ウクライナ情勢について考える

歴史的背景

　1831年にエジプト・トルコ戦争が起こった。この戦争はエジプトとオスマン帝国（トルコ）との間で行われたもので不凍港を求めて南下政策を推し進めるニコライ一世支配下のロシア帝国とそれに対抗するイギリスなどの当時のヨーロッパ列強諸国が介入した国際紛争になった。これ以降ロシアの南下政策を阻止しようとするイギリスとの対立が激化し、中央アジア・アフガニスタン・ガージャル朝ペルシア（現・イラン）を巡って露英両国の駆け引きが続いた。1851年に勃発したクリミア戦争ではイギリス・フランス連合軍に敗北した。

　19世紀末期、ロシアはそれまでのドイツ帝国・オーストリア＝ハンガリー帝国との三帝同盟からフランス共和国との露仏同盟に外交の軸足を移し、バルカン半島での南下を極東での南下政策と平行させた。

　20世紀初頭になると極東への関心を強め、満州や朝鮮に手を伸ばそうとしたが、日本と衝突して1904年の日露戦争となった。1905年に血の日曜日事件など一連の革命騒動が発生し、ポーツマス条約を結んで敗れると、戦後の1907年にロシアはイギリスと英露協商、日本と日露協約を締結し、三国協商に立ってドイツやオーストリアと対立した。

　1914年に勃発した第一次世界大戦では連合国の一員として戦ったが、敗北を重ねて領土奥深くまで侵攻された。第一次世界大戦中の1917年2月にロシア革命が起こり、ロマノフ王朝は倒された。1922年の年の瀬にソビエト社会主義共和国連邦を建国した。

　1939年9月の第二次世界大戦勃発直前にナチスドイツと独ソ不可侵条約を結び、ポーランドと結んでいた不可侵条約を一方的に破棄してポーランドを占領した。その後、フィンランドに圧力を加え、国際連盟から除名された。1941年6月、ドイツは不可侵条約を破ってポーランドに侵攻した。ドイツに西部の広大な範囲を占領され、危険な状態に陥った。1942年初頭に首都モスクワの防衛に成功し、連合国の助けもあって1943年後半には独ソ戦の主導権を握り、最終的に対戦に勝利した。極東方面では1945年8月に不可侵条約の不延長を通告して対日戦に参戦した。

　戦後にはソ連軍の軍事力を背景に北大西洋条約機構（NATO）に対抗して1955年にワルシャワ条約機構（WTO）結成した。これ以降、アメリカを代表とする民主主義国（西側諸国）とソ連を代表する社会主義国（東側諸国）との間で冷戦を繰り広げた。1991年8月、クーデターを鎮圧したがその後連邦を構成していた共和国が次々と脱退していき、同年12月26日にソ連は崩壊した。

　ロシア連邦の成立直後の政権下で市場経済の導入を試みるが、急激な以降にロシア経済は混乱し長期低迷を招いた。一方、この頃新興財閥の「オリガルヒ」が台頭し、政治的に大きな影響力を示すようになった。

　2014年、大統領であるウラジミール・プーチンがクリミア半島をロシアに併合した。これにはアメリカやイギリスなどの欧米から反発を受け、G8への参加資格を剥奪された。

　ウクライナは13世紀以降、モンゴル帝国の侵攻により領土が破壊され、様々な国に分割・支配された。18世紀以降ポーランドとロシア帝国の二カ国でのウクライナの領土は分割された。ロシア革命後、民族自決の考えによりウクライナ人民共和国が宣言された。第二次世界大戦後、ウクライナ西部はウクライナ・ソビエト社会主義共和国に合併され、国全体がソビエト連邦の一部となった。その後、ソビエト連邦の崩壊により1991年に独立を果たした。

　独立後は中立国を宣言し、ロシアやCIS諸国と限定的な軍事提携を結びつつ、1994年にはNATOとも提携を組んでいる。2016年1月1日、ウクライナは欧州連合との深層・包括的自由貿易圏の経済コンポーネントを申請した。

＊用語

不凍港→冬でも凍らない海のある港

南下政策→不凍港を求めて領土を南へと広げていく政策

血の日曜日事件→労働者による皇宮への平和的な請願行進に対し、政府当局に動員された軍隊が発砲し、多数の死傷者を出した事件

CIS諸国→独立国家共同体（Commonwealth of Independent State）の略でソ連崩壊後、構成していた共和国たちで作った緩やかな国家連合体

コンポーネント→構成要素を意味する英単語