あぽかりぷすライフ
MrR
少年と名無しの少女
白いぼろキレ身に纏った名無しの少女
Side 加藤 佳一
この世界は最終戦争とやらで滅びたらしい。
らしいと言うのは何時も隣にいる何時もニコニコしている何時も脳天気な白いカッパのようなボロ切れを纏い、自分の体重以上にガラクタを詰めた混んだカバンを背負う歳が同じぐらいの女の子に聞いたからだ。
それが真実かどうかは分からない。
が、この世界は確かに荒廃している。
人の手入れもされず、ただデタラメに生い茂った木々。
ひび割れたアスファルトから伸びている雑草。
アスファルトの上にはスクラップと化した自動車。自動車の座席には衣服に身を包んだ骸骨が転がっている。
途中立ち寄った車のスクラップで埋め尽くされているサービスエリアも生活に必要そうな物は全て無くなっていた。
あるのは玩具や本などの娯楽品ぐらいだが連れの少女はまるで宝物でも見付けたかのように喜んで背中の大きなバッグに放り込む。
こう言う人が住めそうな場所には誰かが根城にしている事が多いが幸いにもそう言う事はなかった。
人がいても面倒な交渉とかしなくちゃならない。
銃を突きつけられて何者なのかを説明しなければならない。
最悪なのは野盗の溜まり場とかになっていて銃撃戦になる事だ。
この世界は食料を巡って奪い合い、そのためなら人殺しも許される。
そんな狂った時代を俺と名無しの少女は旅をしていた。
名無しの少女は変人だ。
過去の事は分からない。
ただ旅をしているらしいが旅の目的もないらしい。
何時もニコニコしていて雨の時に着るカッパのような外観の継ぎはぎの白いボロ切れを被って体格不相応な大きなカバンを背負って路面事情最悪な世紀末の地面を裸足で駆け回り、あれこれとマシンガンの様に語りかけてくる。
正直ウザいと感じた事はある。
だがこの世界は娯楽がない。
精々ラジオを聞くか名無しの少女が集めた娯楽品で暇を潰すかぐらいだ。
だからか旅で歩く道中に名無しの少女が尋ねて来ても苦を感じなくなった。
最後に少女は――こう言うのは悔しく感じるが綺麗だ。
金髪で整った顔立ちの可愛らしい女の子だ。
背丈は小柄で体格も華奢。大体女子中学生か女子高生なりたてぐらいだろうが正確な年齢は分からない。(少女が覚えてないから)
髪の毛は自分で切っているがボサボサ気味。
それとこの世界は毎日風呂に入ると言う贅沢な事は出来ないので臭い。
口臭はもっと酷いだろうがそれは自分もなので言わないようにしている。
だが完全に無防備とも言うワケでもない。
自分もそうだが銃をちゃんと携帯している。
こんな世界だから当然と言えば当然だろう。
だが疑問もある。
ここは――戦争で崩壊したという枕詞がつくだろうが日本だ。
看板、雑誌、車両のナンバープレートや廃墟の雰囲気から見てそう確信している。
にも関わらず大量の銃器が手に入る。
道中で見つけた自衛隊が築いたらしき検問所でも日本製の銃ではなく素人目でも分かる海外製の銃が見つかったりする。
それが謎だったが幾ら考えたところでしかたないのであまり考えないようにした。
何時だったか「どうしてそんなに銃持つの?」と名無しに尋ねられた事がある。
俺は「貴重品だから」と返すと「食料より沢山あるのに?」と返された。
なので「食料と交換出来るかもしれないから」と返した。
そうすると少は二パッと「そうなんだ! 頭いいんだね~」と喜んだ。
俺は褒められているのは分かっているのだが何故だかバカにされているように感じたが何時もの事である。
「そんなに沢山銃器運んで平気なの?」
ふと名無しの少女にそう言われた。
俺は買い物するための籠とその籠に合わせて作られたショッピングカートに拾った銃火器を乗せている。
遠目から見ると銃の販売業者に見えなくもない。
「それを言うならお前だってそんなに沢山荷物運んで大丈夫なの?」
「私はへいき~」
この名無しの少女は華奢な体付きにも関わらず見掛けによらず力と体力がある。
自分の体よりも膨れ上がっているカバンを背負って何時もニコニコしていて食事も水も最低限の回数しかしない。力を除けば体力関係の仕事なら即戦力の逸材だ。
「そう。腹とか水とかは大丈夫なのか?」
「私は大丈夫~」
「お前何時もそうだけど本当に大丈夫だろうな? 突然バッタリ倒れて死んでも知らんぞ?」
「えへへへ。君は優しいね~」
そう言われて俺は照れくさくなって「ほっとけ」と返してしまう。
その後も色んなやり取りをして一日を終えた。
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