第46話 ダブル女王のお忍び来店!!
森の中で、会話をする2人がいた。
「フレデリカ(妖精女王)、こっちで合ってるの?」
「キャリーナ(精霊女王)大丈夫よ! 1度来たことあるんだから」
何故2人で行動しているかは、時を遡り説明しよう。
精霊女王の私室。
「久しぶりね。こんなとこにくるなんて珍しいけど何かあった?」
「ふふ、キャリーナが驚く物を持ってきたのよ。 タルトって言うんだけど騙されたと思って食べてみて」
精霊女王は大人サイズの女性の姿をしている。 この世の者とは思えない綺麗な顔立ちに黄緑色の髪に、スタイル抜群で胸はFカップくらいあり体は輝いている。
木のフォークで切り、タルトを口に運ぶ。
口に入れた瞬間、キャリーナは体を震わせる。
「ん〜〜おいしい〜!見た目からおいしそうと思ったけど、この果実凄いわ。 熟した果実より甘いなんて...それにサクサクの生地にも合う〜。 こんな凄い物どこで手に入れたのよ?」
「おいしいでしょ? これはね、魔境の...」
拓哉との出会いと、害のないとてもいい人間であることをキャリーナに伝えた。
「信じられないことだけど、フレデリカが言うのだから間違いないわね。 まさか、あんな所に凄腕の料理人が住み着いているなんて。 フレデリカ、私も行きたい」
「そう言うと思ったわよ。 でも、普通に行くってなったら、私も貴女も何ヶ月も掛かるわよ。 だから明日、密かに抜け出しましょう」
女王という身分があり、周りがうるさく最低でも出発に1ヶ月はかかるのである。 ましてや、人間相手ということで許可が下りない可能性もある。
「ふふ、昔を思い出すみたいで楽しいわね。 よく2人で抜け出して怒られたわよね」
「今回は、前より怒られそうだけど仕方ないわ。 ちゃんと書き置きは残していきましょう」
【2人でおいしい甘味を食べに行ってきます。 探したり兵を出したりしたら、みんなクビにしますからね。 2日で帰るから、お叱りは帰ったら聞くわ。あとはよろしくね。byフレデリカ&キャリーナ】
部下が手紙を発見した時には、2人の姿はなく大騒ぎになるのだった。
時は戻って森の中。
「まだ着かないのかしら?」
キャリーナが言う。
「もうすぐよ。ほら見えてきた。 それにしても前来た時より、綺麗になっているし家も増えたわね」
「この石畳綺麗ね。 家の造りもドワーフのようだわね」
正面から2人に近づいてくる人物がいた。
「やっぱりフレデリカさんでしたか。お久しぶりですね。 こんな早くどうしたのですか?」
桜花が、妖精と精霊が来たことを拓哉に伝えていた。
「お久しぶりですね。 お元気そうで何よりです。 今日は友達のキャリーナを連れてきたんです。 何か甘いお菓子はないかしら?」
紹介されたキャリーナは、何故か家臣の様な姿勢を取る。
「え?キャリーナどうしたのよ?片膝なんかついて」
「どうしたもこうしたもないわよ。 姿は人型だけど、こちらにいるお方は高貴な人よ。 フレデリカも俯きなさい」
桜花を見ながら言うキャリーナ。
どうしていいか分からず戸惑うフレデリカ。
「桜花が何か言わない限りこのままだぞ。 何か言ってやってくれないか?」
拓哉が、いたたまれず言う。
「わかったよ。 僕は気にしないから普通に接してほしいんだよ。 早く立って普通にして」
それでも立たないキャリーナに「命令だよ」と言って無理矢理立たせる。
「申し訳ございません。 神に近い存在を目の当たりにしてしまい...」
「えっ!?神に近い存在なの? 気づかなかったわ」
精霊女王だけあって、神気に近い何かを感じるのだろうかと思う拓哉。
「ははは。本人が気にしないでほしいと言っているので、普通に接してあげてください。 ちなみに私が店主の拓哉で、こっちが桜花です」
「よろしくなんだよ。 一応神獣だけど普通に接してほしいんだよ。命令だからね」
「神獣様〜〜!?」
フレデリカとキャリーナが叫ぶ。
「大丈夫ですか? とりあえず甘い物出しますので店に行きましょう。ほらほら」
このままでは埒があかないと思い話を進める拓哉。
「はい。わかりました。はぁ〜まさか神獣様だなんて。フレデリカ知ってたわね?」
「キャリーナ、私は知らないわよ。知ってたら初めから伝えてるわ」
なんだか後ろで言い合っているが、話しかけたら長くなりそうなので無視して案内する。
「お2人共、お席に座ってお待ちください」
桜花と拓哉は、厨房に向かう。
「桜花、災難だったな。 あとは俺がやるから桜花は好きにしていていいよ。落ち着いて、また桜花を見たら畏まって大変になりそうだし」
またあの光景を繰り返すのは嫌だしな。
「あるじ、感謝だよ。 森を散歩してくるよ」
「いってらっしゃい。 気配がなくなったら帰っておいで。デザート用意しておくから」
「やった〜あるじは優しいんだよ。 行ってきま〜す」
裏口から出て行く桜花を見送る。
それでだ。今回出すデザートは、プリンアラモードだ。ちょっと王道過ぎるとは思うけど、プリンにアイス食べさせたいんだよな。
乗せる物は、プリン 桃 りんご イチゴ チェリー 練乳入りホイップ ミルクアイス
次もデザート好きが来てもいいように、事前にフルーツの砂糖漬けを用意していたのだ。
盛り付けを終えて、ホールに向かう。
先程まで、話し合っていたのが嘘のように、静まりかえっていた。
「大変お待たせ致しました。 プリンアラモードです」
キャリーナとフレデリカは目を輝かせながら見ている。
「芸術ね。 鮮やかな色合いに様々な果実が彩られていて食べるのがもったいないわ」
また私の知らないデザートがあるなんて、このお店にはいくつ知らないデザートがあるのかしらと思うフレデリカ。
「本当美しいわ。 でも早く食べたい。 頂きましょう」
キャリーナがりんごを食べる。 フレデリカはmyフォークを取り出してアイスを食べる。
「ん〜〜おいしいわ。 シャリシャリとした食感に、本来は甘酸っぱい果実が砂糖に漬け込むことでより甘さが増して、更においしさを引き上げているわ」
「ん〜〜甘くてなめらかで、ほのかに乳の香りがしておいしい。 こっちの果実(桃)も噛んだ瞬間にジュワッと甘い水分が出てきてみずみずしくておいしいわ」
「このプルプルした食べ物凄くおいしいわね。 滑らかな食感に甘さはさる事ながらこの濃厚さも素晴らしいわ。それに茶色のほろ苦いところと一緒に食べると、より一層この食べ物の良さを際立たせるわね」
このプリン本当に画期的だわ。
絶対に精霊達の間で広めたいと思うキャリーナ。
「キャリーナの言う通りおいしいわ。 でもこの冷たい(アイス)のもいけるわよ。 口に入れた瞬間、冷たさを感じて乳の香りと甘さが広がってすぐ口から消えるのよ。 食べたことないわ」
このお菓子だけで1つの食べ物なのに、それを詰め込んで出すなんて卑怯だわ。 贅沢の極みよ。
「はぁ〜幸せ! 食べたことない物ばかりだったわ」
2人は、残すことなく綺麗に食べ尽くした。
「拓哉さん、このプリンアラモードを、私とキャリーナ分のお土産で沢山頂けませんか?」
「1つ1つ小分けになっていて、これと少し異なりますがいいでしょうか? あと代金は前回頂いたのから差し引いて大丈夫ですか?」
「はい!それで構いません。 代金もそこから差し引いてください」
了承を得たので用意する為、厨房にいく拓哉。
「フレデリカ、私の分も払ってもらってよかったの?」
キャリーナな申し訳なさそうに言う。
「今回は、私が誘ったしいいのよ。次回は奢ってね」
「次回は、任せて。 それにしても、こんないいお店教えてくれてありがとうね」
「ふふ、友達でしょ。 素敵な場所は、共有しなきゃ」
仲のいい2人は笑顔で話をしていた。
拓哉が戻ってくる。
「お待たせ致しました。 部下の方が多いと思いますので、100個ずつ用意しました。 一度出したらすぐ食べてください。腐りやすいですから」
それを聞いたフレデリカとキャリーナは、アイテムボックスに仕舞う。
「わかりました。 凄く美味しかったです。またきますね」
「次回きた時は、また新しいお菓子食べさせてくださいね。 凄く美味しかったです」
「あの〜出来れば、時計の短い針が6、長い針が12を指す。ちょっと暗くなったくらいが開店時間なので、その時に来ていただけると助かります」
時計を指さしながら拓哉が言う。
「前回もだったけど、ごめんなさい。 次から気をつけますね。 それでは失礼します」
そう言って2人は帰って行った。
帰宅して早々に、フレデリカは宰相のプラムにキャリーナは部下達に囲まれてお叱りを受けた。
だが、お土産のプリンアラモードを配ると、お叱りはどこへやら。 流石女王陛下!だの貴女を信じておりましたぞ!だの手のひら返しが凄いことになったのは言うまでもない。
「フレデリカ、次はいつ行きましょうか?」
「そうね!? ではアンジェ(妖精の旧友)の都合のいい日に行こうかしら」
またもや、部下達が慌てる計画を立てる2人であった。
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