先輩っ!私が妹さんの彼氏じゃダメですか?

白悟那美 破捨多

第1話「先輩っ!妹さんとお付き合いさせてください」

突然で申し訳ないが、身近な人の恋愛をどう思うだろう?兄弟や姉妹、親や友達などの恋愛は状況によっては応援できるし、応援しにくい事もあるだろう。この世には多くの愛の形があるため慣れないものも仕方ないと思うが、この俺堂正どうせい 弧衣こいは基本的に身内の恋愛はプラスにとらええている。だが、俺は今かなり困惑している。何故なら俺は今、仲のいい後輩の此恋このこい かなうに告白されそうになっているから。

「先輩!私先輩に伝えたい事があるんです」

「え?」

〜数時間前〜

俺は今日、叶と新作のランニングシューズを買いに来る約束をしていたが時間に遅れてしまった。叶とは中学の陸上部で選手とマネージャーという関係だったが、家の方向が同じという事でたまたま一緒に話しながら帰った日に仲良くなった。

「先輩、遅いですよ!」

「あぁ、悪いな。愛が一緒に行くって駄々をこねてな。なだめるのに必死だったんだよ」

「話でしか聞いた事ないですけど、妹さんなら有り得そうですね」

俺には妹がいる。名前は堂正どうせい あい、叶と学年が同じだったがクラスが離れていたためあまり認識はされていないらしい。

「そうなんだよ。昔からどこ行くにも着いてこようとするんだ」

「可愛いじゃないですか、私も妹いますけど、いつも生意気で全然可愛くないですもん」

「初耳だな。お前も妹いたんだ」

「そうなんですよ、ってそんな話は置いといて新しいシューズ早く買いに行きましょう。私ずっと今日を楽しみにしてたんです」

叶はマネージャーだったが、自身も走る事が好きであり、シューズなどもかなりいい物を使っている。でも、叶は悪魔で早く走りたいのではなく、単純に走り続ける事が好きなのだ。だから、暇な時はずっとランニングをしているため陸上部の男子部員たちよりも体力は遥かに多く、持久力も高い。俺は唯一叶よりも体力、スピード、持久力が多かった。

陸上部では副部長として大会なども出ていたが高校に入って帰宅部となっている。

「あ、ありましたよ。これです!」

「おう、そんなに焦らなくてもシューズは逃げないから大丈夫だぞ」

「そんなの分かってますよ。仮に逃げたとしても私の方が早いですし」

「お前ってたまに自己自賛じこじさん激しいよな」

「そうですか?えへへ」

そんな何気ない会話をしながら俺と叶は新しいシューズを買った。

「あの、すみませんお二人共カッコイイですね!良ければ写真撮ってもらえませんか?」

「またか」

「最近多いですよね」

俺たちが歩いているとよく女性から声をかけられる事がある。俺はともかく叶はかなりのイケメンフェイスだからだろう。

「いいですよ」

俺と叶は顔を見つめ合い少しどうするか考えた後にそう答えた。

「本当ですか!ありがとうございます」

そうして俺たちは女性と写真を撮った。

そして、女性と別れ2人で飯を食おうという話になり、飯屋を探していた時だった。

あにぃ〜!」

いきなり後ろから聞き覚えのある声が聞こえ思い切り抱きしめられた。

俺が後ろを向くとそこには妹の愛がいた。

「てへっ、来ちゃった」

「来ちゃったってお前なー、今日はダメって言っただろ」

「だって、兄が楽しい事してるのに私だけ暇なんて可哀想だと兄が思ってると思ったし」

「なんだその意味不明な理由は」

「まぁまぁ先輩、いいじゃないですか。

せっかく来たんですから一緒にご飯食べに行けばいいですよ」

「あ、カッコイイ人!この人が兄の言ってた後輩さん?」

「あぁ、そうだ。お前と学年も一緒だし、仲良くしろよ」

「そうなんですか!クラスは何組ですか?」

「3組だよ」

「私は8組だからあった事がほとんどなかったんですね。でも、兄のお友達って事は私のお友達って事でいいですよね」

「なんなんだよ。その恐喝紛きょうかつまがいの友達確認」

「うん。友達って事でよろしくね」

「はい!」

「いや、それで納得しちゃうのかよ」

愛のとんでもない友達宣言を叶が受け止めた後、俺たちは近くのレストランで食事をしてボーリング場に行き遊んだ。

「それじゃ、俺はこいつを家まで送って来るから先帰っといてくれ」

「分かったよ兄、じゃあまた叶くんも学校で会おうね。バイバーイ」

「うん。じゃあね」

あたりはすっかり夕日に染まり、俺は叶を家に送る為に家を通り過ぎ、住宅街を歩く。

「先輩、今日はありがとうございます」

「おう、俺も楽しかったよ」

叶の家の近くまで来た時、叶が俺に話しかけてきた。

「あの、少し時間大丈夫ですか」

「ん、あぁ全然いいよ」

叶は少し元気がないというか、照れているみたいだった。まさか、俺今から告白されるのかと冗談混じりに思っていると

「先輩!私先輩に伝えたい事があるんです」

「え?」

おいおいまさか冗談だろ。まじで告白のパターンかよ

「私、私!」

「お、おう」

「私!先輩の妹さんに一目惚れしました」

「.....は?」

「だから、先輩っ!妹さんとお付き合いさせてください!」

「いや、あの」

「先輩っ!私が妹さんの彼氏じゃダメですか?」

俺は突然の叶の発言に戸惑いながら冷静に答える。

「いや、お前が妹の彼氏でもいいんだけどよ、お前女じゃねえか」

「はい、そうですが何か問題が?」

「普通に問題あるだろーがー!」

夕日が住宅街を赤く染める景色の中、俺は後輩の女子からのとんでもない告白に対して、一言そういうしかなかった。

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