝して様をつけるようになったシャドー。


この後、果たしてこのコンビはまともにアレンの家族を連れてこれるのであろうか?

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