ヒーローロード・2afterYear短編集

MrR

闇乃 影司のだらしない一日

 闇乃 影司。


 長い銀髪のポニーテール。


 純白な綺麗な白肌。


 双眼の赤い瞳。


 華奢な体格でまるで童話に出て来る様なお姫様の様な容姿を持つ少年。


 しかし悪魔としか言い様がない変身形態を持ち、その戦闘能力は強大無比で反応兵器(クリーンな核)を使っても殺害不可能とされている。


 成し崩し的に彼は様々な悪事を働いたが、彼が自由に動ける一端はその強大な戦闘能力にあった。


 特にこの二年間は世界の危機が何度も起きてしまってるがゆえに居て欲しいと言う願いから監視つけて基本は放置されているような状態だ。


 そんな彼だが地球以外にも様々な世界を行き来している。 

 

 そうした世界に行かれると当然ながら地球の権力者は手を出し難くなる。

 特に魔界なんかで事を起こせば大問題になる。

 

 予断だが宗教が大きく政治に関わっている国などでは魔界関連で度々デモが頻発しており、社会問題になっていたりする。

 

 これでもマシな方で、神を名乗る存在が敵として襲来した時何かは宗教界はこの世の終わりの様な状況だった。


 まあ宇宙人が襲来した時なんかもデモが起きたが・・・・・・


 こうして書いてみると大事件が起きるたびに何かしらのデモを起こさないと落ち着けない種族なのだろうか、地球人と言う種族は――

 

 話を戻そう。

  

 闇乃 影司は地球で過ごす事も多い。

 地球で敵が多いにも関わらずだ。

 特に日本では影司を排除したがっている連中は多くいる。

  

 影司を捕まえて人体実験した日本政府(この頃の影司はまだ強くはなかった)もそうであるが退魔師と呼ばれる連中なんかもそうだ。


 退魔師と言うのは妖怪退治などを専門に請けおう裏の世界の住民であるが、時代の流れもあるが闇乃 影司のせいで現在は随分と肩身が狭くなり、退魔師を廃業した者も少なくない。(更に後継者不足と言う問題もある)


 今も続けられているのは京都の村雲家の様なデカイところか、殆ど道楽が続けているか、実力があるかのどれかだ。

 

 これは闇乃 影司が元々は退魔師と言う家系の生まれであり、それも退魔師の中でも汚れ仕事を多く行ってきた闇乃家の跡取り息子である事に起因する。

 そんな彼が騒ぎを起こせば当然退魔師の株価にも影響を与えると言うのは当然なわけだ。

 

 もっとも闇乃 影司本人からすれば「知った事ない」、「こんな業界滅んじまえ」としか思ってないが。



 Side 闇乃 影司


 地球。


 日本の太平洋側某港。


 クイーンパレス号


 大気圏内外でも活動出来る純白の巨大リゾート船だ。

 最近は極僅かの短期間で外宇宙まで行けたり、地球外からの侵略者の船艦の主砲を弾けるバリアを搭載したりと魔改造が施されたりしている。


 内部は女性の娯楽が敷き詰められていたりする。


 船員もほぼ女性で構成されている。


 乗船者も女性の大富豪で、招かれる客も女性富豪か、その富豪と深いパイプを持つ女性が殆どで、男性で乗れるのは極僅かな人間しかいない。


 そして闇乃 影司はその極僅かな人間の一人だった。


(どうして俺ここにいるんだろ・・・・・・)


 などと思いつつ、知り合いの女性達(全員絶世の美女。日本のアイドルとかが霞むレベル)の着せ替え人形になっていたり、トレーニングの指導したり、マッサージしたり、メイクしてあげたりと、抜き系のギャルゲーレベルのハーレム状態に片足突っ込んでいる状況に置かれていた。  

 

 今、影司は胸を隠すスポーツブラを付けて(よく女性に間違われる影司はこうしないと騒ぎになる)の黒のホットパンツ姿で屋内プールのデッキチェアで横になっている。天井は開閉式のガラス張りでそこから太陽光が降り注いでいた。屋内プール内の温度も一定に保たれていてプールに入るにはいい場所だ。


(まあミサキお姉さんの頼みだからしゃあないか・・・・・・)


 チラッと傍に目をやる。


 傍には同じくデッキチェアで寝そべっている女性、金色のスリングショットを惜しげもなく来たミサキ・ブレーデルがいた。

 サングラスを付けて蠱惑的な笑みを浮かべて眺めている。

 尚、彼女のバストサイズは120cm台前後で金のスリングショット(V字のヒモ水着)と言う組み合わせは一種の童貞殺戮マシーンだ。エロ漫画やエロ同人の世界なら即刻影司を部屋に連れ込んで逆レイプするパターンだろう。


 ミサキ・ブレーデルと言う女はどう言う女かと言うと、地球連邦軍内の秘密組織のエージェントで金髪ロングの碧眼で超爆乳で白肌でナイスバディな八頭身の女性――一種の女性の美の完成点の一つな様な容姿をしている。

 他にも妹にナオミ・ブレーデルがいて見分け方は右頬に泣きボクロがあるかどうかぐらいしかない。

 髪型は前髪を中央分けにしてショートのポニーテールにしている。(妹は前髪を分けておらず、横髪を肩まで伸ばして、長いポニーテールにしている)


 ちなみにこのサイズの爆乳女性は周囲に何人もいて、そのせいで影司も女性の胸のサイズに関して若干感覚が狂い始めている。それもこれも自分なんぞに寄ってくる美女達のせいである。 


 それぞれ別のベクトルの絶世の美少年と美女が二人いて周囲から様々な視線を浴びていた。


「ううん。こうして二人きりで過ごすのは久し振りだと思うと嬉しくて♪」


「・・・・・・そう」


 顔を朱に染めて影司はミサキから目を反らす。

 

「昔みたいにお姉ちゃんって言ってもいいのよ?」


「・・・・・・」


「あ、恥ずかしいんだ? だけどそう言うところも可愛いわよ?」


「全くもう・・・・・・て言うかこの船普通に出入りしてるけどいいの? 一応言うけど、アメコミの世界征服目論むボスキャラとか招いているような状況だぞ?」


「そんなの皆分かってるに決まってるじゃない。マダム(この船の代表者)にも気に入られちゃってて――養子にならないかとか言われて断ったんでしょ?」


「正気の沙汰とは思えんよ・・・・・・」 

 

 ミサキの言ってる事は全部本当である。

 お嬢様とかお金持ちと呼ばれる人種は何と言うか刺激とか過激さとかに飢えているらしい。

 この船では恐れられているどころか、スター状態だ。

 こう言う犯罪を犯した人間が社会的に人気があるのは過去に何件かあるらしい。

 

 ミサキ曰く、「悪役でもダー●・ベイダーとか人気あるでしょ? そう言う事よ」らしい。

 一度変身して見せた時何かは黄色い悲鳴が上がったぐらいで逆に困惑した。


(まあ二年前ならともかく、今の時代現実にも怪人とか現れてるし――それにハリウッドの特殊メイクとか凄いから創作物みたいに驚かれはしないんだろうな・・・・・・)


 よく創作物では人外は現実に現れると迫害されるが実際は手を出さない限りはコスプレか何かの一言で片付けられるのが現実である。


 怪人が現れて害を成している昨今でも影司の知名度は群を抜いている。

 ここにいるセレブ達からすればとんでもない大スターがいる程度の認識だとか。

 

「貴方、犯罪歴は多いけど世界救ったスーパーヒーローでもあるんでしょ? それにその容姿であのバイオレンスな姿のギャップとかも受けてるのよ」


「そう言う物かね」


 確かにミサキの言う通り、犯罪を冒しているがどれもこれも進んでやったわけではないし、実際に世界を救った事はある。


 だが異世界の一件で精神的にヤケを起こして紛争地帯に武力介入し、大量殺人はした事には変わりはないと思っている。(ミサキと出会ったのはこれぐらいの時期だ)


「それに貴方の過去だって皆ある程度知ってるし、表だって賞賛はされないけど裏ではこうしてセレブだらけのクイーンパレスに招待されるまでになってるんだから。もうちょっと胸張って生きてもいいんじゃないかしら?」


 影司は逆に居心地悪く感じているが、マダムやミサキ、リンディなどのセレブやセレブに人気のある女性達に定期的に来て欲しいと懇願されてやむなくこうして過ごしているのだ。


「マダム――イザベラさんはなんて?」


「ベッドで待ってるわ」


「俺は男娼婦か?」


「実際そんな感じじゃない。皆の事を想って皆に嫌われたい。だけど一人は寂しいからワザと女にダラしないキャラを無理して演じているんでしょ?」


「・・・・・・そう、だね」


「あ、ごめんなさい。泣かせちゃった?」


 何時の間にか影司は顔を真っ赤にして半泣き状態になっていた。


 一人ぼっちは寂しい。


 だから自分を理解してる人を求めてしまう。

 

 だけどそれをすると色んな人が傷ついてしまう。最悪死んでしまう。実際何人も死んでしまった。


 だから異性に対してはある程度突き放した関係を取るようになってしまった。それでも皆、何を考えているのか構ってくるようになった。


 一種のハーレムラノベ主人公状態だ。


 それは心地よくもあり、同時に悲しくもあった。


 何度も突き放した。それでも奇妙な事に突き放せば突き放そうとする程構ってくる。

 

 本当にいい女性に恵まれていると思う。


 だけど受け容れる分けにはいかず、その妥協点の一つがミサキなどの一部女性とのセフレ関係である。


「あっ」


 ミサキが抱き付いてくる。大きく柔らかな人の頭以上のボリュームを誇る乳房で影司の頭を包み込む。

 何時の間にか水着姿の美女達が集まって来ていた。


「ごめんね。でも私はこうする事しか出来ないから――」


(だめ――能力が――暴走する。止めないと――)


 ミサキから感じられる温もりの心地よさや今の状況の恥ずかしさよりも過去の体験、経験を相手に送る一種のテレパシー能力の暴発を止めるのに必死になる。


 自分の事を知って欲しい。罪を知って欲しい。悲しみを知って欲しい。

 

 だがそれを相手へ一方的に送りつけるなど悪質な洗脳だ。


「――!?」


 影司は目を見開いた。


 ミサキの端正に整った顔立ちが何時の間にか眼前に近付いて、柔らかい感触のリップがを影司の唇に押し当てられ、そしてミサキの舌が影司の口の中を浸食する。

 もう何だ何だか分からなかった。

 何時の間にかミサキのデッキチェアに、豊かすぎるオッパイをクッション変わりに、抱き枕のように抱かれ、ディープキスをしていた。


 居合わせた周りの人々は非難や中傷よりも好気や喜び、何故だか感動などの感情で埋め尽くされていた。


「ぷは・・・・・・はあ・・・・・・はあ・・・・・・」

 

 どれぐらいしただろうか。

 ディープキス終えて口元から離れる。

 口元から互いの混じり合った唾液が糸を引いていた。


 ミサキは顔を真っ赤にしていて母性溢れる聖母の様な表情をしていたがそれを細かく観察する前に影司は屋内プールから離れた。


☆ 

 

 日が落ちてすっかり夜になった。


 クイーンパレス内で割り当てられた部屋(VIPルーム)のベッドの上で影司は枕元を濡らしていた。

 そして胸元を全開に開けて胸のクレバスを豪快に見せ付けている、黒のライダースーツを着たミサキが傍に座って頭を撫でて「よしよし」とあやしてくる。


「もうごめんって言ってるじゃない」


「だからって普通あんな事する?」


「皆、影司のこと悪く思ってないわよ♪」


「そう言う問題じゃなくて・・・・・・やっぱ能力暴発してたんじゃないですかぁ・・・・・・」


 と、涙声でミサキに訴えかける影司。

 キャラクターが崩壊して別人のように、可愛らしい小動物のようになっている。

 これでも世界が恐れる、戦略兵器すら通用しない怪物であるのだが。 


「あ、来たわね」


 コンコンと規則正しくドアがノックされ、そして何故かミサキが「入っていいわよ」と入室を促す。

 

「お待たせ――大変な目に遭ったみたいね」


 入って来たのは短い白髪で右片目を隠した、紫の瞳を持つ、純白の肌を持った麗人だった。

 歌劇の世界なら間違いなく男役に抜擢されるだろう格好良く整った顔立ちと長身のスタイル。

 紳士服姿がよく似合っている。

 だけど女である事を強調させるボディライン、確かな括れとミサキの爆乳より一回り小さい程度の大きなバスト。

 イザベラ・ペンテシレイア。

 またの名をマダム。

 クイーン・パレスの代表者である。


「ごめんね、ベラ――この子の地雷に踏み込んじゃったみたいで」


 と、困った様な顔をしてミサキ・ブレーデルが謝る。

 ベラと言うのはイザベラの愛称で親しい仲の人間しか恐れ多くて呼ばない呼び方である。

 ちなみにミサキも影司にはサキと呼ばせている。

 

 こう言った愛称は特に法則性はなく、基本は自己申告制である。 

 日本人で例えるならば愛菜と言う名前の女性がいた場合、「アイと呼んで欲しい」と頼むようなもんである。


「そう――この子は大胆に見えて、内面はこうなのよ。無理して戦闘マシーンになろうとしているだけの子よ」


「ベラ・・・・・・さん・・・・・・」


 ミサキと挟み込むように座り込み影司の頭を撫でる。

 何か反論しようとしたが事実である上に言い返す気力が出なかった。


 ふとイザベラのピアニストの様なホッソリとした指先が背中をなぞった。

 思わず影司は「ひゃう!?」と言う変な声が出てしまう。


「頭撫でられるのは好きだと知ってたけど、背中も敏感みたいね」


「ちょ、ちょっと止めてくださいイザベラさん」


「イザベラじゃなくてベラって呼んで。お母さんとかお姉さんでもいいわよ」


「べ、ベラお姉ちゃん――」


「良く出来ました」


 そうして背中を撫でるのを止める。

 影司は名残惜しい物を感じたがそれでも口には出さなかった。


「どうするベラ?」


「そうね。影司って一応ディープなギーク(アメリカのスクールカーストでオタク少年に使われる名称)って聞いたからある程度そう言うの準備しようかと思ったんだけど、私達に似合いそうなキャラや衣装とか分からなくて。それに影司の好みも分からないから」


 と、イザベラは顔を赤らめてそう告白した。


「うーん、そうね。日本のサブカル業界は服と同じで流行の入れ替わりが激しいから。半年もすればもう流行が変わってる場合もあるし、数年単位で人気が続くのは本当に希よ」


 ミサキは困り顔でそう評した。


「あの――普通本人の前で堂々とそう言う話します?」


 精神的に持ち直した影司は困りながらそう尋ねる。


「だって影司ばっかを着せ替え人形にするのはやっぱりね――」


「サキの言う通りだな――」


 などと顔を赤らめながら言う。きっと脳内では数々の影司の女装を思い浮かべているのだろう。

 アーサー王(女体化してる方)とかジャンヌ・ダルクとか色々コスプレプレイした事もあった。

 今となっては懐かしい黒歴史である。By影司


「影司はお姉さん達のどう言う衣装見てみたい?」


 とミサキがそう言ってきた。


「え? その――色々と見てみたいけど、似合いそうなのが幾つか――」


「本当か? なら教えてくれないか?」


 パッとイザベラ顔が明るくなって


「は、はい――」


 そうして衣装選択に入る。

 幸か不幸か、衣装がなければある程度物理法則を無視してその場で作っちまえる。

 衣装選択を終えて撮影会に入り、その流れで3pに突入して朝を迎えて三人で一緒に朝食(影司が作った)を取る事となった。

 

 闇乃 影司。


 彼は絶対的な強者としての一面を持つと同時に、人として男として女にだらしのない一面をも持っている。


 これはそんな彼のエピソードの一つである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る