ショートストーリー【ちょいホラー&ちょいホラー寄りのSF】
楠本恵士
男を殺す人、男に殺される人〔ドッペルゲンガー〕
男は夜の町を、息を切らして逃げ続けていた。
外灯が点在するだけの寂しい町の郊外──人家やコンビニは近くに無く、点在する町工事と田畑と森だけの場所。
数キロ先には人家の明かりがポツポツと見えるが、男が走っている場所からはかなり遠い。
(いったい、アイツは何なんだ? どうして、オレの部屋に居たんだ?)
男が住んでいるのは、隣人はすべて引っ越してしまった事故物件アパート。
隣近所に気を使う必要が無いからと、駅からは少し遠かったが。
自転車で通勤すればいいと、割り切って数ヶ月前に引っ越してきた。
振り返った男は、台所にあった包丁を手に、追いかけてくる人影に恐怖する。
外灯の明かりに照らされるその顔は、逃げている男とそっくりの顔をしていた。
(どうして、オレの部屋に明かりをつけて座っていた? 施錠したはずなのに、どうやって部屋に入った)
帰宅した男は、部屋の中に居た自分に驚いた。男とそっくりな男も驚愕した顔で帰宅した男を見た。
そして現在、逃げ出した男を追って部屋に居た男が、包丁を手に追ってきていた。
(もしかして、追ってくるのはオレのドッペルゲンガーか? オレを殺そうと
逃げる男は、工事現場に逃げ込み。そこにあったスコップを手にすると追ってきたドッペルゲンガーをスコップで強打した。
強打されたドッペルゲンガーの男も、包丁で反撃する。
激しい攻防の末に、包丁をスコップで叩き落とした男が、追ってきた自分を滅多打ちにする。
(死ね、死ね、死ね! ドッペルゲンガー!)
倒れている虫の息のドッペルゲンガーが、苦しそうな声で呟くのが男の耳に届く。
「いったいなんなんだ、ドッペルゲンガーに殺されるなんて……オレは、本人なのか? オレがドッペルゲンガーなのか?」
それだけ言うと、倒れた男は絶命した。
自分とそっくりな自分を殴り殺した男は、愕然とした顔で、その場に座り込む。
(オレが殺したのは……オレのドッペルゲンガーなのか? それともオレがドッペルゲンガーで、死んだのは……あぁぁぁ)
男は底しれない恐怖に、工事現場で絶命した。
【説明】男が殺したのは、本体?それともドッペルゲンガー?
殺されたのは、ドッペルゲンガー?それとも本体?
☆余談ですが、もしも自分のドッペルゲンガーに遭遇してしまった時の対処方法は【恐れてはいけない】自分の双子と接するような気持ちで(双子が自分の片割れを怖がっていないように)「こんにちは♬」と気楽に挨拶して、できれば握手してみるくらいの友好的な接し方が良好で幸福が訪れるみたいです。
恐れてネガティブな感情や行動をすると、反対に不幸に……くれぐれも、お気をつけください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます