8
徹は丘の上から港をながめている。誰かとここに来たような気がする。徹は考えていた。別にどうでもいいことだけど。
「あたしだよ」って目の前に現れたところで今の自分とは何のかかわりもない。
「本当かな」
誰かのつぶやきが聞こえた。徹は後ろを振り向く。
「帰ってないみたいなの」
「誰が」
「徹さん」
「いいのよ、あいつってそういうやつだから」
邑子はベッドから起き上がってスウェットの短パンをはいた。そして、床に散らばっていたTシャツの中から一つ選んで腕を通す。
「翼ちゃん、そのへんにある物、勝手に着ていいから」
「下着はそこの引き出し」
「サイズ合いませんよ」
「そうかな」
食卓には朝食が並んでいる。
「すごいね」
「一応、次期女将ですから」
「決まってるの」
「あたし先にシャワー浴びてくるから」
翼は大きめのTシャツを選んで頭から被りギターを取り出して弾きはじめた。
「どこに行っちゃったんだろうね」翼はギターに話しかける。
頭にタオルを巻いて邑子が部屋に戻ってくる。
「ちょっと当てがあるんだ」
「ごはん食べたら、行ってみよう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます