第二試合目

 Side 加藤 佳一


 赤いSAー5を貸し出してくれたオーナさんのスタッフやマヤも協力してくれての整備作業だ。


 グレイさんに「もう一戦いっとくか?」と言われて「いけるとこまでいってみます」と返事しておいた。


 武装は変更無し。

 

 縦長で昔の警察の機動隊が使いそうな大きなシールドに対パワーローダー用の大きなハンマーでセットアップする。


 少し休んでいるとナナが駆け寄ってきた。


「見ていて不安で恐かったけど凄かったよ」


「ああ。まあ運が良かったんだな」


「次も勝てそう?」


「さあな。相手にもよると思う」


 次は間違いなくナックルコングよりも強い奴だろう。

 どんな相手かは分からないし、それに戦い方も見られている。

 その点を考えれば不利だ。


「ねえ、ケイイチ」


「うん?」


「最初、本当はどうして戦うのか分からなかったけど、けど、上手く伝えられないけど、頑張って」


「ああ」


 そう言えばパワーローダーでの戦いは基本血生臭い殺し合いだもんな。

 こう言うスポーツ的な――と言っても過激な部類だが――な戦いを見るのはナナにとって初めての経験だろう。

  

 その辺りの配慮が欠けていたのに気づいたが――今の自分の行動を良い方向に捉えてくれているようでなによりだ。


 俺はナナに「次も頑張るよ」と返した。



『第二試合目!! ナックルコングを撃破したSAー5、加藤 佳一選手!! 対するはサナダ選手が駆るハタモト三式だ!!』

 

 サナダ選手のハタモト三式。

 やや青み掛かった黒のカラーリング。

 ロボットのような戦国武将染みたパワーローダーだ。

 黄色い二本角のカブト。

 鋭角的な肩鎧。

 手に持った身の丈以上に長い、フォークのような三又の槍が目を引く。


 パワー一辺倒のナックルコングとは違い、槍を使ったリーチを活かした戦い方をするタイプなのだろうか?


 そうこうしているウチにゴングが鳴り響く。



 Side マヤ


 先程の戦いと違い、両者ともブースターを活かして接戦を繰り広げていた。

 正直パワーローダー同士の戦いになると専門外だが状況は今のところ五分五分に見えた。


「アレじゃコングの奴が負けるのも無理もないな」


「誰だ?」


 ふと誰かが傍に寄ってくる。

 白髪。

鋭い瞳。

 褐色肌。

 体格の良い筋肉質の男。

 黒い革ジャンを着ている。

 ホープタウンの荒くれ者ともケイイチとも違うタイプの男だ。


「ウルフェン。サナダにケイイチって男が勝てば戦う最後の相手さ」


「私の名はマヤ。ホープタウンで戦車乗りやってメカニックやってる」


 私は少し対抗意識を出しながらそう言った。


「私はナナ。アナタもパワーローダーに乗って戦うの?」


 ナナは何時もの調子で質問した。


「そうだ。お前もケイイチって奴の連れか?」


「うん。一緒に旅してる」


 ウルフェンと名乗った男は「そうか」とだけ返し、「何もんだアイツは? どんどん動きが良くなってる」と尋ねてきた。


 だが質問に答えるよりも「動きがよくなってる?」と言う部分に疑問を持った。


「一見僅差の勝負に見えるがアイツ、サナダの動きを観察してやがる。隙あらばさっきみたいに槍の破壊でも狙ってやがるんだろうぜ」


(確かにケイイチならそうする・・・・・・)


 先程の戦いを見た後なら分かる。

 ケイイチならやりそうだと思った。


「まあ見てみれば分かるだろう」


 そう言われて私は試合により一層集中した。



 Side 加藤 佳一


『一進一退の攻防戦!! 先程の戦いが嘘のような希に見るハイレベルな戦いだ!!』


 解説もギャラリーも盛り上がっているようでなによりだ。


(素早い槍の動きも盾で防げる!! どんなに早く動かせても中身は人間だ!! 何れ動きは鈍る!!)


 相手は激しく攻め立てるが俺の読み通り攻めのペースは保ったままだが段々と動きが雑になってきている。

 

(一種のフェイントかもしれないが仕掛けてみるか!)


 何度か探りを入れるように攻めたが今度は強気で攻めてみる。

 

(相手の槍を盾で払って――殴る!!)


 相手の鋭角的なフォルムの左肩に直撃打。

 少し相手の態勢が崩れる。

 

(相手は左腕を前に、右腕を後ろの方で槍を持っている。両足も左足が前、右足が後ろ――左側が死角――自分から見て右側が死角になりやすい――)


 さらに俺は分析を続ける。


(この選手は距離が離れていると素早い突きを連打し、懐に入り込まれると槍と言うより棒で戦うみたいに払ったりしてくる――)


 我流か、どっかでそう言う風に習ったのかは分からないがそれがこの選手の必勝パターンなのだろう。

 強さ、特に技術面で言えばウォーバイソンの連中や先程戦ったナックルコングよりも上だ。


(デスホーンの奴とチェーンソーデスマッチやったんだ!! 後は実行するのみ!!)


 背中のブースターを噴かし、一旦距離を離してジリジリと近寄る。

 相手は間合いを計るためにジリジリと近寄る。

 剣客メインの時代劇の強敵との戦いのような緊迫感。


 俺は――


『シールドを投げた!?』


 実況が言うように俺はシールドを投げた。そしてブースト加速。

 相手はすかさず槍で振り払ってシールドを吹き飛ばす。

 咄嗟に槍で払ったせいで体が右に寄り、左肩から先にある背中が見える――死角を正面にさらけ出している状態だ。


『もらった!!』 


 その時にはもう間近に迫っていた俺は胴体めがけてハンマーを振り落とした。


 相手は反応が遅れるも一撃を逃れて――そのかわりに槍は二つに折れる。


 相手は降伏した。


(スポーツだったらそっちが勝ってたんだろうが、ここは何でもありのアリーナだからな・・・・・・)


 だから俺はこの相手に勝てたのだ。



 Side マヤ


 これで二連勝。


 そして傍にいたウルフェンは――


「中々面白そうな奴じゃねえか。グレイのオッサンが気に入るワケだ」


 そう言って自分の控えの場に戻るのだろう。


 ケイイチと戦うために


 一体どんなパワーローダーで出るのか気になったがまずナナと一緒に万全の状態で佳一を送り出すことに専念することにした。 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る