第22話 ニルとミルの母はタルトに夢中!
あの日私は...いや!私たちは、食に対する考えが変わった日だったわね。
それは、ニルとミルが拓哉のお店から妖精の国に帰った時のことである。
2人の妖精が、姿を消しながら、恐ろしい魔境の中をどんどん奥に進んでいる。
「ミル〜もう少しで帰れるよ。お母さんとお父さんと女王様喜んでくれるかな?」
拓哉のお店からお土産で買ったタルトを思い出しながら言うニル。
「ニル〜大丈夫だよ。きっと喜んでくれるよ」
拓哉の店から妖精の国まで、1日を要する距離にあるのだが、あのタルトの美味しさを、念話で話しながら移動していたら全然苦にならず、もうすぐしたら国に着く。
「灯りが見えてきたよミル。」
国の灯りが見えて喜ぶニル。
「やっとついたねニル。でも騒がしくない!?」
灯りが見えたのは良いのけど、あまりにも騒がしい。何かあったのかな? あれ!?お母さん!?
正面の門から物凄い勢いで飛んでくる、妖精がいる。凄い怖い顔をして迫ってくる。
「あなた達〜どこ行ってたの?こっちは2日も帰らないから心配してたのよ」
親である妖精が、2人を問いただす。
生殖がない妖精に子供?と疑問に思うが、妖精は好意を持った相手のマナとマナを合わせて子供を作るのだ。マナとは個人が有する魔力の源である
「「お母さんごめんなさい」」
すぐに謝る2人。
「まぁいいわ。お父さんと探すのを手伝ってくれた人には、今念話で伝えたから帰ったらお父さんも合わせて4人で話し合いましょう」
大人の妖精は、魔力も多く広範囲に渡り念話を送ることができるのである。
ニルとミルは、母親に連行されて家に向かう。家に着いて扉をあけると父親が仁王立ちしていた。
「ニルとミルどこへ行っていたんだ?みんな心配したんだぞ。すぐに帰ってくるんじゃなかったのか?」
そう言いながら拳骨を食らわす父親。
普段怒らない父親が、怒りながら拳骨までしたことに面食い、ニルとミルは泣きながら謝る。何度も謝り、泣きじゃくる2人を見た母親が、2人の頭を撫でてお父さんもお母さんも、本当に2人のことが心配だったことを伝えてどこに行っていたのか、座って話すように言われる。
少し年上のニルが代表して話始める。
「お父さん、お母さん心配かけてごめんなさい。森で追いかけっこしたり、魔物の観察したり、薬草拾ったりしてたんだ。そしたら魔境の中間まで行ってしまって、ミルと帰ろうとしたら変な魔力?場所を見つけて気になって行ってみたら、お店があってミルと入ったら人間と獣人ッッッ」
急に目の前へ迫る母に驚くニル。
「あなた達、人間に会ったの?大丈夫だった?なにもされてない?なにがあったの?大丈夫よね?」
人間と聞いて母は凄い剣幕で捲し立てる。
「お母さんニルの話を、最後まで聞いてあげて」
ミルが言う。
「人間よ。悠長なことをしてる場合じゃないわ。ここに攻めてくるのね」
話しすら聞こうとしない母。そこに父が一言言う。
「アンジェ最後まで話を聞こう。まだ人間が攻めてくると決まったわけではないからな」
父親が言うと渋々だがアンジェは頷く。
「ニル続きを話してくれないか?」
「はい。お店に行ったら、人間と獣人と魔族がいて、僕たちが逃げようとしたら「ここは誰でもきていい料理屋だから料理を食べていってほしい」って言われたんだ。僕もミルも、その人間から悪い感情を感じなかったから食べることにしたんだ。本当に料理が出てきて、食べたら綺麗で食べたこともないようなお菓子が出てきたんだよ。凄くおいしくて、家族の分と妖精女王様と精霊女王様と知り合いの分をお土産に買ってきたの。これだよ」
これだよと言いながら、2人の前にフルーツタルトを出す。
「これが食べ物なのか?精巧に作られた芸術品みたいじゃないか。毒はないようだが、アンジェどう思う?」
アンジェは、綺麗なその物体から凄い甘い匂いを感じ、今すぐ食べたいという欲求が全身を駆け巡っていた。だが、母として飛びつくことが出来ず冷静を保ちながら発言する。
アンジェは大の甘党なのである。
「アナタ!まずは食べてみないとわからないわ。切り分けますからみんなで食べてみましょう」
そう言うと、風魔法で綺麗にカッティングされていくタルト。
「では、まず父である私が毒味をッ」
父が毒味をしようとした瞬間、奪い去る様にアンジェが先に食べる。我慢できなかった様だ。
「あま〜い!なんですかこれは?果実の純粋な甘さに、お砂糖の甘さですか?なんと恐ろしい食べ物なのかしら。ん〜おいしいわぁ」
貪り食うように食べ始めるアンジェ。それを見てみんなの顔が引きつる。
「おい!アンジェ大丈夫か?」
普段見せないアンジェの姿に焦る父。
「アナタ早く食べなさい。こんなおいしいものを食べないのは損よ。ニルとミルも遠くに行ってお腹空いたでしょ?食べなさい」
タルトに夢中で、すっかり機嫌が直ったアンジェは、2人が人間に会ったことを忘れている。
「あ、あぁ、お前達も食べなさい。ん!!うまいなアンジェ。これは夢中になるのがわかるぞ。新鮮な果実に、高級な砂糖まで使われてるではないか」
普段は腹を満たす為だけに食べる行為をしていた父だが、初めて食に対して美味いという感情が生まれた。
「やっぱりおいしいねミル」
「うん。おいしいよニル」
ニルとミルもまた笑顔で食べるのであった。
どこに入ったのかわからないが、いつの間にか、母はホール半分以上食べ尽くした。
「おいしかったわ。ニル、ミルあなた達凄いわ。こんなおいしい物を出すお店を見つけるのだから。これは早速、フレデリカに持って行くべきね。責任を持って今から行ってきます。ちゃんとあなた達が、見つけたことを言うから安心しなさい。それからお金はなかったはずだけどお代はどうしたの?」
これは早く妖精女王にお出ししないと思うアンジェ。
「ミルが助けてくれて、2人で作った幸運の腕輪を対価に渡したよ。金貨300枚の価値があるみたいで、対価分は来てくれたら無料で料理を提供するって言われた。だから、またきてねって。でも一回にいっぱいで行ったらお店が大変みたいだから、10人くらいを数回に分けて来てって」
ニルは対価の話と、拓哉に言われた話を伝える。
「そうだったのね。幸運の腕輪か...2人が作れるのは加護小でしょうけど、これについてもフレデリカに聞いてみる必要があるわね。アナタ子供達を見てて、私はフレデリカのとこに行ってくるわ」
そう言い残し、父の返答も聞かずに出て行ってしまうアンジェリカ。
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