第28話 異世界人の妻と僕との、三カ月の温泉宿泊スタート②

「いらっしゃいませ」

「どうぞお寛ぎくださいませ!」



大きな森、いや、大きな山に面した小さな村に溶け込むように、美しい木目の温泉宿が既に出来上がっていた。

牧歌的ともいえる風景に、一年中春のような陽気の天候に恵まれたこの場所こそがユートピア。

部屋に案内されるまでの間、カズマは緊張していた。

最近になってやっとマリリンとのキスに慣れてきたころだと言いのに、今から三か月の間、子づくり宣言をしたからだ。

童貞卒業は目前である。

ちゃんと自分がマリリンを抱けるのか、いや、寧ろ物理的に抱けるのか不安だった。

緊張が高まるが、もう流れに身を任せるしかないのかも知れない。

本当に子作りというか、そういう事が出来た時は泣いて喜ぼう。そう心に誓った。



「こちらがお部屋となります! 一番広い離れ宿となっており、個別に温泉もついております!我が温泉宿のオーナーであるレディー・マッスルのリーダー、マリリン様と、その夫であるカズマ様にピッタリかと!」

「素晴らしいなカズマ! これはゆっくり出来る」

「そうだね、暫く忙しかったからゆっくりと寛げそうだ」

「お食事の時間は決まっておりますが、その他は自由にして貰って構いません」

「それでは、ごゆっくり」



そう言って村娘であった従業員は去り、仁王立ちのマリリンと部屋を見渡すカズマが居た。

綺麗な部屋だ。それにベッドもキングサイズが二つ。これなら大丈夫そうだ。

――と、思ったのはマリリンも一緒である。

目線だけで部屋を見渡し、呼吸を集中させ気を落ち着かせているのだ。


(焦ることは無い、だが焦る。私はこの温泉宿で――大人の階段をのぼる!!)


マジックボックスに入れてきた夜着も勝負下着もバッチリだ。

ヒッソリと錬金師に頼んでおいた媚薬に滑りやすさをアップさせるアイテム等、ありとあらゆる準備をしてきた。

なまじ、自分の身体が普通とは掛け離れ、とても強い事を知っている。

故に、自分の膜がミスリルのように固いのではないかと言う不安があったのだ。

その時はカズマに土下座して謝ろうとは思うが、出来うる限りの用意はしてきた。

カズマのカズマが傷つかぬことを切に祈るのみだが、まずは椅子に座って茶の一杯でも頂こう。


この温泉宿のお茶や紅茶は、カズマのいた異世界から取り寄せた品を置いている。

貴族達でも楽しめるように最高級のおもてなしの一つだ。

慣れた手つきで紅茶を淹れ、カズマの分も用意すると、二人は椅子に腰かけ紅茶を飲み、ホッと安堵の息を吐いた。



「今日から三カ月よろしくねマリリン」

「こちらこそ、色々と、色々とよろしく頼む」

「うん、色々ね」



言葉には出さないが、此れで通じる夫婦である。

照れ笑いをするカズマとは違い、マリリンはガチガチだった。

だが、計算的でもあった。

カズマのお母様から頂いた女性用の本をキッチリ読み込んでいたのだ。

故に、この世界にはあまり知られていない生理日予測から排卵日予測までバッチリだったのだ。

――作る気しかない。

それに気づかないカズマだったが、知った時どう思うのかは謎である。



「今日からお互い裸の付き合いだね……紅茶を飲んだら一緒に温泉に入らない?」

「ンン! 良いだろう!」

「マリリンの背中を洗ってあげるよ」

「では私もカズマの背中を洗ってやろう」

「いや、それは遠慮しておくよ」



生皮をはぎ落されそうな気がしたのだ。

危機察知は万全である。

――こうして、紅茶を飲んだ後は部屋に備え付けてある露天風呂に入る事となり、カズマとマリリンは裸の付き合いをしたのである。

どこからどうみても男の姿にしか見えないマリリンだし、おっぱいと言うより雄っぱいと言う言葉がシックリに会うモノがついており、顔は世紀末覇者だったが、雰囲気はやはり女性と言うかなんというか。

不思議な感じであった。

だが、それがマリリンの魅力であり、沢山の死闘を繰り広げ、人々を守ってきた身体である。

尊敬こそすれど、畏怖するものではなかった。



「綺麗だよマリリン」

「ンン! そう言って貰えると有難い!」



こうして、密な三カ月がスタートした。

一方、ムギーラ王国では別の意味で問題が発生していた事に、まだ二人は知る由もなかった。




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密な内容を書けないので、別視点の話を次回から。


何とか頑張って個人的に甘い内容に仕立てました。

他の作家さんの甘い恋愛……書けるのが凄い。

今日はリアルバタついてるので、午後の更新は頑張れたらします。

予約投稿できるといいなぁ(;´Д`)

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