ショートストーリー【ちょいホラー&ちょいホラー寄りのSF】

楠本恵士

人体真珠養殖

 その男は狂気に走っていた。

 テーブル上のトレイの中に、転がされた真珠に似た球体を、収集癖に満ちた目で眺めていた。

 真珠に似た物体は、赤いモノや黄色いモノ、黒色のモノもあった。

 形も少し歪なモノも含まれていたが、それでも男は満足だった。

「さて、君の体からは、どんな人体真珠が生成されるのかな」


 マンションの一室──椅子に手足を縛られて、さらに椅子にベルトで固定された成人女性の姿があった。

「うぐッ……うぐぐぐッ」

 猿轡サルぐつわをされた、女性の顔や腕や足には、外科メスで皮膚を切開された手術痕が無残に残っている。


 男はテーブルの上にあった外科執刀を手にすると、スプレー式の消毒液を手に女性に近づく。

 異物が挿入された顔を恐怖に歪め、首を何度も横に振って、拘束されている椅子から逃れようとする女性。

「うぐぅ……ぐぅ、ぐぅ」


 男の外科執刀を持った手が、女性の顔の膨らみへと接近する。

「この辺りの筋膜の下に埋め込んだ、核が大きくなったから回収するか」

 女性の体には、異物が無数に埋め込まれていた。


 男は誘拐してきた女性たちの、体の筋膜の下にアコヤ貝で養殖真珠を作るみたいに、貝殻を加工して作った人工の核を埋め込んで〝人体真珠の養殖〟実験をしていた。


「埋め込んだ部位によって、色が変化した人体真珠が生成される……赤血球の赤い真珠、脂の黄色い真珠、癌細胞の黒い真珠」

 男は女性の皮膚を切開して、埋め込んだ真珠の核を回収する。


 涙を流して怯える女性の皮膚を押し出して、埋め込んでいた核を取り出した。

 血に染まった球体を生理食塩水で軽く洗うと、筋筋の色をした真珠色の人体真珠が現れた。


 人間を使って生成した人体真珠を、男は笑顔でトレイから摘み上げた。

「素晴らしい……さて、君の体の中に埋め込んだ、他の部位の真珠はどんな色をしているのかな? 見せてくれ」

 切開された傷口から血を流しながら、女性は恐怖の絶叫をした。

「いやあぁぁぁぁぁぁ!」


 女性が軟禁されている部屋の隣部屋には、養殖の役目を終えた男女の死体が累々るいるいと転がっていた。


  ~おわり~



【説明】

真珠はアコヤ貝の中に、外科的な方法で挿入した真珠のコアに、貝自体から分泌される、自己防衛の炭酸カルシュウムやタンパク質などが付着して作られます。

それを、人体でやったら……いったい、何色の真珠ができるのでしょうか?

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