天王寺 ゴウトクの野望
Side 天王寺 イチゼン
『黒鬼隊!! 後退しつつ戦線を維持!!』
『アインブラッド部隊、このままじゃ持ちません!!』
『敵部隊、攻勢に出ています!! このままでは――』
揃いも揃って役立たずが!?
何をしているんだ!?
『あの新入りどもはどうした!?』
『敵のエースと戦闘中です!! 我が艦も敵の攻撃を受けて――』
あの3人、そんなに強くないのか?
あの役立たずどもが。
こうなれば――
『どいつもこいつも使えない!! こうなったらこの町を艦砲射撃で吹き飛ばせ!!』
『正気ですか!? 味方も巻き込みますよ!?』
『構うか!! やれ!!』
『――わ、分かりました』
そうだ。勝てばいい。
あいつらに勝てば全てが許されるんだ。
『我達の後方に新手です!!』
『今度は何だ!?』
陸上戦艦から通信が入る。
☆
Side 雪代 マイナ
奇跡が起きた。
次々と中立を決め込んでいた自治体が我々の加勢に来てくれているのだ。
中には黒い金縁の、大きな大剣を二つ持ったアインブラッドタイプの姿も見える。
『遅ればせながら我々も加勢する』
『味方もろとも核攻撃を行い、従わない物は虐殺する今の日本政府の蛮行を許す事は出来ない』
『これは人の尊厳と自由を懸けた戦いだ』
様々なタイプのパワーローダーが戦線に参加してくれている。
『自衛隊は国家だけでなく、国民の命と財産を守るために存在する。もはや貴官らの行動はその範疇から逸脱している。ましてや自国民を率先して虐殺する事に加担するつもりはない』
中には敵の自衛隊も離反して味方についてくれる人々も出た。
様々な周波帯で呼びかけが行われている。
☆
Side 天王寺 イチゼン
なんだ!?
なんなんだこの流れは!?
これは比良坂市の時と同じ――
『撤退だ!! 撤退!!』
『このタイミングでは撤退できません!!』
『知るか!! 俺だけでも生き延びればそれでいい!!』
『そ、そんな――!?』
こんな所で死んでたまるか!!
こうなれば何が何でも勝ちに行ってやる!!
☆
Side 木里 翔太郎
敵軍が次々と後退、投降していく。
『チッ潮時だな』
『ハハハハ、また遊ぼうぜ』
『次は殺す』
あの新型の3機も去って行った。
量産型のアインブラッド部隊も後退していく。
それに続くように黒鬼隊も後退していった。
『どうにかなったけど町は酷い有様ね』
『そうだな』
手毬が言うように町は未だ燃え盛っている。
手の空いているパワーローダー達が懸命に救護活動をしていた。
自分達も参加する事にする。
☆
Side 雪代 マイナ
懸命に救助活動が進む中。
ある情報が舞い込む。
内容は天王寺 イチゼン。
そしてその背後にいる天王寺 ゴウトクについてだ。
天王寺 イチゼンは天王寺 ゴウトクの息子であり、その親の権力を好き放題に利用して生きて来たらしい。
ゴウトクは日本を裏から操る悪の親玉のような奴であり、陰謀論に出てきそうな存在だと言う。
恐るべきはこの家系の残虐非道な悪行の数々。
国のためと称して文字通りなんでもする。
見ていて吐き気がするような事を平然とやる。
息子からして町を焼き払ったり、比良坂市に戦術核を使おうとした奴だ。
元から正気ではないだろう。
そしてそいつらがいる位置。
避暑地についても記されていた。
☆
Side とある政治家
ここは避暑地。
日本政府の中でも限られた人間しか知らない場所。
日本は荒廃しているそうだがここだけはリゾート施設のようだ。
何しろ日本が何かしらの国難に見舞われた時の避難所として作られた場所である。
今のような状況も想定済みである。
そしてここを牛耳っているのはいわゆる天王寺家、その長である天王寺 ゴウトク。
正直私は彼が恐ろしい。
息子にとんでもなく甘く、他者には何千倍も厳しい親バカの狂人である。
控えめに言っても悪の独裁者であり、日本のためなら日本国民を何万人でも殺してみせたような奴である。
避暑地の最深部。
まるで戦国時代の将軍がおわす和風の場所にて。
我々を見下ろすように黒い着物を身に纏った灰色髪の獅子のような強面の顔立ちの男、天王寺 ゴウトクが我々を見降ろすように座っていた。
傍にはパワーローダーで武装した兵士達が控えていた。
皆緊張した面持ちでこの場に座っている。
ここは国会のように居眠りや野次が許されるような場所ではない。
少しでも機嫌を損ねれば一族郎党皆殺しにされる。
そう言う場所なのだ。
議題は――
「日本国民の間に反抗の狼煙が上がっておるな」
日本中で政府打倒の動きが上がっている。
当然だ。
中立地帯を半ば八つ当たりのように焼け野原にしたのだから。
「丁度いい。今回の反乱を鎮めれば間引けるだろう。比良坂市の連中は手に入れる物は手に入れて一族郎党皆殺しにしよう」
と、軽く言った。
軽く言ったが本気でやるのだろう。
天王寺 ゴウトクは本気でそう言うのだ。
「ヴァイスハイト帝国は核でもチラつかせておけば黙っているだろう。世の中、核を持ってる国が大国であり、強いのだ。そしてより強く、効果的な戦略兵器を持つ者が世界を牛耳る事が出来るのだ」
単純明快ながら悪魔的な暴論だ。
そしてこの男は友軍を巻き込む形でヴァイスハイト帝国もろとも核で吹き飛ばした前科がある。
恐らく本気だろう。
核に継ぐ新たな戦略兵器も冗談ではなかろう。
神すら恐れぬ所業とは正にこの男のためにあるような物だ。
この国がこれからどうなるのか。
考えただけでも恐ろしい。
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