第80話 閑話 ボーンの活躍とマルクス王国の改革の始まり!

王城の屋根!


念話をするボーン。

『こちらは、最終段階に入りますよ。 フェンは終わりましたか?』


城の最上部に腰をかけながら、拓哉が用意してくれた水筒に入った緑茶を飲むボーン。


念話を返すフェン。

『僕も終わったよ。 公爵の屋敷で色々見つけたから共有するね。 まずは、アレンに呪いを依頼したのは第二王子みたい。 第一王子と第三王子も呪いを受けてるね。 それから、王様は洗脳されてるみたい。 全ては公爵が裏で国を操り、第二王子を次期王にする為だね』


死んだ公爵の背中に座りながら話すフェン。


『そうでしたか。 いつから洗脳されていたのでしょうか? 洗脳を解いて事実を突きつけて話し合いをしましょうかね。 その証拠を王城まで持ってきてください。 頼みますね』


現国王は、ある時期から獣人の奴隷を容認していたり、人間の国以外と国交をしなくなるなどの豹変ぶりを見せた。 どうやら根深い闇が潜んでいるのであろう。


『了解! 桜花達の様子と少し時間がかかる事を伝えてから向かうよ。 それじゃ。また後で』


念話を切って2人は、自らの任務に向かうのであった。


ボーンは、これまでと同じ手順で侵入をし、部屋にサイレントの魔法をかける。姿を消したまま寝ている王の頭を鷲掴みにして、洗脳を解くアンチブレインの魔法をかける。 その直後、王は悶え苦しむかのような悲鳴に近い声を上げる。


「ぐわぁぁぁぁぁうぅぅぅぁぁぁぁ」


洗脳が解けたのか、静かになり気を失う。

容赦のないボーンは、アラウザルという魔法を唱え王を目覚めさせる。


「うぅ... ワシは、何をしておったのだ? くっ! 頭が...」


混乱している王に対して、姿を消したまま話しかけるボーン。


「目覚めましたかな? 王様」


王は痛む頭を押さえながらも、声がした方を向き答える。


「ぐっ...貴様誰だ。隠れておらんで姿を見せい」


姿が見えない恐怖を抑えながら、王として虚勢を張る。


「姿を見せていいのですが。 きっと驚かれますよ。 その前にまずは、この不正の数々を見てください」


大量の不正の紙をアイテムボックスから出して王に渡すボーン。 恐る恐る受け取り、中をゆっくりと確かめる王。

不正の紙を読み進めている王は、顔を真っ赤にしたり青ざめたりと様々な顔をして頭を抱えてため息を吐く。 


「嘘だと思いたいが、筆跡も印も全て我が国の貴族のものだな。 嘆かわしい...! すぐに調査をして不正をした者を捕縛せねば」


兵を呼ぼうと立ち上がる王。 それを静止するかのように話し出すボーン。


「少しお待ちください。 既に私と仲間が不正をした者を排除しました。 もうすぐしたら更なる衝撃的な事実が記載された証拠が届くでしょう。 その前に、今何年だと思われますか?」


何を言っているのだという顔をする王。


「誰かはわからんが、既に解決してくれたのだな。一応感謝する。今か?何を言っておる1460年ではないのか?」


「1492年ですよ。 先程、私が洗脳を解きましたが、32年も洗脳されていたのです。 鏡をご覧なさい」


それを聞いて、何を言っているんだと思いながらも、姿見の前に行く王。 その老いた姿を見て膝をつき泣き崩れる。 


「これがワシなのか? ワシは一体どうしてしまったというのだ...」


あまりに衝撃的だったのか、その場で泣き崩れたまま動こうとしない。


「受け入れないでしょうが、これが真実です。 ちょうど、こうなってしまった。証拠を持った人物がきましたね。 まずは、その証拠を確認してください」


泣き崩れる王を立たせてベッドまで運び座らせるボーン。


「持ってきたよ。って王様泣き崩れてるけど、そんな酷いことしちゃったの?」


フェンは、ボーンが王様に精神攻撃か何かをしたと思っている。


「そんなわけないでしょ。 バカなこと言ってないで、証拠書類を王に渡しなさい」


はははと笑いながらフェンは窓から中に入り王へと書類を渡す。 書類を受け取った王は、書かれた内容をゆっくり確認する。


「そうか。ワシが洗脳されておる間にこのようなことが...! アレン伯爵率いる王族派の貴族には詫びても許されんことをしてしまった。 それに、他国に自市民にまで...! それよりどこの誰かはわからんが、洗脳を解いて不正の証拠までありがとう。 すまぬが、姿を見せてはくれないか?」


全てを知ってしまった王は、ただただ呆然として事実を受け入れるしかなかった。 それでも、今回の功労者に対してしっかりお礼を言いたく姿を見せてほしいとお願いする。


「私は、ノーライフキングです。 貴方達が忌み嫌うアンデットの類です。 このままの方がよいのでは?」


まさかノーライフキングだとは思っていなかった王は、驚いた顔になる。 しかし、助けてもらった以上、種族など関係なく感謝しなくてはと思う。


「構わん。 種族などこの際、関係などない。 人間ですら、ワシを洗脳し息子にまで呪いをかける腐った種族なのだからな。 こうやって助けてくれたノーライフキングの方がよっぽど信用できる」


ボーンは、それを聞いてまだましな人間もいるじゃないかと思う。 透明化の魔法を解き姿を見せる。 王は、少したじろいを見せたが、まっすぐボーンを見つめてお礼を改めて言う。


「まさか本当にノーライフキングだとは、死を司るノーライフキングに救われるとは...本当にありがとう」


先程から少し言葉に含みがあり、少しムッときそうな言い方だが、元々恐怖の対象である為、この言い回しも仕方ないとボーンもフェンも思う。 それよりも、素直に感謝されたことに驚く。


「まさか、感謝の言葉を言われてしまうとは驚きました。 それから、アレン伯爵は安全な場所に匿い、ご家族も連れて行くところです。 後日、アレン伯爵とお会いしますか?」


それを聞いた王は、アレン伯爵は死んでいなかったのだと安心する。


「是非、謝罪する場を設けてほしい。 そして、非公式ではあるが、其方らにも褒美を与えたいと思う。 ワシからお願いがあるんだが、聞いてもらえないだろうか?」


その場で土下座をして懇願をする王。


「なんでしょうか?」


「息子の呪いをどうか解いては頂けないだろうか? この通りだ。 頼む」


ボーンの足に縋る勢いで頼み込む王。


「構いませんよ。 第二王子と今回呪いや洗脳に関わった者達を処刑して頂けるのであれば。 まぁ王がしなくとも、私が出向き死を与えますがね」


王国の為ではなく、拓哉の障害になる者を排除しようとするボーン。


「それは当たり前だ。 すぐに、捕縛し牢に閉じ込め、後日処刑を約束しよう」


「そうですか。 では、呪いを解いてこちらまで運びますので、経緯の説明や今後の動きの説明はよろしくお願いします」


ボーンは、転移で王子の部屋に行き呪いを解いて、ものの数分で2人の王子を連れて王の部屋に戻る。 


「少ししたら目覚めると思いますので、あとは頼みましたよ。 明日、この時間にアレン伯爵の件で参りますのでよろしくお願いします」


何か言いたげな王をよそに会釈をして、ボーンとフェンは桜花とシャドーが待つポイントに向かうのであった。

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