「 兄 」~放蕩息子と嫁き遅れの美姫~

『戦神作戦』……貴族令息たちを戦場に送ることで、自国軍の士気高揚をめざした作戦。国の英雄として謳われる「戦神」の伝説にちなみ、占星術によって選ばれた令嬢たちが、令息たちの婚約者にあてがわれた。語り部いわく、「いいなずけの待つ家に、兵士は必ず帰るだろう」



【登場人物】

・コリン……伯爵家令息、嫡男。二十九歳。夜遊びがたえないことで有名。継母に弟が生まれそうなので、慌てて戦神作戦に志願した。代々騎士の家系。


・ベルメール……地方子爵家の令嬢、十九歳。比類ない美貌を持つ。将官の父に幼齢から付き添い、地方のとりでで育った。実兄のガートルードは王室近衛隊の士官。










 どう思うもなにも、ありゃおっかねぇ。


 これから一応〝兄貴〟になる人間にそうハッキリ言っちまっていいもんかどうか、さすがの俺もちっと考えてみたりはする。相手は軍人だ。そこもおっかねえ。


 兄貴がいた試しはねえし――いたらとっくに俺ぁオハライ箱……いや、兄貴がそうなってた可能性もあんな。兄貴だった試しはあるが、うちの妹どもはカワイらしいもんだ。会うたびに土産をせびってきて、恋愛ゴトの相談をしてく。俺ぁオヤジ殿には口がカタい。俺が妹にした自慢話は全部オヤジ殿に筒抜けだが。


 ともかく、あんなおっかねぇ女は飯屋の厨房ぐらいでしか見たことがねえ。目の前にいるこの〝兄貴〟が悩んでんのは、たぶん俺と同じように見えてるからだ。

 兄の性分ってのが妹の悪評を認めたくねえもんだってわかっちゃいるが、これから親戚になろうって人間から言われりゃ認めるしかなくなるだろ。ちったぁ女らしくしやがれって、裏から注文つけるようにもなってくれるかもしんねえ。同じ困りゴトがあるヤツのことを人間味方だって考えるもんだ。よしきた。


「どう思うもナニもありゃ、おっかねぇだろ」


 アゴに一発もらった。




*******少し前*******




 機織り屋の坊っちゃんが女にフラれたぐらいで王室まるごとアタフタしてちゃ、情けねえにもほどがある。

 そうは言いてえところだが、出発が遅れてくれるのはありがたいもんだった。まだ別れを告げてねえ女の子たちが何人かいる。俺ぁオヤジ殿と違って、始まった女には最後まで責任を持つクチだ。いくつも並行して始まっちまうのはご愛嬌。


 だってのに、あのワカランチンのちんぽこオヤジめ。今日いいなずけ殿といっしょに過ごさなかったら、結婚できても家督を継がせねえぞってドヤしてきやがった。家督がどうのなんて、出陣前の息子に言うことかね。

 俺ぁもうたくさんだっつって、ふいっと出てきちまってもよかったが、まあ金がなくなると女の子たちにいい顔もできないんで、王都見物に行きてえっていう田舎令嬢サマにこうしてくっついてきたってワケだ。なにも言わずにいなくなっても、あとで機嫌取れりゃあどうとでもなる。


「なぁ、もうジューブン見ただろ? どこ行っても似たようなもんだって。宮殿戻って休もうぜ」


 嘘はついちゃいねえ。俺がガキの頃なら煉瓦レンガと木組みの壁がずらっと並んで味があったもんだが、近頃はどこも白塗りだ。中があったけーらしいが、外身はサムい。


 そんな街並みのけだるさ差し引いても、マァーこれがまたよく歩くお嬢サンでございまして。もうお嬢サンってトシでもねーのか?

 それでもトウがたって体力右肩下がりの俺ちゃんには、あのビロビロなびく髪シッポについてくのも正直シンドイっつーか。無駄に伸びたタッパのおかげで歩幅でどうにかなっちゃいるが、どっかに腰をおろしたくてしょうがねえ。あのストンと四角いケツおっかけててもズボンはおろしたくならねえしな。あ、こっち向いた。


「ええぇいッ、やかましい! 戻りたければひとりで戻れ!」


 うーわ、こっわ。なんだあの吊りあがり眉毛。貴族令嬢あんなの描かねえぞ? 声もどっから出てんだよ。大砲かよ。


「そうもいかねぇっつってんだろ。あんたが迷子になったら、俺ぁオヤジ殿に手ずから背中へ地図彫られちまうよ」

「彫られればいいだろう、貴様なんぞ! わたしはエイダたちにもひとりで行くと言ったんだ。言っておいて迷子になどなるかッ」


 元からアテにされてなかったワケね。それオヤジ殿にも言っといてくんねーかな。


「あー、エイダちゃんかぁ。俺のお相手もああいう子がよかったなぁー。タッパのある女ってのはこう、包容力がありそうだよなぁ。いっつもニコニコしてるし、なんでも許してくれそうっつーか」

「貴様がわたしからエイダを奪ったら、その舌を切り取って額に縫いつけてやる」


 どこの民族のしきたりだそりゃあ。そうは言うが、エイダちゃんのお相手のほうは、ありゃぁ俺みてえな薄っぺらいだけのより、よっぽどタチの悪りぃバケモンだぞ? まあ、だからこそあっちにエイダちゃんで、俺にはただのき遅れサマなのかもしんねえが。


「そのエイダちゃんもティシャと王都見物なんだろう? 鉢合わせちまったら俺、色目使っちゃうカモ」

「いまここで両目をつぶされたくなかったらすみやかに帰れ、この放蕩ほうとう貴族め」


 放蕩は言われ慣れてるっつーの。そういうとこで顔以外こわくねーのがチョーシ狂うよな。めっちゃつまんね。


 アー、いっそぶん殴ってくんねぇかな。それでも俺がビービー言って婚約キョヒるみたいなことになんなきゃ美談だろコレ。忍耐の亭主ってか。シエラがいろいろぶっ壊したいまの状況なら、ちんぽこオヤジも泣いて黙るぜ。よしきた。


「ベルメ、俺ぁホンキだ。あんたと結婚したい。チューしよ」

「口づけは禁止だ、馬鹿者。条項を読んでいないのか?」


 あんれぇ? そだっけ? 

 あ、あれか。両方成人してても戦場から帰るまで男女の深い仲にはなるなってヤツ。


 いやチューぐらいいいだろ、チューぐらい。最悪黙ってりゃわかんねーよ。触った部分に花でも咲くってか?

 戦神サマも身持ちがてぇこったよ。あーやだやだ。これだから騎士の家系ってのは。


「待て待て? チューってのは方便で、本命は怒らせてぶん殴らせることなんだから、やっちゃダメってんならなおさら――」

「なんだ婿殿。チューはせんのか?」

「いやいや、するっつーか、しようとするのを止めさせるんだから……って、誰さん?」

「兄上!」


 アニーウェ? この近衛このえの鎧着た長髪の眼帯ニイチャン、ベルメのアニィウェ?


 確かに髪の色は似ちゃあいる。妹のが濃いけど、おんなし栗毛って感じだ。目の色もまあまあ。だがどこにでもいるだろ、こんな赤茶っぽいの。


 ハラ違い? まぁめずらしかねえわな。ウチのオヤジ殿ちんぽこもとっかえひっかえ。姉貴連中は全員顔がちげぇし……俺ちゃん? 俺ちゃんは紳士よ。ハナはんでもタネはかねぇ。


「兄上、来ないからどうしたのかと……あ、いや。お仕事はもう済んだのですか?」

「勤務は予定どおり早番で終わった。だが少し寄るところがあって、街を歩いていたのだ」


 ハハァ、ひとりで大丈夫ってのは、この兄貴と待ち合わせしてたからなのね。ンで、兄貴は妹がオトコ連れだったんでエンリョしたと。ただどうしても気になっちまって、カゲから見守ってたな? で結局なんか揉めはじめたんでヒョッコリ出てきたってトコロか。


「見てたブンはあとでイジレるしなぁ。ありゃ楽しい」

「なにをブツブツ言っている? 兄に挨拶しないか、馬鹿者」


 うぇーい、どうも馬鹿者です、アニウェーさま。アンタ俺より年上?


「そう固くなるな、コリン殿。おうわさはかねがね聞いているぞ? ハッハッハ!」

「どもっす」


 声でけー。確かに兄貴だわ。


「それにオレのほうが年下だ。見てのとおり近衛部隊、第三隊副長。名はガートルードという。ガルでかまわん!」


 はいはい、ガルガルね。敬語使おうよ。


「兄上。今日はその、コリン殿が……」

「うむ。オレは通りかかっただけだからな。偶然見かけたので、挨拶に声をかけただけだ。夫婦水入らずで楽しむといい」


 おんや? ガルガル帰っちゃう? ケンカの原因聞かなくていいの? 理不尽な家庭内暴力に耐える俺の雄姿見ていかない?


「兄上、まだ夫婦というわけでは……」

「そうだぜガルのアニキ。俺は三人で楽しむのだって悪いとは思っちゃいねぇ。サオが二本ってのは初めてだが」

「さお?」


 あ、やっべ。ソッチの話じゃなかったわ。


「邪魔でないなら付き合いたいが。オレも婿殿に訊きたいことがあってな」

「兄上がこいつに?」

「なんでも訊いちゃってください」


 あんたの妹の横暴ぶりについて、あることないことなんでも答えてやるぜ。近衛ならオヤジ殿の耳にも近けぇだろ? 俺ちゃんえてるぅ。


「では、失礼して」


 もったいぶってガルガル、突然俺ちゃんの肩に腕まわしてきた。いてぇ、首いてぇ。無理やり押しさげられた顔のそばにイカツめの二枚目が迫ってくる。おいおい、ソッチのやつかよ兄貴。ムリムリ、おめぇの妹よりタイプじゃねえって。


「兄貴? ガルくん? あの、もうちょっと離れて……」

「コリン殿。オレの妹は、どう思う?」

「あ?」



*******少しあと*******



 歯ぁ抜けると顔変わっちまうってさ。いまより二枚目になるってこたぁねーだろ。さすがに抜けなくてよかったぜ。おー痛てぇ。


「すまん! つい!」


 噴水に腰かけたガルガルが全力で頭さげてる。いーよいーよ。わかるわかる。殴るよね。俺でも殴る。妹が尻軽のクソブスだって言われたらグーで殴る。いや自分が痛てぇから殴らねえかも。籠手こては反則だろ、籠手は。おー痛てぇ。


 俺ちゃんも頭まだぐわんぐわんするんで噴水に座ってる。ベルメは少し離れたとこで、やっぱり噴水に腰かけて居心地悪そうにしてる。微妙な空気。

 俺ちゃん的には予定どおりで万々歳だがね。いや想定外だけど、殴られたのは予定どおりじゃん。こんなに痛いはずじゃなかったが。おー。


「大丈夫っすよ。俺、忍耐の亭主なんで」

「忍耐?」


 顔あげたガルガルがまたヤベエ顔してる。おかわりはいいっすよ? 小食なんで。


「だいいち俺なんか殴っても、殴ったほうが悪いなんて言うやつはいねぇっすよ。オヤジ殿も含めてっつーか、オヤジ殿なんか俺がタコ殴りにされりゃいいって思ってんで。あんたも言ったろ? おウワサはカネガネって」

「それはそうだが……」


 いや否定しろよ。おろ? じゃあ俺の作戦最初から終わってね?


「妹の、ベルメのことになると、どうしてもな。婚約令息がコリン殿に決まったと聞いたときも、作戦指揮の宰相さいしょう殿に直訴に行ったのだが、とにかく落ちつけとさとされた……」

「オイ俺、けちょんけちょんじゃねえか?」

「妹は、当代一の美姫として名高いのだ。兄のオレのひいきではなく、王宮にいてもその手の話は聞こえてくる。それがなぜ、令嬢たちをひと山いくらとするような作戦に参加させられるまで、き遅れてしまったのか……」

「あー……まあ、見かけはいいんじゃないっすか?」


 見かけはいいだけに、おっかねぇのが残念だ、までがひと続きなんじゃないっすかね、〝その手の話〟ってのは。


 実際、粗暴な騎士家の年増息子にくれてやるにゃあ惜しすぎる美人だと思う。俺ちゃんの好みじゃあねえけど、ありゃ女にモテるタイプだろ? 田舎育ちで作法なんかボロクソだろうが、磨いて社交界に放りだしゃ一躍いちやく咲き誇るだろうさ。

 いま水場のそばにただ座ってんのもサマになってる。日が水面に照りかえって周りがキラキラして、まぶしいな、クソ。しとやかだと一気に大人びやがる。だからイラつく。


 ああいう女が、オヤジ殿の一番の好みだ。


「ガル。あんた結婚は?」

「……二年前の春に」

「なかよし?」

「そう、だな。子供はまだだが……」

「やさしい人? どこに惚れたの?」

「やさしい、のもあるが、ひとことでは言いがたい。働き者で、オレにはもったいないとだけ……」

「いいねぇ。うらやましいっすよ」


 俺は向いてねえ。働き者とか、旦那想いとか。もったいねぇ、と思った相手が嫌になる。


 ほどほどでいい。ほどほどの女を、裏切らねえ。最後までケツを持つ。


 ほどほどのモンはもったいねぇモンよりゴロゴロしてっから、ダブっちまうのはご愛嬌だが、オヤジみてえにダブるのを嫌がって、古いヤツを捨てたりはしねえんだ。


「理想が高すぎんじゃないっすかね、あんたの妹は」

「理想?」


 そ、理想。

 自分にはもったいねぇモンを探して、手を伸ばす。届かねえとわかっちゃいればいるほど、ほどほどじゃ我慢できなくて、アレもコレもって捨てながら試す。


 あの田舎のカチコチ娘が尻軽だなんて万一にも思っちゃいねぇけどな、田舎にだって申しこんでくる男はいたはずだろ? そいつらじゃ我慢できなかったんだ、あんたの妹は。

 どうしても諦めきれない理想が、自分にはもったいねぇモンが、とうにあったから。


 そいつは絶対に届かねえって明らかなもんでもあって――おりょ? そーゆーこと?


「理想の相手が、いたのか? ベルメに? いったいどんな……?」

「どんなって、だから……」


 目の前の男を見る。無駄にデカい俺よか背は低いが、さすが士官サマだ。仕事あがったってのに鎧着たまま平気で街ウロついてる。どんな鍛え方してるってんだ?

 顔だってイカツイが三枚目じゃあねえ。むしろちょっと怖ぇこのぐらいのほうが、所帯じみた女は安心すんのかもな、頼もしいってよ。少なくともカワイイって言われたこたぁねえだろ。いやあるかもしんねぇが、そういう落差にクラッときちまう女もいる。


 正反対だな。デカいわりに白くてナヨっちくて、カワイイが基本の俺ちゃんとは正反対。そりゃぁあのき遅れがイラつきもするわ。よしきた。


「いっちょ試してみっか」

「試す?」

「おう」


 田舎娘の理想ってヤツをな。



*******また少しあと*******



「おぅい、ベルメ。ちょっち来てみ」


 噴水のカゲで準備が終わったんで呼ぶ。背中向けてろって言われて待ってたブラコン姫が回りこんでくる気配。


「なんだ、いったい。兄上となにをして――」


 目もとのぱちっとしたキレーな顔が見えた瞬間、まぁーヒデー顔するわ。そりゃそうだわな。なにしてんだって話だわ。


「な、な、な、なにをしているんだ、貴様はぁッ!?」

「なにって、取り替えっこよ。ガキの頃やんなかった?」


 いいトシこいてな。


 俺ちゃんがいま着てるのは、ガルガルが王宮から着てきた近衛隊専用の白金鎧。ガルガルは別に俺ちゃんの着てねえけど、鎧の下に着てた薄いズボンと肌着姿だ。ヒュー、やっぱイイカラダしてるゥー。


「婿殿が一度正規隊の衣装を着てみたいと言ってな。まあオレも殴った手前断れなかった!」

「断れなかったって、兄上……」


 兄貴がサッパリ笑ってんのと対照に、ベルメールちゃんはめちゃ青くなってる。

 そりゃそうだわな。近衛の騎士鎧ってのは王宮からの支給品。つまり王サマからの授かりモンだ。いくら相手が伯爵家の子息だっつっても、そうホイホイ貸し出しちまっていいもんじゃあねえ。変なシミつけられても困るしな。


 だが俺も着たかったわけじゃねえ。むしろ騎士サマのカッコウなんて二度と御免だ。これが見納めだぞ? よく見たか?


「やっぱ重めぇなァー。クッソ重めぇわ、マジで。よくこんなもん着て歩けるよな?」

「ハッハッハ! 鍛え方が違う!」

「そ、そうだぞ! その鎧は、兄上のような選ばれた――」

「鍛え方もなにも鍛えてねぇっつーの。俺はあんたの兄貴じゃねーからな」

「あ……」


 お、いい反応。


「ぁンだよ、そういう切ねえ顔もできんじゃねぇか」

「な、なにを言って……」


 やー、いいモン見れたな。もう満足だわ。

 俺ちゃんに勝手な理想おっかぶせてた小娘の鼻を明かしてやったって感じ? これでちっとしおらしくなってくれりゃあ、存外結婚生活もなんとかなるかもな。コツをつかんだって気がするぜ。


「あー、ダメだ。もー無理だわ。ちっとこれ、ハズしてくれ。固くて手が届かねえ」

「そうだな。ベルメ、はずしてやれ」


 ちょいちょい、アニキに言ったんだが? つーかそりゃ、やりすぎだぜ? わかってやってんのかしんねえけどオモシロすぎんだろ。よしきた。


「なぁ早くしてくれよ、オクサン。ダンナのお着替え手伝うのも嫁のツトメってやつザマス。感極まって全部脱がすのはやめてくれな? 一応オニーサマの目の前なんで」

「ハッハッハ! 条項を忘れるなよ!」

「だとよ。オラ、どうした? 兄貴の大事な鎧が俺ちゃんのニオイになっちまうぞ? 背中のホック外すだけだっつーの。やさしく頼むぜ、スケベちゃん」


 マジで震えてる。ハハハ、ウケルぜ。効きすぎだろ。


「わたしだって……」

「あん?」


 なんか言いはじめた。全然聞こえませーん。もっとでっけえ声で、サン、ハイ。


「わたしだって、おまえの母親じゃなぁぁぁぁぁぁぁぁぁいッ!!」

「おへ?」


 鎧がぐらっと揺らぐ。背中を思いっきり叩かれた感覚。


 ガチで体が重すぎてフラフラしてた俺ちゃん、油断もしてたんで、動けないまま傾いてく。噴水につまづいて、下の池が顔に近づいてくる。おっと、こりゃまず……。


「ベルメ!? どうした、なぜ泣いている? 待て、どこへ行くんだ! ベルメッ!?」

「うるさいうるさい! 兄上も嫌いだ! わたしにはもうエイダだけなんだぁぁぁぁぁぁ!!」


 いや、待って。兄貴も待って。鎧に水入ってきてる。錆びちゃうコレ、錆びちゃうから。


 あ。無理。沈む。しず、しん――……あークソ。


 やっぱ向いてねぇ。全っ然向いてねぇわ。




  「 兄‐コリンとベルメール 」了

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