第33話 異世界の妻は沢山子供を産んだ。

婚前旅行から三か月後、カズマとマリリンは自分たちのギルドへと帰宅した。

三カ月と言う密な時間を過ごした二人は、これまで以上にイチャイチャでアマアマであった。

それもその筈、マリリンが懐妊したのである。

兄のジャックは涙を流して喜び、マイケルは拍手喝采。

マリリンの懐妊を知ったマギラーニは、喜んでいいものか、悪いものかと複雑そうではあったが、ムギーラ国王はカズマとマリリンに祝いの言葉、そしてマイケルが探し求めていた貴族が住むような一軒家をポンとプレゼントしてくれた。

妊娠三カ月目と言う事もあり、マリリンの悪阻は激しく、常にマーライオンであった。



「フフ……流石カズマとの我が子。母よりも強いか」

「マリリン、少しでも楽な姿勢を……」



悪阻は思った以上に重く、マリリンは一気に頬が痩せこけ、ついには治癒師と医者両方がつきっきりになっての妊娠生活となった。

結婚式など上げられる余裕などなかったのである。

その為、先にジャックが結婚することになり、マリリンは水晶で出来た映像投影で式の様子を見て涙し、カズマもまたマリリンに付き添ってジャックの幸せそうな笑顔を見て涙が出た。

シャナリアの事もマリリンから聞いたカズマは、人となりの美しさがジャックにお似合いだと言い、今まで誰とも付き合ったことの無かったマイケルが、ファナと言う未亡人との結婚を決めたと知れば、マイケルの人を見る目は信じていると告げて喜んだ。


マリリンの出産まではまだまだ日数がある。

その間に、マイケルとファナの結婚式も上げられる事となった。

結婚式といっても、ジャックタチのような貴族の結婚式ではなく、庶民が行う結婚式だ。

レディー・マッスルの運営する宿屋を使い盛大に結婚式が行われ、ファナは仕事をしながらもマイケルの助けとなれるよう心がけると宣言した。

また、ファナはマリリン付きの侍女の仕事をするようになった。

妊娠中のマリリンの為に、消化とお腹の子に良い食べ物を出し、驚くほどマリリンの為に尽くしたのである。

マリリンは自分で子供を育てたいと言う事だったので、ファナは更に力を入れた。

悪阻が落ち着く頃には、マリリンとファナは二人で生まれてくる子供の為に服やオムツを縫い続けた。

無論、カズマの両親も負けてはいなかった。

マリリンの妊娠を機に、ベビーグッズを大量にカズマに持って行かせたのである。

最新のベビーベッドから乳母車、赤ちゃんの為のオモチャやあちらの世界で手に入る高級肌着と涎賭け、手袋までもが大量に届いた。

マリリンはそれらを見て号泣した。

実の両親はマリリンの妊娠を聞いても「おめでとう」は言ったものの、そう言うモノを手配することは無かったのである。

故に、ジャックが異世界版の赤ちゃんに関するオモチャやぬいぐるみを用意してくれたが、やはりマリリンは寂しかったのだ。



「嗚呼、カズマのお母様に会いたい……」

「マリリンが出産すれば一緒に会いに行こう。両親も元気なマリリンとマリリン以上に元気な赤ちゃんを待ってる」

「ああ……ああそうだとも、待っているとも! 解って居たさダーリン!」

「安心したよハニー」



この頃、マリリンはカズマの事をダーリンと呼び、カズマはマリリンの事をハニーと呼ぶようになっていた。

この異世界でも、余りにも愛し合っている夫婦はそう言う呼び方で過ごすらしい。

ごく一部だが。

母子共に、ある程度大丈夫だと言われるようになったのは、既に9カ月に入ったころだった。

余りにも硬い筋肉故に、お腹の中で赤ん坊が育たない可能性がとても高かったのだ。

故に、マリリンはトイレ等必要以外は常にベッドの上にいて筋肉を脂肪に変える為に頑張っていたのだ。

それが報われたのが9カ月に入ってから。

まだまだ子供は小さいかもしれないが、マリリンの未だ筋肉質なお腹をボコボコと蹴りあげており、あのマリリンが衝撃で「ウッ!!」と叫ぶ姿が良く観られた。


それから7カ月が過ぎ、マリリンは超絶な安産の元、出産した。

陣痛が始まって生まれるまで、初産なのに3時間掛からなかったのである。

正に驚異的であった。


最初の子はカズマと同じ黒髪に黒い瞳の美しい女の子であった。

平均よりも小さく生まれた娘に、カズマとマリリンは【カリマリティア】と名付けた。

その後も一年越しにマリリンは出産し、数年後―――気づけば男の子9人、女の子9人の母になっていた。

18年間産み続けたマリリンは、美しい腹筋は程よいお腹へと変貌し、まだまだ子供を産む気満々であった。

出産の最短記録は15分である。

最初の子、カリマリティをはじめとする女の子たちは、皆カズマに似て細く美しい娘たちに成長した。

しかし、細く美しくとも、力はマリリンと互角であった。

男の子たちは、挙ってマリリンのような世紀末覇者のような身体をしており、マリリンと互角の筋肉万歳は内8人。

唯一、最初の子だけは世紀末覇者の見た目にも関わらず、カズマと同じ知的青年へと成長していった。


更に、レディー・マッスルの戦闘民族、否、冒険者は強さを子供達で底上げされ、ムギーラ王国にレディー・マッスルありと言われるまでになった。


そして、ジャックとマイケル達だが――。




=============

ラストスパート!!


18年間産み続けるマリリン、脅威である。

作者ですら出産に17時間かかりました(陣痛込みで)

前駆陣痛は2週間ありました。(苦しかった)

安産、良い響きです。


もう直ぐ僕妻は終わりますので

最後までお付き合いくださいませ!

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