キャスティング

鈴乱

第1話 空の上で ~”役割”決めの儀式~

「君は、役割を決めたかい?」


 しゃがむ僕の上から、先生の顔がのぞく。

 僕は、先生の顔を一瞬見上げ、すぐに手に持った紙片に視線を落とす。


「……決められない?」


 先生が優しい声で言う。

 僕は困ったように笑う。


「よく、分かりません」

「そうか。まぁ、慌てることもない。ゆっくり、自分の満足する答えを見つければいい」

「はい」


 先生はそう言ってくれた。

 でも、僕は知ってるんだ。僕に残されている猶予期間はそんなに長くないことを。


 ふと周りを見渡せば、数時間前にはたくさんいたはずの同級生が、もう数えるほどしかいない。みんな、道を決めて、進んでいったんだ。

 僕は寂しいような、悲しいような気持ちになったけど、それが多分、“普通”のこと。

 だって、こんなの本当は悩むほどのことでもないんだ。

 行きたいって決めたのは僕らだから、行きたい理由がはっきり決まっているなら、答えも簡単なはず。さっさと理由を紙に書き落として、先に進んだらいいんだ。



 でも、僕は――。

 手元の、ずっと前から白紙のものを見つめた。

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キャスティング 鈴乱 @sorazome

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