第11話 エンペラーカツサンドと銀狼の幼女!

昼12時


「あ〜やっと帰ってきたぞ〜。汚れたしラリサは鍵渡すから家のシャワーを、エルは店のシャワーを使ってくれ。俺は女の子を2階のベッドに寝かせてくるから」


エルに頼んで帰宅途中に、幼女へクリーンをかけてもらっている。魔力が回復しきっていない為、乱発が出来ず皆にクリーンが出来ず、すまんと言っていた。


「拓哉すまんな」 「拓哉さんわかりました」


2人がそれぞれ返事する。


拓哉は2階に上がり幼女をベッドに寝かせる。


それにしても、こんな幼い女の子を攫うとか、頭おかし過ぎるだろう。ラリサも気が張っているから今は平気だろうが、数日したら家族を失ったことを思い出して精神的におかしくなってしまうかもしれない。何ができるかわからないけど大人の俺がしっかりしないとな。


「ん~こんな時は、精神を落ち着かせるハーブティーを作るか」


ハーブティーとサラダ用の野菜をカットして準備する。


2人が戻ってきた気配がしたので、ハーブティーを持って向かう。


「体がさっぱりしたぞ」「シャワーだけでも気持ちいいです。 シャンプーは、本当に良い香りですね」


2人が嬉しそうに話す。


「それはよかった。俺もシャワーしてくるから、このハーブティー飲んで待っててくれ」


シャワーに向かう拓哉。


その頃、エルドレッドとラリサはというと。


ゴクッゴクッ


「うまい。それにしても拓哉は気の利く男だ。ハーブティーなる飲み物は、精神を落ち着かせる作用があるのだろう。あの戦闘をした後は、気が昂るかラリサのように恐怖で落ち着かないかのどっちかだ。いい配慮をしてくれる」


「おいしいです。本当に心が安らぎます」


2人はほんわかした顔になる。


「それにしても拓哉は不思議なやつだな!見た目からして、火乃国出身だとは思うが、昔行った時は、武士なる堅苦しいやつばかりであのような性格のやつはいなかった」


「私は火乃国の人は知りませんが、お父さんから黒目黒髪は、火乃国の人間だと教わりました。珍しく差別もしなく義を重んじる人間だと」


「そうだな。火乃国は他国から遠い為、独自の文化があり、人種関係なく接していた印象があるな。魔法を使える者が少なく特殊な剣!刀という物を使い、色々な流派があり剣豪が沢山いる。30年前の話だから今はどうなっているかわからないが。向こうで呑んだニホンシュという酒を、もう一度呑みたいな。ツケモノという食べ物とも合って美味かった」


エルドレッドは思い出しながら語る。


「そうなのですね。差別がなくて見たこともない文化があるなら、いつか行ってみたいです」


差別がない国を知らないラリサからしたら気になるのは当然なのだ。


「2人とも楽しそうに話してるな。あとエルの言ってた日本酒あるぞ。それと漬物もある」


エルドレッドは目を見開き驚く。


「本当か!?呑みたいし、食いたいぞ拓哉」


「明日までいるならな。流石に昼間から酒とはいかんし。今日店が開店したら出してやるよ。客として呑み食いしてくれ」


「かまわんかまわん。まさか30年振りに、ニホンシュとツケモノが食べれるとは、やはり火乃国出身だったか」


「その辺も今日呑んでる時に話すよ」


信頼もしているし、2人に生い立ちを話そうと思う拓哉。


「あぁ楽しみだ」


アイテムボックスからカツサンドとサラダを出す。


「2人とも腹減っただろ。待ちに待ったオークエンペラーのカツサンドだ。熱々だから気をつけて食べてくれ」


「ふわぁ〜凄くいい匂いがします」


「お〜これは凄い。サンドイッチは、食べたことあるが、こんな暴力的な破壊力のある見た目ではなかった」


2人がそれぞれ感想を言う。


「まぁとりあえず食べてみよう。いただきます」


パクッ!


拓哉があまりの美味さに驚く。

うめ〜!!!なんだこれは!肉汁が口の中で暴れて旨味という旨味が口の中を支配していく。日本でも食ったことない肉だ。


「なんだこれは!美味すぎるぞ!普段食べるオークとは比べ物にならん。肉汁が溢れ出して、噛むごとに旨味が溢れてパンとの相性も抜群だ」


「拓哉さんこれしゅごいです。幸せです。ソースも凄くおいしくて、ちょっと噛んだらお肉が溶けてなくなっちゃいます。柔いです」


3者3様の感想を口にする。


確かにみんなが言う通りだ。満足度も高い!1つ言うならパンが負けているのか?肉が強すぎる。パンを改良する余地があるな。 朝気づいたが、熟成させた肉の方が、やはりうまかった。今後は熟成までしっかりしないとな。


「2人とも満足してくれてよかった。ここまでうまいとは思わなかった。パンがもっと、こいつに適したやつがある筈だから改良の余地はありそうだけどな」


「まだおいしくなるのですか?楽しみです」


尻尾を揺らしながらラリサが言う。


「すぐには完成しないだろうし、ここまで旨味が強く肉を感じた豚は食ったことない。いつになることやら」


そんな話をしていたら2階から物音が聞こえた。


「起きたかもしれないな。怖がらせたくないから、ラリサも一緒についてきてくれないか? エルは、このカラ○ーチョでも食って待ってて。好きな味のはずだから」


「おっ!香辛料の匂いが凄いな。俺はゆっくりさせてもらおう」


助けた幼女<香辛料のお菓子を選ぶエルドレッド。


「はい!知り合いだから多分理解はしてくれると思いますが....頑張ります」


ラリサとエルドレッドが返事をする。


2階の休憩室のドアを開ける。


驚いたのか。部屋の隅に逃げる幼女。


「アニカ、ラリサだけどわかる?」


「え?ラリサお姉ちゃんなの?本当にお姉ちゃん?」


目の前に仲良くしていたお姉ちゃんがいる現実を、受け止められず聞き返してしまうアニカ。


「ラリサだよ。ここにいる拓哉さんに助けてもらったの」


アニカはおずおずと拓哉を見つめる。


「今紹介された拓哉だよ。ラリサからは、人間がしてきたこととか、色々ここまでの経緯は聞いてる。なかなか人間を受け入れられないかもだけどよろしくな」


警戒しているのか?怯えているのか?また部屋の隅に逃げてしまった。


「あはは、完全に嫌われてしまったな。ここに卵粥置いて行くから、アニカに食べさせてあげて、あと落ち着くまで話し相手になってあげたらいいから。店の手伝いは、今日しなくていいからラリサはアニカを見てあげて」


ここは同郷のラリサに任せるのが得策だと考える拓哉。


「拓哉さんアニカがごめんなさい。あと話す時間を頂いてありがとうございます」


「気にしないで。2人とも怖い思いをしたんだ。休める時は休んだらいいし、ここでは気を使わなくていいから。なんかあれば呼んで」


そう言い残し部屋を出る拓哉。


「拓哉おつかれさん。あの子はどうだった?」


エルドレッドが聞く。


「どうもこうも幼女だしな。あの惨状に人間の行いを見てきたら、俺なんか敵か恐怖の対象だろ。見事に怯えられたよ。今日1日ラリサに付き添ってもらって、落ち着かせてもらっている」


「確かにな。わかってはいるだろうが、ラリサも若い。傷は少なからず負ってるはずだ。あとでしっかり見てやるんだぞ」


「あぁそれも考えていたよ。俺自身ここにきて、早々の出来事だったから、何も出来てない事は自覚してるさ。落ち着いたら、ゆっくり話す時間は作る予定だよ。ありがとうなエル」


「わかってるならいい。拓哉ならうまく2人を導けるだろう。それにしてもこのカ○ムーチョだったか、ピリ辛でサクサクしてうまいな。止まらん」


「小腹が空いたオヤツには最適だろ。俺はキマイラの血抜きをしてくるから好きにしててくれ」


「わかった」


その後、拓哉はキマイラの血抜きをして、また足だけ試食しようと、七輪で焼いていたらエルが現れて、俺に黙って食う気かと怒鳴られて、2人で味見をした。(カツサンドにカ○ムーチョまで食ってまだ食うのかと思ったのは秘密である)

ピリ辛の濃厚な旨味が詰まった赤身肉にエルは発狂し、ほとんどエルの胃袋行きになったのは言うまでもない。


そんなこんなで試食は終わり今日の営業時間を迎えるのだった。

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