軍艦街のアーニャ

 Side 加藤 佳一


 肌が日に焼けて小麦色になっている後ろ髪と横髪が首元まで伸びた茶髪の少女、アーニャ。

 活発で明るい女の子だ。

 

 前回語ったように俺とマヤ、ナナは町の有名人だ。

 それでよく声を掛けられる。

 

 そこにナナが持ち前の明るさ、人当たりの良さであれよあれよと人脈を作っていったわけだ。

 

 俺が元居た世界の学校に放り込んだら冗談抜きで友達100人達成できそうだ。


 その中でも特に仲良くなったのがアーニャとそのグループだ。


 そのキッカケはと言うと――



 時間は遡り――


 ウォーバイソン、フロンティア、との決戦を終えて戦後処理などが一段落した時。


 その頃になると夜になり、格納庫周辺であらかた作業が終わってナナやマヤと一緒にオッサンやお姉さん達に囲まれて悲しくも楽しく談笑していて切り上げた時の話だ。


 ポツンと俺のパワーローダーの前で突っ立っている少女を見掛ける。

 ナナみたいに興味深げにじっくりと自分のパワーローダーを眺めていた。

 その様子を眺めていると、ふとした拍子に此方に気づいた。


「アナタがこのパワーローダー着ていた人?」


 それがアーニャとの出会いだ。


「ああ、そうだ」


「戦い観てたよ! 凄かったね! 恐くなかったの!?」


「出来ればもう二度と勘弁なんだけど・・・・・・」


 だけどやらにゃならんのがこの世界で生きていくための宿命でもある。

 あと何度、戦車の上に乗って敵の戦車めがけて突撃なんて言う無茶をやらかせばいいのだろうか。

 ちょっと考えただけでも気が滅入ってくる。

 

「そか・・・・・・ありがとう。この町の皆、大勢助けてくれて」


「俺だけの手柄じゃない。この町の人達も、アーミーズシティの人達も頑張ったんだから今があるんだ」


「自分のこと誇らないんだね」


「まあな」


 敵だけじゃなく死ななくてもいいこの町の人間やアーミーズシティの死体を目にした後だ。

 誇らしげに語る気持ちは失せるもんだ。


「それはそうと、パワーローダー好きなのか?」


「うん。乗り物も好きだよ。それが持てるってことは一人前の証みたいなものだから」

  

「一人前とか認めてもらうとかそんな段階すっ飛ばして俺は身に纏ったけどな・・・・・・」


「そうなの?」


「ああ。ホープタウンでウォーバイソンの襲撃くらってな。そこで場の流れでパワーローダー身に纏って戦うことになったんだ」


「そうなんだ。恐かった?」


「まあな、恐かった。本音は逃げ出したかったしどうして俺がとも思ったけど、マヤやナナがいたからな。とにかく放っておけなかった」


「いい人なんだね。お兄さんは」


「ありがと」


 何だかナナみたいな不思議な雰囲気の子だなと思った。

 

「あ佳一~こんなところにいた。その子は誰?」


 と、噂をすればなんとやらでナナがやって来た。


「私はアーニャ。この人と話をしていたの」


「そういや自己紹介まだっただな・・・・・・俺の名は加藤 佳一。佳一でいい」


 ふと慌てて俺は自己紹介した。

 それに続くようにナナも「私はナナ。佳一と一緒に旅をしているの」と自己紹介した。


 アーニャは「よろしくねナナちゃん、佳一さん」と笑みで返してくれた。


 まるでナナとは姉妹みたいだなとか思った。  

 

 そこから色々と話込んだ後に解散した。


 二人ともすっかり仲良くなったようだった。



 そして今に至る。


 アーニャもナナのように人当たりが良いのせいなのか同い年ぐらいの女の子や男達、年下から大人に老人まで色んな人間に顔が利くようだ。

 

 さらに独自の女の子グループとも接触した。

 

「大勢友達いるんだな」


「まあね。それにね。皆にこの町好きになって欲しかったから」


「そうか」


 本当に根っこからいい子なんだなと思った。

 

「アーニャ、さっそく外の男を口説いたんだ」


「やるね~」


「私もいい相手がみつかるかな~」


 などとアーニャのグループの女の子が言う。

 アーニャは恥ずかしそうに「もう、そんなんじゃないんだから」と返した。

 

「この世界の女性、本当に攻め好きだな」


 と、ボヤくと――


「まあ何時死ぬか分からないからな。そうもなるさ」


 マヤにそう返された。

 何故か顔を赤くしている。

 理由は考えるまでもないのであえて言及しない。


「ねえ、パワーローダー乗ってるんでしょ? バトルとかしないの?」


 と、アーニャの取り巻きの女の子がそう言ってきた。


「うん? バトル? コロッセウムみたいにここでもパワーローダー同士で戦ったりするのか?」


「そうだよ。コロッセウムはどんなのか知らないけどパワーローダー乗りは腕試しでやってるの」


 俺の疑問にアーニャが答えてくれた。


(この世界、娯楽が壊滅的だからな・・・・・・)


 などと思いながらちょっと興味を惹かれるものがあったので足を運ぶことにした。

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