王の意思
Side 木里 将太朗
『何だアレは? 巨大な悪魔』
「大きいわね? 50m級の機動兵器? アレが奴達の切り札なの?」
俺はサエと一緒にその姿を見た。
まさに巨大な機械の悪魔だった。
だが同時にこうも思う。
『今更あんなロボット一体でどうなると言うんだ――』
と。
☆
Side ネロ
負けは確定した。
だけど意地はある。
僕についていって死んでいった人々のためにも。
僕のせいで死んだ人のためにも。
僕は最後の最後までネロである事を貫き通そう。
☆
Side 谷村 亮太郎
『大勢は決した、降伏しないか?』
僕はダメもとでネロに頼み込む。
『僕は――この世界に来て覇道を選んだ瞬間から覚悟はしていた。僕はネロとして最後まで振る舞おうと』
ああダメだ。
彼はもう覚悟を決めている。
世界の敵として散る定めを受け入れている。
☆
Side 荒木 将一
容赦がない激しい攻撃が降り注ぐ。
バトルステージになっているエルドラドもろ共、吹き飛ばす勢いで攻撃を仕掛けている。
此方も反撃はしているが――バリアのような物に阻まれて攻撃が届かない。
バリアを貫いてダメージを与えても自己修復される。
だからと言って諦めるつもりはない。
どんな理由があろうとも立ち止まらない。
☆
Side 藤崎 シノブ
何度目かになるバリアを切り裂き、そして続けざまになる魔法を打ち込む作業。
それでもこの悪魔は倒せない。
自己修復されてしまう。
安藤さんも同じ手順で攻撃を加えているが同じ結果だった。
中々決定打が打てないでいた。
『バリアを破壊して動きを止めてくれ。それで決着をつける』
と、荒木さんが提案してくる。
『その賭け、俺も乗った』
『私もよ』
木里さんと手毬さんもだ。
そして次々とメッセージが届く。
☆
作戦その物は単純だ。
俺と谷村さん、安藤さんでバリアをぶっ壊す。
そして皆が一斉に攻撃する。
ただそれだけの作業だ。
『まずは自分から!!』
谷村さんが相手の機動兵器の全身を――まるで瞬間移動するかの如く動き回り、 バリアを切り裂いていく。
それに『私も』と、安藤さんも続いた。
俺も真正面から一刀両断するようにバリアを切り裂いた。
『いっくぞ!!』
木里さん達が、
『これで最後だ!!』
荒木さん達が、
一斉攻撃をお見舞いする。
空中戦艦のレギンレイヴやシグルドリーヴァ、ブリュンヒルドからも砲火が飛ぶ。
☆
Side ネロ
「あーあ、負けちゃったか」
巨大機動兵器。
ラストデビルのコクピット内部で僕は思う。
呆気なく、力押しで押し切られた。
だが負けは負けだ。
だから最後の手順を踏む事にした。
「総員に次ぐ。我々アイン・ミレニアは敗北した。これより投降する――以後、戦闘行為を続ける者はアイン・ミレニアを名乗る事を許さない。これが最後の王命である」
と。
同時に自爆ボタンを押した。
☆
Side 木里 翔太郎
『あの爆発――自爆したのか』
「みたいね――私達を巻き込む事も出来たでしょうに――」
『……なんにしても、今度こそ戦いは終わりか――だけど』
「何だかスッキリしないのは分かるわ。だけど何もかもが巨悪を倒して大円団ってワケじゃない。今回もその一つだった。ただそれだけの事よ……」
『……ああ』
納得するしかないか。
☆
Side 荒木 将一
『終わったか……』
『ええ……悪い子じゃなかったんじゃないかしら、ネロは』
『俺もそう思うよ』
『うん――』
『さてと……これからどうなるんだろうな世界は?』
『さあ? まあなるようになるんじゃないかしら?』
梨子が言う通り、なる様になるのか。
なるにしてもマシな世界になる事を祈ろう。
☆
Side 藤崎 シノブ
『こうなる事を予想してたんですか?』
『まあね――』
『……大丈夫ですか?』
『――大丈夫じゃないかな。ネロは世界が滅びないように一度この世界を上手く滅ぼして再生させようとした。正直矛盾しているけど、全部が全部が間違っているとは思えないってのが本音かな』
『そうですか――ネロと直に会ったことがあるんですか?』
『まあね――説得を試みた事がある。だけど無駄に終わったよ』
『……そうだったんですか』
そこまで動いていたとは知らなかった。
やはり谷村さんは真の勇者の称号に相応しい人物だ。
『帰ろう。日本も大変だぞ――天王寺 ゴウトクを失い、内閣を失い、大勢の人間が死んだ。今回の一件でどの勢力も暫くは表立って動けないだろうけど、その暫くは何時まで持つか――特にヴァイスハイト帝国次第でまた世界の情勢が悪化する』
『平和――長続きしそうな感じじゃありませんね』
『それでも僕が選択した道だ。責任は持つさ――』
『僕もお供します』
それから僕達は戦後処理を行い、日本へと帰還した。
そして――
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