大阪ブレイブ

白悟那美 破捨多

第1話

変わらない毎日に飽き飽きしていた。

何か特別な事が起こらないか期待していた。

でも、その期待が叶う時に感じるのはただの

「絶望」だった........


朝起きると、また今日も何の変哲へんてつもない退屈な日常の始まりかとガッカリする。

階段を降り、下の階に行き家族と朝の挨拶を交わし、飯を食べ歯を磨く。

「新大阪で新たに127名の死が確認されました。未だに原因は不明で警視庁は毒性のガスなどが原因となっている可能性も視野に入れ捜査を続行するとのことです。また、死亡した約540人は全員、体が弱い人やお年寄り、免疫力の低かった人など、健康状態が悪い人という事が分かっています」

テレビでは最近話題の新大阪で次々に人が死んでいく事件でもちきりになっている。

俺は新大阪に住んではいないが、大阪に生まれ大阪で育って来たバリバリの関西人だ。

今は新大阪でしか死人が出ていないと言っているが、その内大阪の方でも死人が出るのではないかと少し期待と不安で胸がいっぱいになっていた。

だが、どうせそんな事を気にしていても仕方ないので、とりあえず学校に向かい授業を受けて帰る。部活もしていないし友達も少ない俺には青春だとかはいらないし、他人と協力したり何かをする事も二度とする事はないだろう。どうせすぐに人は裏切るのだから。

「はぁー、人生つまらねぇな....」

そうつぶやきながら俺は家へと帰っていた。

もうすぐ家に着きそうな所まで来た時にそれは起こった。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

「なんだ、地震か!震度4はあるぞ」

突如、地震が起こり俺はその場に危ない物がないかを確認してしゃがみこむ。

「地震やー!皆頭を守って安全な所へ避難せーへんとあかん!」

「体が弱い方などはこちらに声を掛けてください!」

そうこうしている内に大人達が動き出して、避難などを始め、俺も避難し、街の人達はほとんど全員が近くの学校に集まった。

だが、地震はまるでタイミングを見計らったかのように、ほとんどの人が学校に集まった瞬間に止まった。

「なんや。大きい地震が来ただけかいな。焦らなくて良かったんじゃないんか」

「家事してたのに、タイミングが悪いわ」

皆が安心して少しグチなどをこぼし始めて、少したったぐらいだろう。

1人がそれに気づいたのは。

「おい皆、上を見るんや!なんかデカい画面みたいなのが映し出されとるぞ!」

皆で上を見るとそれは本当にあった。

「一体あれはなんだ?」

「何かのイベントかしら」

「地震と何か関係あるんか?」

そう言った疑問が出てきてから直ぐにその画面のようなものに人が写った。

そして、その画面に写っている人物は明らかに人間に似た何かだと言うことを理解した。

「日本の皆さんこんにちは。私は真大阪拡大班のサブリーダー、美流野みるやと申します。

この放送は日本全体に共通で流れています。

早速ですが、私が何故この放送をしているかを説明させていただきます」

謎の放送に困惑する人々だったが、きっと何かのイベントだとその時はほとんどの人が思っていただろう。だが、その思いは次の瞬間絶望に変わった。

「我々の目的は今の日本を消し、この真大阪を新たな日本として君臨くんりんさせる事です。

今回、現日本人の貴方達を集めたのは一気に殺すのが楽だからという理由です。

我々は異能いのうを扱えます。

貴方方はどうやっても我々に勝てるという事は無いので安心してこの地に眠りなさい。

さっきの地震は私の仲間が故意的に起こしたものですので、貴方達を殺すのにもう一度目の前で見せてあげましょう。

死ぬ前の土産みやげです」

その台詞を聞いて冗談だと思うやつはこの場には1人すらいなかった。話し方はとても穏やかでそんな事するはずないと言いきれる程優しい声なのに、その目は嘘偽りなく、本気だからである。

そして、美流野と名乗る男の後ろから、体が2mは余裕で超えているガタイのいい男が出て来た。こいつが地震を起こした奴だと全員が理解してしまった。それほどの力を感じた。

「こいつが僕の部下の出島でじまだよ。異能は振動を起こす事が出来るんだ。凄いでしょ」

美流野がそう言うと出島は大きく腕を振り上げて地面へと打ち下ろす。それと同時に物凄い揺れがやって来たのだ。

「まぁ、場所によっちゃあ、威力も変わるやろうけど、近場の奴らは怪我じゃすまんやろうな。とりあえず、挨拶程度ってことでええやろ。最近新大阪で人が死んどったのは真大阪が広がってる証拠や。新大阪は今日から正式に真大阪に変わって、ここからどんどん真大阪に日本は変わっていく。真大阪になった場所は元のあんたら日本人が入れば死ぬさかい、気ぃつけやぁー」

もう、皆は全力でこの国から逃れることを考えるのに必死だったろう。

だが、そんな必死な逃亡も無駄だということを彼らは知らしめた。

日本はこの日から真大阪に侵食されていくようになり、俺たち人類は、真大阪になってしまった場所にいた人たちは皆死んでしまう現実を突きつけられたのだった。



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