良い悪魔

@teasol07

第1話

良い悪魔っていると思う?


いや、いないだろう。

君。

そもそも悪魔だろう、

悪魔に何か良いことを囁かれて

そうだと目を輝かせるの?

疑うでしょう。



前にいる体格のいい人の右脇から

転がるように落ちた果物を

数秒見つめてしまうようになった。

胸が少し痛くなって、

胃が不器用に歪んだ。

拾って渡すと

Thank you.と言われ

胃の違和感が喉に移動した。




彼女は、

良くない小さいものは

よく、首の後ろ、

うなじの少し上、

髪の生え際にいて、

髪にしがみついて

人の正気を吸っているのよと

言っていた。


元気にしているだろうか、

あの時の女神。



だから悪魔に良いも悪いもあるのか?

もう、無いって言ってるでしょう。

だって悪役にも良い奴はいるよ。

それはヴィランね、

だって人間でしょ。

あ、うん、悪魔は、悪魔か。

うん、見たことないし、わからないけど。

彼女は続けた、

あんまり悪魔を考えないよね、

日常ね。

似通ったものもいない。

理解するには、外国語がいるわね、

と。




彼女の黒い髪の毛が

暖かい太陽の日差しを受けて

重たく、熱くなっていた。

染めていない髪は

簡単に手櫛を許してくれる。

彼女の鼻歌で

今日も幸せに眠ることができる。

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