第45話 ワイバーンの特製醤油ラーメン!!

ステーキを食べた日から数日が経ち、ふとラーメンを作っていなかったことを思い出す。

善は急げとバルトの元に向かう。


「バルトいる?」


「なんじゃ?少し待っとれ」


それから暫く待っているとバルトが奥から出てきた。


「待たせたのぅ。なんの用じゃ?」


「ラーメンを作ろうと思うんだけど、屋台を作ってほしくてやるなら本格的にやりたいなって」


小さい時、チャルメラの音を響かせながら来るおじさんに少し憧れていた拓哉は、屋台を一度してみたくバルトに依頼した。


「構わんが、どんな感じなんじゃ?」


拓哉は、どんな屋台にしたいか細かく伝える。


「これならすぐできるぞい。早速取り掛かるわい」


そう言いながら奥に行くバルト。


「ありがとうバルト」


よし!これで念願の屋台でラーメンに1歩近付いたな。そのまま、店の厨房に行き仕込みの準備を始める。 まずは、スープの材料はワイバーンガラと長ネギとニンニクと生姜を用意する。


「ほぉ〜やっぱり鶏ガラに近いな。これならうまいスープが作れるな」


ゆっくり湯をかけて、無駄な脂と臭みを落とす。それから血合いを水で洗い流す。


1つ目のガラが洗い終わったところで桜花がやってくる。


「あるじ、なにをしてるの?」


「今日はラーメンを作ろうと思って、仕込みをし始めたところだ。 桜花もガラを綺麗に掃除するの手伝ってくれ」


「うん。いいよ」


それから、ワイバーンガラの処理方法を桜花に教えてやってもらう。 


「よし! 綺麗にできたな。桜花ありがとう。 今から火にかけていくからな」


「いいよ。 僕もラーメンがどうやって出来るのか気になるんだよ」


俺も昔調べただけでプロではないからちゃんとできるかはわからないけどな。 なんとかなるだろう。


「さっき綺麗にしてくれたガラと長ネギと生姜とニンニクと水を入れて強火で煮込むんだ」


暫く経つと沸騰し始めて、灰汁(あく)が出てきた。


「あるじ、この灰汁は取らなくて大丈夫なの?」


おっ!桜花はいいとこに目がいくな。


「この灰汁を取ると細かい灰汁が取りづらくなるんだ。 今さっき中火にしたからそろそろ...ほら、茶色灰汁とさっきの灰汁に細かい灰汁が集まり出しただろ? これを掬って綺麗にしていく」


ある程度、灰汁を取り灰汁の量が減ってきたので弱火にする。


「あとは、3時間煮込みながら減ってきたら水を足して灰汁が出たら掬って綺麗にする。それの繰り返しだ。 桜花にクッキーとジュース出すから椅子に座ってていいよ」


桜花が暇な時、何か出来ることを探すか料理でも教えようかな? 

どうしようかと悩む拓哉。


「ありがとうだよ。 ん〜サクサク甘くておいしいよぉぉ」


桜花はクッキーを美味しそうに食べている。


「それにしても、毎日この作業をしているラーメン屋の店主は凄いな。 灰汁取りだけで一苦労だぞ」


独り言を呟く拓哉。


ワイバーンガラスープは3時間もかかるので、その間に雑節・煮干し・昆布で取る和風だしスープとオークエンペラーの肉でチャーシューと味玉を作っていく。 


3時間が経ち、鍋の中の具材を取り除き綺麗になるまで濾していく。


ワイバーンスープって本当に黄金なんだな。 脂なのか?わからないが表面がピカピカ光っている。 飲んでみるか。


ゴクっ


「ほわぁ〜このコクと旨味凄いな。一切雑味がなく、ほのかな甘みも感じる。 このスープを日本に持ち帰れたら反則だろうな。ハハ」


笑いながら、そんなことを思う拓哉。

なんだか静かだなと桜花の座ってる場所を見ると、桜花は気持ちよさそうに熟睡していた。


「気持ちよさそうに寝てるな。 そっとしておこう」


耳をピクピク動かしてかわいい寝顔な桜花。


カランカラン


寝顔を見ていたら誰かが入ってきたので、ホールに向かう拓哉。


「あるじ、大好きなんだよ」


拓哉が去った後、寝言で桜花が言う。

夢の中でどのような思い出を拓哉と作っているのか。幸せそうな寝顔である。


拓哉が、ホールへ向かうとバルトが待っていた。


「頼まれておった屋台できたわい。 あと忘れとると思って、椅子と発光石を使って夜でも明るく営業できるようにしておいたのじゃ」


あ!確かに椅子もそうだが、夜になったら真っ暗...盲点だった。 


「流石バルトありがとう助かったよ。 屋台代だけどどうしたらいい?」


「ビール1杯とらーめんだったか?で十分じゃよ。 拓哉から儲けようとは思っとらんからのぅ」


なんていい奴なんだと思う拓哉。


「ありがとうな。オークエンペラーのチャーシュー大量に入れてやるからな」


「期待しとるぞい。早速じゃが外に置いとるから見とくれ」


2人で外に出て見にいく。


そこにあったのは、注文通りのザ・屋台であった。


「おぉ〜これだよこれ!バルト完璧だ」


「ワシを誰だと思っとるんじゃ!こんな屋台くらい朝飯前じゃよ」


そう言いながらも、喜ぶ拓哉を見て嬉しそうに笑うバルト。

開店したら、今日は外でやることを小次郎にも伝えてもらうよう、バルトに頼んで別れる。

それから厨房に戻り、ワイバーンスープと魚介和風スープを混ぜて味を調整し、いい感じにチャーシューができた時に桜花が起きてくる。


「あるじ...むにゃむにゃ...うにゅ」


寝ぼけている桜花。


「おっ!桜花起きたか。おはよう。チャーシューの味見をするから顔洗っておいで」


味見と聞いて、桜花は飛び起き顔を洗いにいく。


バタバタバタバタ


「あるじ、戻ったよ。 味見するんだよ」


「チャーシューは逃げないから。この切ったの食べてみて」


娘達もだが、食いしん坊ばっかりだなと思う拓哉。


「ん〜凄くおいしいんだよ。お肉の味が口いっぱいに広がって、すぐとろけてるんだよ。 お肉のインパクトがおっきいから、あっさりなタレが合ってるよ」


普段なら濃いめなタレにするのだけど、オークエンペラーの旨味が強い為、あっさりめのタレにした。 桜花曰く、正解だったみたいだな。


「よかった。 考えて作った甲斐があったよ。 うん!これは美味いな。桜花の言う通り気づいたら口から無くなってる。 とんでもないラーメンができそうだな」


満足しながらうんうんと頷いてから、まな板を見たら切ったはずのチャーシューが1枚も無くなっていた。


「桜花〜前も言ったでしょ! 味見は少しだけだって。罰としてラーメンはお客さんが帰ってからな」


「あるじ、頭では我慢してたんだよ...でも右手が勝手に...ダメな右手だよ。メッだよ。 あるじ、右手反省したみたいだから、お客さんと一緒に左手で食べるんだよ」


ウルウルした目で見つめる桜花。


「はいはい! 全然反省してないみたいだね。 そんな言い訳通用しません。 もうすぐオ開店だから運ぶの手伝ってな」


軽くあしらう拓哉。


「そんな〜あるじ〜〜」


桜花の悲痛な叫びがこだます。


それから追っかけてきた桜花と屋台の準備をしている。 ちなみに、トッピングはのり 味玉 メンマ チャーシュー もやし ナルト 九条ネギで、麺はストレート細麺である。 


今回は、昔ながらの中華そばをイメージしたからこのトッピングに麺だけど、ちぢれ麺や太麺に合うラーメンもいつか作ってみたいなと思う拓哉。


18時


既に、バルトと小次郎とヴァレリーが席に座って待っている。


「お待たせしました。 今から作っていきますから、ビールでも呑んでお待ちください」


手早い動きで、ラーメンを作っていく拓哉。 バルトだけチャーシューを多めに入れる。


「お待たせ致しました。 ワイバーンのガラを使った特製ラーメンです。 チャーシューはオークエンペラーの肉を使っています」


十分旨味が出ている為、胡椒などの香辛料は出さずそのまま食してもらう。


ズルズルズルズル


3人が一斉に食べる。

ヴァレリーもバルトも小次郎も、慣れたように箸でうまいこと食べている。


「うまい! あっさりしているスープだが、しっかり旨味が出ていてコクがある。 ワイバーンの味と魚介の味...一見別物だが、一切邪魔をせずに調和しておるな」


「チャーシューうまぞい。 ビールにも合うのぅ。 甘い脂とガツンとくる旨味が堪らんわい。 スープとも合っとる」


「スープと絡まった麺が絡まってあとを引くうまさだ。 それに濃く煮込まれたあじたまだったか!?トロッと卵の甘さとタレの旨味と麺を合わせて食べると最高の組み合わせだ」


「拓哉、久しぶりね。 今日は外でなにやってるの?」


リーリヤが久しぶりにやってきた。


「久しぶりです。 今日はワイバーンでスープを取ったラーメンて食べ物を出してるんです。 食ってみますか?」


「うん。 もらうわ」


先にビールを出して待ってもらっている。 3人がラーメンのうまさをリーリヤに話している。  


「お待たせしました。熱いので気をつけて食べてくださいね」


ズズズ。


「このスープなんなの? 毎回拓哉には驚かされるけど、複雑でコクがあるけど、あっさりしてて今までに飲んだことない味よ。 人をどれだけ驚かせたら気が済むのよ」


目を見開き驚くリーリヤ。


「口にあったようでよかったです」


そう話していたらまた新しいお客さんが来た。


「きたよ〜いい匂いだね」 「拓哉さんは、またおいしそうな物を作っていますね。また私の骨がボーンとなりますよ」


フェンとボーンも食べに来た。


「ぶ〜〜げほんげほん」


リーリヤがノーライフキングを見てラーメンを吹く。


「ちょっと!リーリヤさん大丈夫ですか?」


「なんでみんな平気な顔してるのよ!ノーライフキングよノーライフキング!」


なんでそんな慌ててるのという顔をするみんな。


「これはこれは私の同族がエルフ族に何か迷惑をお掛けしたみたいですね。 申し訳ございません」


「へっ!?」


まさか謝られると思っていなかったリーリヤは混乱する。


「リーリヤさん、ボーンさんは悪い方ではないですよ。 過去に出会ったノーライフキングは酷い方だったかもしれませんがリーリヤさん現実に戻ってきてください」


ハッと我に帰るリーリヤ。


「ごめんなさい。 子供の時、森で採取をしていたら急に後ろから声をかけられて、驚いて逃げたらずっと後を追っかけてきた過去があったの。それからトラウマなのよ」


うん。 子供の時に振り向いたら骸骨...そりゃトラウマなるわ。


「ボーンさんごめんなさい。 不快な思いをさせたわね」


「いえいえ。それは同族が悪いですね。 私たちは、変わり者が多く生涯孤独なのです。 偶に、人恋しくなり話しかけようとするのですが距離感が分からず怖がらせてしまうのです。私にはフェンがいましたから、普通に話せますがね」


ノーライフキングって陰キャかよ!と思う拓哉。


「とりあえずフェンさんもボーンさんも席に座ってください。 ラーメンを作りますね。他の方もおかわり作りますからね」


その後、リーリヤさんはボーンさんは打ち解けたのか普通に話をしていた。 

みんなと、この距離で会話をしながら作るのもいいものだなと思う拓哉であった。

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