転生した俺がユニークスキル【転職】を使って自由に異世界を楽しむ!
るーも
第一章
第1話 拓海、死す。
「お疲れっしたー」
今日も8時間勤務を終え、職場を後にする拓海。
大学を卒業した後職に就くも、1年持たずに退職。
その後は転々と職を替えつつも、生きるのには困らない程度にはお金を稼ぎつつ生活していた。
今は近場のコンビニの深夜勤務を行っている。
贅沢は出来ないが拓海自身お金の掛かる趣味も無ければ使う相手も居ない。
休日は専ら部屋でゴロゴロ。
パソコンの前でただただ時間を浪費する毎日だった。
学生時代には友人も居たが、負い目を感じて疎遠になっている。
だってそうだろ?周りは一流企業でバリバリ働いている、俺はコンビニバイトをして部屋でパソコンしながら缶ビールを開けている。
そんな事を気にする奴らじゃないのはわかってる。
俺の無駄なプライドが邪魔をしていただけだった。
別に今の生活に不満は無い。
結局自分の目標をどこに置くかで生活の満足度も変わる。
沢山稼いで沢山贅沢して、好きなことやって生きていく人生も素晴らしいだろう。
俺は毎日生きて、たまにどこか出掛けて、暇な時は小説や動画を観ながらゴロゴロする。
それだけで十分だと思っている。
今の時代はネットの普及もあり、消費する以上に生産される作品が数多くある。
俺はその消費で忙しいのだ。
最近はネットで無料で読める小説を消化中だ。
ここから作品が商品化される事もあるくらい、面白い作品が沢山置かれている。
昔の読書好きには楽園のようなシステムだろう。
徹夜明けの俺はいつもの様に寝る前の読書タイムに入っていた。
「ふむ、彼奴は丁度いいネ」
俺を見定めている人物?は、呟く。
そんな視線に気づかずに、寝落ちをする俺だった。
ピロロロ、ピロロロ、ピロロロ……
珍しいな。
既にゲームとネット用になっていたスマホから、着信音が鳴っている。
寝落ちしていた俺は目を覚まし、スマホを手に取る。
ピッ「もしもし……」
「拓海君! 今どこにいるの!?」
「へっ?」
電話の相手は夜の責任者をしているシフトリーダーだった。
よく見ると部屋は真っ暗。
時計を見てみると深夜の1時を過ぎていた。
血の気が引くとはこの事だろう。
寝坊した。完全に寝過ごした。
「っ! すみません、寝坊しました! すぐ行きます!」
「拓海君にしては珍しいね……ちょっとお説教はさせてもらうけど、気を付けて来てね」
「はい! 失礼します!」
こう見えても真面目で通っている。
無遅刻無欠席で今の職場も通っていたし、仕事振りも評価されていた。
そのお陰かあまり怒られなくて済むだろう。
シフトリーダーもどちらかというと心配してくれていたみたいだった。
注意はされるだろうが、頭は下げるつもりだ。
それにしても自分でも珍しいくらい熟睡していた。
学生の頃から寝過ごす事など無かったのだが……
軽く顔を洗った俺は部屋の鍵を掛け飛び出す。
慣れない遅刻にいつも以上に焦る俺を、空から眺める存在に気が付かず。
「急げー! 足の腱が切れても構わん!」
無理やりテンションを上げるようにマンガキャラのセリフを呟きながら自転車を漕ぐ。
日中なら変な目で見られる行為も、人の居ない深夜の時間帯には無敵になれる行為に変わる。
いつも以上にテンションが上がっている事に気が付かなかった俺は、交差点の信号が青になっている事を確認してそのまま突っ込む。
いつもなら気が付くはずだった。
焦りと無理やり上げたテンションで視界が狭くなっていた俺は、耳を劈くブレーキ音でハッと我に返る。
トラックが突っ込んできていた。
深夜まで走っているのだ、ドライバーも疲れているのだろう。
居眠りでもしていたのか、信号が赤の交差点に突っ込んできていた。
少し余裕を持って周りを見ていれば、気が付けたのだ。
少し余裕を持って休憩をしていれば、止まれたのだ。
お互いが別の後悔をしながら、ぶつかってしまったのだった。
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