ショートストーリー【ちょいホラー&ちょいホラー寄りのSF】

楠本恵士

妹を殺して告白をやり直す〔タイムループホラー〕

「お兄ちゃん、ダメだよ……あたしたち、実の兄妹だよ……愛し合うなんて絶対ダメ!」

 オレは、妹の言葉に何度目かの苦笑をした。

「また、ダメだったか……この、時間軸の妹も……やり直しだ」

「お兄ちゃん、いったい何を言って……うぐッ!」

 オレは妹の首に手をかけて締めつける……何回もやってきたコトだ、良心の呵責かしゃくは無い。

 妹の顔が苦痛に歪み。

「お兄……ちゃん、苦しい……」


 手足をバタバタさせていた妹の体が、静かになった──両目を剥き出しにして死んだ妹の肉体は、最後の足掻きあがきでピクッピクッと数回痙攣して……完全に動かなくなった。

 床に顔を横向きにして死んでいる妹を見下ろして、オレはタメ息を漏らす。

「おまえが悪いんだぞ……オレの愛を受け入れてくれないから」

 オレは部屋の天井を見上げて呟く。

「やり直しだ」

 目を閉じたオレはタイムループで時間を戻す……妹が生きていた時間に。


 オレが目を開けると、時間が戻った部屋には妹の死体は無かった。

 カレンダーと時計で戻った日時を確認する。

「日曜日か……この時間なら、妹は自分の部屋で音楽を聴いているはずだ」

 オレが妹の部屋に行くと、まだ生きている妹がヘッドフォンで好きな音楽を聴いていた。

(本当に可愛いな、オレの妹は)

 オレは、溺愛する妹に声をかける。

「天気がいいから、一緒に公園を散歩しないか?」

 ヘッドフォンを外した、素直な妹が笑顔で言った。

「うん、いいよ……お兄ちゃん」


  ◆◇◆◇◆◇


 オレは大好きな妹を、近所の公園に連れてきた。

 そして、周囲に人目が無いことを確かめてから、妹と向かい合ってじっと妹の目を見つめた。

 妹はオレに見つめられて不思議そうな顔をする。

「なぁに、お兄ちゃん?」

 オレは、幾度も繰り返してきた告白の言葉を口にする。

「前からずっと、妹のおまえのコトが好きだったんだ……愛している、彼女になってくれ」

 オレの告白に固まる妹……妹は首を左右に振って後ずさりをしながら、震える声で言った。


「お兄ちゃん……なに言っているの……あたしたち、実の兄妹だよ……そんなのダメに決まっているじゃない……お兄ちゃん、変だよ」

「どうしても、ダメか……オレは、妹のおまえを愛しているんだぞ」

 首を横に何度も振って、怯えた顔をした妹はオレに背を向けて逃げようとした。

 このパターンも、何回も経験しているパターンだった。


 オレは妹の脇腹に、隠し持っていたナイフを突き刺す──何回も、何回も。

「お、お兄ちゃん⁉」

 刺された背中の箇所を手で押さえて、地面に転がった妹はショックと驚きの顔でオレを見る。

 恐怖で震えて言葉が出ない妹に馬乗りをして、オレはさらに妹の体を連続して刺し続ける。

「失敗だ! おまえは失敗だ!」

「誰かぁ! 助けてぇ!」

 助けを呼んでも、この時間のこの場所には誰も来ないコトは、何度もこの場所で、オレの愛を受け入れてくれない妹を殺害して実証済みだ。


 やがて、血溜まりの中で妹は動かなくなった。

「もう、一度……時間を戻ってやり直し……」

 オレがそう呟いた時──女性の悲鳴と叫び声が聞こえた。

「きゃあぁぁぁ! 人殺し!」

 見ると、子犬を散歩させている女性の姿がオレの目に映る。

(今まで、こんな目撃されるコトは無かった? まあいい、タイムループで時間を戻せば)


 オレは妹を殺害した凶器を放り投げると、目を閉じてタイムループした


 オレが目を開けると、妹を死体は消えていて衣服についた返り血も消えていた。

「家に戻って、告白やり直すか」

 オレは、家にもどると妹の部屋から大音量の、聴き慣れない音楽が響いていた。

(なんだ? 妹の好みと異なる音楽をヘッドフォン無しで?)


 妹の部屋のドアを開けると、そこにいた妹にオレは驚いた。

 髪を染めて、下着が見える短いスカートを穿いている派手な妹が、ベットに寝そべっていた。

 ヤンキーっぽい妹がオレに向かって読んでいた雑誌を投げつけてきた。

「勝手に部屋に入ってくるんじゃねぇよ、クソ兄貴!」

 いつもとは、違う妹の容貌と言動。


 それでも、オレは妹に告白してみた。

「愛している、オレは妹のおまえを愛しているんだ」

 髪を派手な色に染めてメイクした妹が、露骨に嫌そうな顔をする。

「はぁ? キモっ、頭おかしいんじゃねぇか!」

 オレはヤンキーな妹に飛びかかると、首を渾身の力で締めつける。

「ぐぐっ……がぁぁ」

「おまえは、違う! オレの妹じゃない、」

 手足をバタバタさせる、ヤンキーの妹……オレは妹の首の骨をへし折って殺した。


 失禁して死んだヤンキーな妹の死体を部屋に残したまま、自分の部屋に戻ってタイムループして、妹の部屋に行くと今度は頭に虫の触角を生やした複眼の妹が、椅子に座って読書をしていた。

 オレの頭と目も触角が生えていて、複眼になっていた。

(時間軸が狂いはじめているのか?)


 虫の触角と虫の目をした妹が微笑みながら言った。

「なぁに? お兄ちゃん……なにか用かな?」

 虫の妹も、オレの告白を受け入れてくれななかった。

 オレは、近くにあった鈍器で妹を殴り殺した。


  ◇◆◇◆◇◆


 何度も……何度も……タイムループして、告白を続けて拒否する妹を殺し続けているうちに、妹とオレの容姿は化け物に変わってきた。


 灰色のナメクジ人間のような姿に、変貌した裸の妹が言った。

❖仝⁇⁇≯@↹‰●♀⊗∞∇#®℃ダメだよ、お兄ちゃん……あたしたち兄妹だよ

 オレは、同じ化け物姿の妹を殺した。


  ◆◆◆◇◇◇


 何度目かのタイムループで、オレと妹はケモノ耳を生やした人間になった。

 オレは河原の広場に連れ出した、動物耳の妹に告白をした。

「うん、いいよ……あたしも、お兄ちゃん大好き! ツガイになろう」

 妹は初めて、オレの告白を……オレの愛を受け入れてくれた。

 オレと妹は抱き合ってキスをする。

 オレにとっては、念願の愛する妹とのキス。


「んッんッ……お兄ちゃん大好き、食べちゃいたい」

 妹のキスはオレの首筋へと移っていく。

 いきなり、牙が生えた妹の口がオレの喉笛に噛みつく。

「がはぁぁぁ⁉」

 喉を食い破られて、倒れたオレの衣服をめくり上げた、妹の牙がオレの柔らかい腹をえぐる。

「や、やめてくれ! がはぁぁぁ!」

 妹は血だらけの口で、オレの内臓を引きずり出して笑いながら言った。

「お兄ちゃん知っている? 肉食動物は獲物の内臓が腐りやすいから、最初に食べるんだって……お兄ちゃん、大好き! 好き、好き!」


 オレは、薄れていく意識の中で肉食動物になった妹に食べられていくコトに深い愛を感じていた。

(お兄ちゃんは、いつまでもおまえを愛しているよ……これが、オレが求めていた……妹との)

 オレは、嬉し涙を流しながら……死んだ。



【説明】

禁断の兄妹愛です。

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